2005年発売
“この残酷な世界に生み落とされたのは、きっと貴方に出逢う為だったのですよね”。少年と少女の困難で美しい生と性を描いて三島由紀夫賞候補となった表題作はじめ、アートとファッションへの美意識を核に咆哮する三つの愛の物語は、「うっとり読んでいると、破壊力抜群の言葉になぎ倒される」(解説より)。孤高の乙女魂と、永遠の思春期を抱くすべての人に放つ、珠玉の恋愛小説集。
検非違使庁の髭麻呂こと藤原資麻呂は、血を見ただけで卒倒する軟弱な優男。今宵も国司の娘が殺されたと聞き、いやいやながら従者の雀丸と六条へ。現場からは、高価な宝玉が盗まれていた。折しも、飢饉と天変地異が続き、治安は乱れ“蹴速丸”という盗賊が、都を騒がせていたのだが…。衛士の娘・梓女との恋模様を絡めつつユーモラスに描く連作平安期ミステリー。
青山の高級エステ『ヴィーナスの手』。敏腕オーナーの京子にヘッドハントされた麻美は辣腕エステティシャンとして頭角を現し始める。この店にはかつて加藤サリというカリスマエステティシャンがいた。そのサリは六年前、何者かに自宅で殺害されたという。生まれ持った「手」の適性と高い技術、人間性も含めて〈サリの再来〉と賞される麻美。だが麻美は密かにサリを超えたいと願うようになる。京子の夫で健康食品会社社長の安芸津弘庸や、その愛人でキャバクラ嬢のアリシア、ヴィーナスの手の客で日常に満たされぬ思いを抱くOL・舞、麻美の同僚・結花と真子、そして弘庸と前妻との子で謎めいた美青年・柊也などの人物たちが複雑に関わりあいながら、物語は展開する。
敵の首級を洗い清める美女の様子にみせられた少年。それは、武勇と残虐な行状とで世にきこえた武州公の幼き日の姿であり、その心の奥底には「被虐性的変態性慾」の妄想と恐るべき奸計の萌芽がー。戦国時代に題材をとり、奔放な着想をもりこんで描かれた伝奇ロマン。雑誌『新青年』連載時に掲載された木村荘八の挿画を完全収載。
トレニア湾にスケニアの大艦隊来襲。国境沿いにタンガ軍二万集結。ビルグナ砦陥落!王妃の矢傷も癒えぬうちに、デルフィニア包囲網は厚く強固に完成されつつあった。獅子王ウォルは防戦を余儀なくされる。この危機に、独騎長イヴンは形勢逆転の切り札を担ぎ出すべく単身大海に乗り出した。
いたって平凡な人生を歩んできた47歳のサラリーマン、鈴木一。妻と娘を大切に思い、築き上げてきた日常は、とある日、あっけなく崩壊した。その失意のさなかに、鈴木は奇妙な高校生のグループと知り合う。
あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて、稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い-。いしいしんじが到達した、深くはるかな物語世界。2年ぶり、待望の書下ろし長篇。善と悪、知と痴、清と濁のあわいを描く、最高傑作。
過去の呪縛から逃れるため転校した神戸の小学校では、奇妙な遊びが流行っていた。「牛男」と呼ばれる猟奇連続殺人鬼の、次の犯行を予想しようというのだ。単なるお遊びだったはずのゲームは見る間にエスカレートし、子供たちも否応なく当事者となっていくー(表題作)。新世代文学の先鋒が描き出す、容赦ない現実とその未来。ボーナストラックとして書き下ろし二編を収録。
戦後初。探偵小説にも英国文学にも巨大な影響を及ぼし、全世界で百年以上も読まれつづける巨匠、ウッドハウス。その全貌を明らかにする戦後初の選集、第1巻は天才執事ジーヴズの機略縦横の活躍、よりぬき傑作選。
学校に防弾チョッキ着てくなんてかっこ悪すぎ。でも、心臓を守ってるチタンのプレートをはずすとすごく不安になる。きついアイロニーとおおらかなユーモアに彩られた9つの物語。
久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができるー)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。
旧約聖書「民数記」に癒しの力を持つと記されている「青銅の蛇」-。預言者モーゼが作ったとされる「青銅の蛇」はその後、失われたと信じられていたが、聖書考古学者マーフィーは謎の老人の導きで、その在処を記したパピルスを手に入れた。宗教的狂信者によるテロがささやかれる不穏なアメリカを離れ、中東へ飛んだマーフィーの周囲では驚くべき事件が続発する。「インディ・ジョーンズ」を超える壮大なスケールで、全米を興奮させた超大型冒険伝奇アクションシリーズここに開幕。
さらに怪異はつづくー!三千年前、偶像崇拝禁止により、三つに破壊された聖遺物「青銅の蛇」は、バビロニアに移されたのち、さらに中東の某所に隠されたという。アラビア半島に飛び、まず頭部を手に入れたマーフィーを苦難が襲う。腹、そして尾はどこに?謎の勢力の妨害をはねのけ、三つを合体して解読されたメッセージ。それは古代バビロニアのネブカドネザル王の神官ダクリが残した驚くべき予言だった!聖書の謎に挑み、古代と現代を結ぶ壮大な冒険は、読者を最後の最後まで放さない。
燃えるような赤い髪と意志の強さを持ったマギーは、アイルランドのクレア県に工房を構えるガラス工芸家。ひたすら情熱の赴くままに制作を続ける彼女の家を、ある日ダブリンに本拠を置く国際的な画廊のオーナーであるローガンが訪ねてくる。彼はマギーの作品の独占販売権を申し出た。強引なやり方に最初彼女は反発するが、ローガンの提示した条件に心動かされ、これまで無縁だった華やかな世界に足を踏み入れてゆく…。個性の異なる姉妹の波瀾に満ちた生き方と愛憎を描いた三部作の幕開き。