2005年発売
高僧クトゥーチクとの戦いのすえ、ガリオンとベルガラス一行はついに“珠”を邪神のしもべの手から奪還することに成功した。“珠”を本来あるべき“リヴァの広間”に安置すれば、旅は終わり、かつてのような農園での暮らしに戻れるのではと期待したガリオン。だが“珠”がかれを歓迎する喜びの歌は鳴りやまず、「運命」の一語だけを話す不思議な少年を介して、“予言”はガリオンをさらに壮大な宿命へといざなうのだった…。
20世紀アメリカの最も偉大な語り部が、冷徹な筆致と壮大なスケールで描く父と子、家族、そして人間の自由の物語。時は19世紀末。厳しくも雄大な自然に囲まれた開拓地カリフォルニア州サリーナスは、限りない希望を胸に抱く人々で溢れていた。その一人、厳格な父の命で心ならずも参加した戦争に疲弊した男アダム・トラスク。美女キャシーとの結婚にみずからの幸せを見出したアダムは、妻と生まれてくる子供のために永遠の楽園を建設しようと決意し、農夫にして鍛冶屋、天才発明家でもあるサミュエル・ハミルトンに手助けを求めた。だが、キャシーを一目見たサミュエルは、彼女の冷たい眼差しと奇怪な振る舞いに気づき、その得体のしれない邪悪の影に身震いするのだった-アメリカ文学史上に燦然と輝くノーベル賞作家畢生の大作が新訳で登場。
父と子の葛藤はなぜ繰り返されるのか?人間の自由な心とは何か?瑞々しい新訳で甦るスタインベック文学の集大成。妻キャシーが家を去り、失意の深い底に沈んだアダム。賢明な中国人の召使リーによってトラスク家の生活は守られていたが、アダムの心は楽園への夢から遠く離れ、生まれてきた双子さえ目に入らないまま長い年月が過ぎた。だがやがて、自らの死期を悟ったサミュエルは、凍てついた友人の心を絶望から救うためキャシーの邪悪な真実を明かしてしまう…。一方、双子は父親の愛なく思春期を迎えた。愛らしく純真なアロンとひねくれ者のキャル。町育ちの美しい少女アブラと仲睦まじくなっていくアロンを横目に、孤独なキャルは自分でも分からない何かを探し求め、深夜の街を徘徊しはじめる-ジェームズ・ディーンを一躍スターダムに押し上げた名作青春映画の原作。
「テロリンを殺せ!」ラジオからは戦意高揚のメッセージが四六時中流れ出す。テロリンっぽい子どもをいじめるテロリンごっこが流行する。テロリンっぽい行動をした奴は民衆のリンチでぶち殺される。いつ終わるともわからぬテロリストの襲撃に、民衆は疲弊し、次第に狂気の度合いを高めていった。肉体労働者の椹木武は病気の妻子を養うため、愛人を買春宿で働かせて稼ぎを搾取していた。小柳寛子は椹木のために、狂った客たちに弄ばれ続けていた。やぶ医者の斎藤良介は、今日も手術に失敗して一人を殺した。麻薬密売人の土門仁は浮浪者たちを薬漬けにしていた。素人画家の井筒俊夫は、売春宿で抱いた小柳のあとを尾け回していた。そして遂に最大級のテロが発生した。国家はテロリン殲滅の大号令を出し、地上最強の武器「神充」を確保せんと、大陸にある「地区」へ志願兵を送り込んだ。椹木、小柳、斎藤、土門、井筒、五人はそれぞれの思惑から「地区」へと向かう。しかし「地区」で待ち受けていたのは…超極限状況下における人間の生と死を、美しくかつグロテスクに綴る、芥川賞受賞作家渾身の破壊文学。
東京近郊の総合病院で、女性看護師が殺害されるという事件が起こった。同僚の夢野純は、さまざまな困難に直面しながらも、事件の謎を探ろうとするいっぽう、難病に苦しむ患者のケアに心を砕き、理想の看護師の姿を追い求め、激務に耐える毎日だった。ナースたちのきびしい勤務実態、ターミナルケアのむずかしさなど、医療現場の問題に真摯に取り組むナースたちの姿が感動を呼ぶメディカルミステリ。
新生児に先天的な脳障害を引き起こす「ゲノム・ウイルス」。この新種ウイルスによって甚大な被害を被ったアメリカ合衆国では、自然出産を禁止し、体外受精や胎児のDNAスクリーニングが義務化されようとしていた。そんな中、遺伝子関連問題を専門に扱う弁護士ルドルフ・カイヨワは、ある病院の不正卵採取疑惑を調査するうちに、大きな陰謀に突き当たることとなった。彼は友人の私立探偵オタや、依頼人の美女ローラらとともに謎に迫るが、やがて自らの出生にまつわる秘密にもかかわることとなっていく…。選考委員各氏から、群を抜くリーダビリティーと、エンターテインメントとしての完成度を高く評価された、近未来ハードボイルドの傑作。03年、第5回日本SF新人賞の佳作に入選。
青山キラー通り沿い。高度経済成長期に建てられた原宿団地。おしゃれな都心にありながら時代からとり残されたような不思議な空間を醸し出す。住人たちも変わり者ばかり。翻訳家、劇団員、スイス人マッサージ師、元取締役、広告デザイナー…そして団地の主のような老人・小曽根さん。不安や焦りを抱え生きる彼らの、おかしくて泣けて、ちょっぴり勇気をもらえる物語。
香港黒社会との関係が噂される塔真家に代々伝わる家宝、劉宝。その紅玉を目に当てて光に翳し、龍の紋章を浮かび上がらせることのできる人物こそ、一族に繁栄をもたらし次期総帥の花嫁となるー骨董商の凌は、その条件を満たす者として傲岸不遜な塔真家三男、貴礪に監禁され、花嫁として手ほどきを受けることに…。だが、お家騒動をめぐる罠が次第に明らかになり…。書き下ろしスリリング・ウェディングロマン。
ライバル会社に潜入し情報を仕入れてこい!-運営していたネットショップがつぶれ失業した青山は、共同経営者の命令で、とある会社に潜り込んだ。が、なんと、そこの社長は中学時代の同級生、赤星だった。この思い込み激しすぎ男には、散々パシられた挙句、バージンまで奪われるという苦い思い出が…。そんな二人が新商品「Hの時の喘ぎ声で相性診断」の実験台に…。書き下ろし急旋回リーマン・エロコメ。
経理係の横領で二〇〇〇万円もの負債を抱えたペーターは、ある日奇妙な事件に巻き込まれる。見知らぬ女から強引に、ある会社社長に届け物を頼まれるのだが、その中身は足の親指。女から執拗な嫌がらせを受けていた社長に借金返済を約束されて、ペーターは探偵役を引き受ける。だが、いつのまにか女が仕掛けた巧妙な罠にはまっていた…。緊迫の追跡劇を描きながら、亡き父親の温かみが忘れられず、母親から疎外された痛みを抱える主人公の内奥をも克明に書き込んでいく。『喪失』で話題を呼んだ北欧ミステリー界の女王ー鮮烈なデビュー作、ついに登場。
時は天保。蝦夷地では、情けを忘れた武士や利に溺れる商人が、民を苦しめていた。森に大河に血涙が流れる。彼らの非道、断じて許さぬ!青年は起ちあがった。闇色の装束を身にまとい、栗毛の駿馬を操り、悪党どもに鞭をふるう。瞳に宿すは、破邪の炎。北の果て、つむじ風の如く駆けめぐる、黒頭巾。彼が蒔いた正義という名の一粒の種は、荒野に実るのか?痛快時代小説、見参。
麻薬とワインの飲み過ぎで恋人と泥酔状態に陥った女子大生ブレット。気がつくと恋人は全裸で何者かに刺殺されていた。現場には血まみれのナイフと財布。彼女は殺人罪で逮捕されるが、かたくなに無実を主張する。ブレットの叔母の辣腕弁護士キャロラインは、姪を助けるため23年ぶりの帰郷を決意したが、彼女を待ち受けていたのは、思いもよらぬ事件と秘められた過去の愛憎劇だった。
ブレットに対する予審がいよいよ始まった。検察側が突きつける一見隙のない論証を、キャロラインは水際に立った弁護で次々とひっくりかえしながら、独自の調査をもとに着実に犯人を追い詰めていく。しかし、捜査が進むにつれ、彼女が23年間封印してきたある記憶がよみがえってくる。永遠に故郷を捨てることを決意した、あの悪夢の事件が…。サスペンスの巨匠による最高傑作登場。
父親のダーク・ピットと奇跡の対面を果たしたダーク・ジュニアとサマー。二人は早速、NUMAの一員としてカリブ海に赴く。海面は広範囲にわたって褐色の汚濁物質に覆われ、おびただしい生物が死滅していた。物質の発生源はニカラグアの沖合。この国では、ある複合企業が中国の資金提供を受けて国家横断鉄道の建設を進めているー。最強の父子が地球の危機に挑むシリーズ第17弾。
鉄道に見せかけた長大な運河の建設目的を知ったNUMAの面々は戦慄する。それが開通すれば海流は向きを変え、メキシコ湾流の水温が劇的に低下。ヨーロッパ全域はシベリア並みの極寒に苛まれる。焦眉の急を悟ったヒットはジョルディーノとともにニカラグアに向かった。複合企業の黒幕の正体は?中国の隠された狙いは?警備の厳重な地下の掘削現場で、二人は壮絶な闘いに臨む。
母は家を出、父は死んだ。たった一人の妹は余命三か月の宣告を受けている。十二歳の少年スンウは、妹ヨンヒの最後の望みをかなえてやろうと、彼女の手をとり、母を捜す旅に出る。そこに忽然と現れたのが、組織を裏切って命を狙われているヤクザのナルチだった。幼い薄幸の兄妹と冷血漢。三人の奇妙な旅の果てに待っていたものは…。感動のラストシーンに涙が止まらない。今、韓国で最も人々の心をとらえている作家、チョ・チャンインの渾身の最新作。
謎を秘めて妖しく輝く火星に、ガス状の大爆発が観測された。これこそは6年後に地球を震撼させる大事件の前触れだった。ある晩、人々は夜空を切り裂く流星を目撃する。だがそれは単なる流星ではなかった。巨大な穴を穿って落下した物体から現れたのは、V字形にえぐれた口と巨大なふたつの目、不気味な触手をもつ奇怪な生物ーー想像を絶する火星人の地球侵略がはじまったのだ! かつてジョージ・パルが映画化し、スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で再度の映画化が果たされた傑作。初出誌〈ピアスンズ・マガジン〉の挿絵を精選、多数採録して贈る。訳者あとがき=中村融
両国から浅草、吉原と数日の間に夜鷹(街娼)が斬殺される事件が相ついだ。いずれも辻斬りの仕業と思われ、被害者は袈裟懸けで一刀のもとに殺られていた。本所吉田町で夜鷹の会所を営む菰の十蔵に、用心棒として雇われている馬庭念流の剣客・鳴海九重郎は、ある夜、偶然にも辻斬りを目撃した。遠い暗がりで刀を揮ったのは、同じ会所の用心棒、小野川頼母に似ている侍だった。友への疑念を打ち消した九重郎だったが、その頼母は姿を消し、首には賞金がかかろうとしていた…。
日米両国に最新鋭空母が就役した。日本は『あさま』、アメリカは『ジョージ・ブッシュ』。グアム島沖で対抗演習をすることになった両空母だが、異変はそこで起こった。濃霧に包まれ通信が途絶し、コンピュータの日付は1944年6月18日を表示。日米の空母は太平洋戦争の最中に飛ばされてしまったのだ。『ブッシュ』司令のキンバリー長官は、あくまで米海軍は米国のためにあると、スプルーアンスの第5艦隊に味方することを決断する。一方、『あさま』は史実で大敗を喫した帝国海軍第一機動艦隊を援護すべく行動を開始した。決戦の火蓋を切ったのは『ブッシュ』だった。日本艦隊に襲いかかるF/A-18ホーネット。それを迎え撃つ『あさま』のF-35J。太平洋戦争の天王山マリアナ沖海戦を舞台に、日米の新旧艦隊が機略を尽くす熾烈な戦闘の行方は?才能を惜しまれつつ急逝した著者の最後の書下ろし。