出版社 : 光文社
紀州の山間の小さな町に紅滝という美しい滝がある。その滝には運命の恋と信じた相手に裏切られた姫の、哀しい伝説が残されていた。だが、伝説が語らない恋の歴史があった。それは逃れることのできないさだめの螺旋。現代から過去ー大正、江戸、安土桃山、そして南北朝へと逆巻きに、二人は出会いを繰り返す。恋に呪いをかけた二人の誓いとは。紅滝に奇跡は起きるのか。
大友宗麟の家臣、戸次道雪のひとり娘、ギン千代は、幼い頃から男勝りで武芸に秀でていた。目指すは最強の女武将だったが、高橋紹運の嫡男、統虎に懇願され、妻として生きる覚悟を決める。だが、統虎とは子を生さぬゆえ不仲が囁かれていた。実は統虎は、愛しても無駄だと知りながら、それでも妻をひたむきに愛し、ギン千代も必死にそれに応えようとしていたのだ。大藪春彦賞作家が謎多き女城主の「性」と「愛」に迫る戦国小説の新境地。
あなたも探しているでしょう? 悪魔のように魅力的なあの女を。 ホラー作家・最東対地は、大阪の夜凪を舞台にしたホラー小説を書こうとしていた。夜凪とは大阪の五つある色街のこと。編集者とともに取材に訪れた夜凪のひとつ、椿夜凪で最東は梅丸という遊女の噂を耳にする。梅丸はなぜか複数の夜凪に出没する美貌の女で、血なまぐさい噂がつきまとう。これは小説の素材になりそうだ……。最東は梅丸の謎と夜凪に潜む怪談を集めはじめる。だが、梅丸の話を新たに収集するたびに、不思議な感慨を覚えるのだった。自分は彼女と会ったことがあるのではないかーー
心臓移植経験者である南美希風は、その移植手術を執刀した恩人の娘であるエリザベス・キッドリッジの長期休暇に合わせて日本中を旅していたが、行く先々で不可解な事件に巻き込まれていく。すべてが反転した“あべこべ”の密室。雨中、庭に放置された全裸の被害者。悠久の森に佇む異質な殺人現場。シリーズ史上最高となる圧巻のロジックで名探偵・南美希風が奇跡の不可能犯罪に挑む! 柄刀一版“国名シリーズ”ここに完結!
不妊治療クリニックで胚培養士として働く長谷川幸。子供の頃から虫メガネにはまり、小さな世界、そこに息づく命に魅了されてきた。受精卵と向き合い、命の誕生を願うこの仕事を天職だと思っているが、実は幸自身も出生に秘密を抱えていてー。報われない挑戦、人生の選択、それぞれの幸せ。生殖医療にかかわる人間たちの葛藤と希望を描く書下ろし長編。
刑務所に一般市民を招くオープンデイ。盛況に沸く中、元受刑者の首吊り死体が発見され、会場は瞬く間に騒然となった。路頭に迷っての自殺を有力視する刑務官たち。しかし、現場に居合わせた警視庁の花房らは疑問を抱く。死んだのは弱者を食い物にしてきた男なのだ。自ら命を絶つとは考えにくい。捜査陣の介入に刑務官たちは頑なな拒絶を貫こうとする。彼らは何を守ろうとしているのかー?花房の目は事件の綻びを見逃さない。正統派倒叙ミステリーの精華!
この世は地獄だ。だが、このマンションで未来を変えてやる。老朽化により修繕不能となったタワーマンション、通称・トウキョウマンション。かつての高級マンションも、資産価値が大暴落を続け、空室も目立ち始める。その果てに不法滞在の外国人や犯罪者など、いわくつきの人間が住みついて“治外法権”と化した。日本の暴力団や中国マフィア、警察をも巻き込んだ不可解な事件が連続する中、懸命に秩序を守ろうとする管理人たち。その真の目的とは?貧困、格差、暴力から身を守るために、この物語がミニマルな新しい秩序を創り出す。
幼い頃に母を亡くし、父が再婚した継母とうまくいかず不登校になった岸本聡里。愛犬だけが心の支えだった聡里は、祖母に引き取られペットたちと暮らすうち、獣医師を志すように。北農大学獣医学類に入学すると、慣れない寮生活が始まった。面倒見のよい先輩、気難しいルームメイト、志をともにする同級生らに囲まれ、学業や動物病院でのアルバイトに奮闘する日々。伴侶動物の専門医を目指していた聡里だが、馬や牛など経済動物の医師のあり方を目の当たりにし、「生きること」について考えさせられることにー北海道の地で、自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた感動作!
失ったものと手に入らなかったものについて、お話しします。クラスメイトの稚拙な行動の理由。パリに降り立った彼女の秘めた思い。忘れ得ぬ在りし日の祖母の姿。他人のものばかり欲しがるあの子。いるはずのない住人の気配。甘やかに秘密を分かち合う二人の女。宿命的な死に蝕まれた村。妻と別れた男に訪れた非日常。言い訳はいらない。もう、とりつくろえない。隠された真実に気づかせてくれる珠玉の作品集。
そのホテルは犯罪者たちの楽園。守るルールは2つだけ。一、ホテルに損害を与えない。二、ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない。ルールを破ったらホテル探偵が必ずあなたを追い詰めます。
江戸時代の大坂は土佐堀川にかかる淀屋橋のたもとで、ぼろぼろの屋形船を住まいとする白鷺烏近。「ご無理ごもっとも始末処」の看板を掲げ、客が持ち込む無理難題を愉快な仲間とともに知恵で解決する男だ。わがままな殿様を懲らしめるため川の流れを逆にしたり、金持ちを長生きさせるためにいるはずのない人魚の肉を探し出したり、となんぎな依頼も白い鷺を黒い烏と言いくるめる烏近にかかれば、パッと解決。愉快、痛快な頓知の曲芸が、あっといわせる人情事件帖。
一生働ける場所が欲しい、金しか信じられないんだ。大義のためなら、家族も子供もどんな犠牲だって払ってやる。自分さえ良ければそれでいいんだよ。時代の流れを掴めば勝ち組さー破壊と創造に明け暮れた怒涛の六十四年間を、年代ごとに描き出す異色の作品集。関東大震災の傷跡、戦争と復興、高度経済成長と公害、マスメディアの台頭、バブル崩壊…。時代の熱と人間の脆さが生みだす怪談はかくも怖くて愛おしい。
一日1錠、採血8回。13日間、三食保証いたします。…ただし、決して誰も信じないでください。隔離生活を襲う得体の知れない事件の数々。治験が終わるまで島から出ることは許されない。狙われているのは被験者か病院か、それともこの島かー
警察学校を首席卒業の五十嵐いずみに課せられた仕事は、なぜか警視庁の一室での資料整理。地味な作業に彼女はふて腐れてばかりいた。しかしある日、パソコンの画面が発する光に包まれたいずみは、自分が一九八五年の署長室にいて、署長の身体に憑依していることに気づく。折しも署では、資料で目にしたばかりの未解決事件捜査の真っ最中。事態に狼狽えている間もなく、いずみは思いがけず、“一日署長”として、現場の最前線に赴くことになるのだった…!
豊かで美しい本州最北の地・津軽に生まれ、母に「大将軍になりなされ」と吹き込まれて育った餓鬼大将・弥四郎(後の津軽為信こと右京亮)。津軽を足がかりにしてのし上がり、天下に覇を唱えんと、仲間と共にあらゆる手管を用い版図を広げていく。しかしその頃中央では、豊臣秀吉が圧倒的な力で各地の大名をねじ伏せ始めていた…。北東北の勢力地図を一代で塗り替え、地元で今も「髭殿」と愛される津軽為信。彼の痛快な人生を魅力的に描いた傑作誕生!
「オリンピックに一緒に出ようね」幼なじみの神崎水葉との約束を胸に、アーティスティックスイミングにすべてをかける高校二年の陣内茜だが、練習中に大怪我を負う。挫折の日々のなか、茜はいつも独りぼっちの同級生・西島由愛と親しくなる。しかし、茜とのペアを復活させたい水葉は、二人の関係に嫉妬をー。手さぐりの青春を瑞々しく描く感動作!
それは、きらめく銀色の刃が、凄惨な切腹場を果敢ない幻影に包みこみ、誰もが息を呑んで言葉を失くし、切腹場の一切の物音がかき消えた、厳かにすら感じられる一瞬だった。十八歳の春、首斬人としての生業を継いだ男の極致。
小六の息子・颯太の授業参観で母校を訪れた新城幹太。学校での颯太は家とは別人のように活発で、幹太は動揺する。三十年前、自分がこのK小学校に転校してきた際に遭遇した奇妙な出来事を思い出したからだー「シェルター」。M小に異動してきた庄内真奈は、給与明細に「危険業務手当」として三十万円の支給が記載されていることに気づく。「危険業務」に思い当たるふしはなく同僚に聞いてみると、三年二組の誰かが「手のかかる」児童だとわかりー「危険業務手当」。保護者、教員、事務職員、PTA、校長ー学校に集う大人たちに起きた、子どもが知らない5つの奇談。