2019年9月発売
第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞後、第2長篇『ゲームの王国』で日本SF大賞および山本周五郎賞を受賞した小川哲。その受賞後第一作となる短篇集を刊行する。奇想小説、歴史小説、そしてSF小説……ジャンルすべてを包含して止揚する傑作集の誕生。
ミモザの父・閑に一通の封筒が届いた。白い線で描かれた薔薇の絵のモノクロ写真が一枚入っていて、裏には「四月二十日。零時。王国にて。」とあった。病床の父は写真に激しく動揺し、捨てろと彼に命じる。その姿を見たミモザは春の夜、余命短い父のために指定された明石ビルに向かう。廃墟と化したビルの最上階には三人の男たちが待っていた。男たちは過去を語りはじめる。白墨の王国だったこのビルの哀しく凄まじい物語をー。
多摩川市は労働者相手の娯楽の街として栄え、貧困、暴力、行きつく先は家庭崩壊など、児童相談所は休む暇もない。児相に勤務する松本悠一は、市の「こども家庭支援センター」の前園志穂と連携して、問題のある家庭を訪問する。石井家の次男壮太が虐待されていると通報が入るが、どうやら五歳児の彼は、家を出てふらふらと徘徊しているらしい。この荒んだ地域に寄り添って暮らす、フィリピン人の息子カイと崩壊した家庭から逃げてきたナギサは、街をふらつく幼児にハレと名付け、面倒を見ることにする。居場所も逃げ場もない子供たち。彼らの幸せはいったいどこにあるのだろうかー。
30年前に起きた『北蓑辺郡連続幼女殺人事件』。逮捕された亀井戸健、伊与淳一は、死刑判決を受け収監されているが、亀井戸が喉頭癌のため獄死した。当時栃木県警捜査一課にいた星野誠司は、この事件には真犯人がいるのではとずっと思ってきた。刑事を引退した今、事件を調べ直したいと思った星野は、世論を動かすことが必要であると認識し、孫である大学生の旭とその友人・哲に協力を仰ぐ。“星野班”はSNSや動画投稿サイトを使い、“冤罪事件の真相解明をリアルタイムで見せる”という形で拡散することに成功。新たな証拠・証言を見つけ発信していくうち、「虎」と名乗る男から真犯人しか知り得ない情報を含んだ小包が届くー
小野宮楠生(33歳)は、ビルの清掃スタッフ・亀田礼子と元交際相手の山本若菜を殺害した容疑で逮捕・起訴されている。チャラい外見と「誰を殺そうと俺の自由だろ」という供述、逮捕時に笑顔でピースをするなどふざけた様子から「クズ男」と呼ばれ、彼を支援し続ける「クズ女」たちが現れるなど、話題に事欠かない。小野宮を担当する弁護士の宮原貴子は、調査を進めるうち彼が嘘をついているのではないか、という疑念を抱く。小野宮が幼少期に児童養護施設で過ごした宮城県M町へ赴き、彼と面識のあった宍戸真美という女性の存在をつかんだ宮原は、現在の真美に接触すれば小野宮の犯行動機が見えてくるのではと思ったが…クズ男はなぜ、快哉を叫びながら人を殺したのか。一気読み必至の心揺さぶる長編ミステリー。
「天才高校生作家誕生!」という触れ込みでデビューした榛名忍。第一作は二十万部も売れた。二〇二〇年のオリンピックが東京に決まった頃だ。だが、その後、大学生となった忍は思うような結果を残せず燻っていた。そんな折、学内のテレビで流れるリオ五輪ハイライト番組で、競歩の結果を目にする。独特な競技スタイルを不思議に思っていると、背後で男子学生が号泣していた。こいつは一体、なんなんだ!?その夜、忍は担当編集者から、次作は東京オリンピックに向けてスポーツ小説はどうか、と勧められ、思わず「競歩」と口にしてしまうー。青春のきらめきが迸る。スポーツ小説の新たな傑作がここに!
お屋敷街の麓にある新興住宅地に引っ越してきた中学3年生の凪。周辺は自然豊かで、大きな庭がある家も多いが、母親が大の虫嫌いのため、凪の家の庭はとても小さい。ある日、ひょんなことから、近所の豪邸に住む嘉世子と知り合いになった凪。嘉世子が、大好きなアイドル・ヒカルの祖母だと知り、なんとかヒカルに近づけないかと目論む。嘉世子の家に招かれ、まるで森のような広大な庭に圧倒されていると、なんとイモムシの世話を託されることに!ヒカルに近づく最短距離だと思い、しぶしぶ引き受けるが、いつの間にか不思議な愛らしさといじらしさに満ちたイモムシに魅了されてゆく。しかしそんな穏やかな日々に不穏な影が忍び寄り…。多感な少女の心の成長を描く、爽やかでほろ苦い青春ストーリー。
「俺の傍にいりゃ問題ない。おまえは俺が守るさ」 極道である自分と共に生きるため、身の回りの付き合いを全て捨てた遙を愛しく思う柾鷹。 遙を甘やかし愛する毎日だったが、知紘が誘拐されたことで一気に状況は緊迫する…! 激昂する生野が駆けつけ知紘は無事救出されるが、対立組織に加えて麻取が潜入捜査をしているという情報が柾鷹の耳に入る。 きな臭い人間模様はやがて遙も巻き込んで大騒動に…!? 柾鷹は組を、遙を守り通せるか!?
一時帰国中の基は、功と自社ホテルで打ち合わせ中。 その頃、ジーンは貴史と一緒にいた佳人と偶然再会しーー。 作家生活20周年を記念して、遠野春日のリブレ2大人気作品、 情熱と摩天楼シリーズのノベルズ未収録作品、 さらに大量書き下ろしを収録した珠玉の作品集★ それぞれのシリーズをまたいで 遥&佳人と都筑&基の会話も楽しめたり、 遠野春日の歴代作品の中から名だたるキャラが登場する クロスオーバー作品も読める、 貴重な20周年の節目に贈る豪華記念本!
ーー異世界で頼り甲斐ある獣人二人に深く愛される日々。 獣人が支配する世界(しかも♂しかいない!)に少年の身体で転生したチカ。 医学の知識をこの世界でも生かしつつも、都合のいい薬が手に入りすぎることに疑問をもっていた。 危険な森の深奥でようやくその秘密を知った矢先、チカはさらわれてしまう。激昂し駆けつけたダグラスとゲイルが目にしたものは…!? イケメン狼の獣頭人も登場! いつでも恥ずかしいほど愛されちゃってオール書き下ろし! ラブで満ちてる獣人×溺愛ファンタジー ♥
『後宮の烏』の著者が描く和風アリスファンタジー! 「早くわたしを見つけて」 禁忌の庭に住む少女と、優しすぎる探偵が解く、切ない秘密。 「庭には誰も立ち入らないこと」--光一の亡父が遺した言葉だ。 広大な大名庭園『望城園』を敷地内に持つ、江戸時代に藩主の別邸として使われた三日月邸。光一はそこで探偵事務所を開業した。 ある日、事務所を訪れた不思議な少女・咲は『半分この約束』の謎を解いてほしいと依頼する。彼女に連れられ庭に踏み入った光一は、植物の名を冠した人々と、存在するはずのない城を見る。
民家で発見された男性の絞殺体ーー殺害現場から持ち去られていたのは、一枚の「金貨」だった。“完全犯罪”を計画していた犯人を、臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖がロジックで追い詰めていく!表題作「カナダ金貨の謎」ほか、切れ味鋭い中短編「船長が死んだ夜」「エア・キャット」「あるトリックの蹉跌」「トロッコの行方」を収録。待望の〈国名シリーズ〉第10弾!
☆☆ミステリランキング続々ランクイン!☆☆ 東大ミス研出身の25歳の挑戦状は、驚愕必至! 「2020本格ミステリ・ベスト10」(原書房)国内ランキング 第3位 「ミステリが読みたい! 2020年度版」(ハヤカワミステリマガジン)国内篇 第5位 「このミステリーがすごい! 2020年度版」(宝島社)国内編 第6位 ☆☆☆ 全焼まで、残り35時間。 館に山火事迫る! 殺人の真相を解き明かし、絡繰だらけの館から脱出せよ。 ☆☆☆ 山中に隠棲した文豪に会うため、高校の合宿を抜け出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。 救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。 だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。 これは事故か、殺人か。 葛城は真相を推理しようとするが、住人や他の避難者は脱出を優先するべきだと語りーー。 タイムリミットは35時間。 生存と真実、選ぶべきはどっちだ。
今日も二人は"殺し愛" 夫と妻の視点に分かれ気鋭の著者二人が競作する、予測不能なラブサスペンス! 平凡なサラリーマン・藤堂光弘。夫を愛する専業主婦・藤堂咲奈。二人は誰もが羨む幸せな夫婦……のはずだった。あの日までは。 光弘は気付いてしまった。妻の不貞に。咲奈は気付いてしまった。夫の裏の顔に。彼らは表面上は仲のいい夫婦の仮面を被ったまま、互いの殺害計画を練りはじめる。 気鋭の著者二人が夫と妻の視点を競作する、愛と笑いとトリックに満ちた"殺し愛"の幕が開く!
オリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD』に登場する勘解由小路(かでのこうじ)三鈴のifの世界を描いたスピンオフ小説。 「勘解由小路三鈴、世界で初めての失恋をします。」 平凡で物静かな中学生活を送っていた三鈴のもとに、ある日、未来からやってきた自分、ミスズが現れる。 彼女は、これから三鈴が出会うとても大切な二人を助けるために過去に来たと話し、ある任務への協力を依頼する。 ミスズと出会ったことで、大人しい自分から、どんどん感情を表に出す魅力的な少女へと成長していく三鈴。 やがて高校へ進学した彼女はそこで運命の二人、直実と瑠璃に出会う。 ようやく出会った二人の幸せのために三鈴ができること、それはーー。
ブラック上司と対立し、大手管理会社を辞めてマンション管理士として独立した創士郎。 マンション管理士はマンション管理の専門家だが、 独占業務がないので職業としては成り立っていないのが現状だ。 不安いっぱいの開業早々、インターン志望の女子高生・紫が押しかけてくる。 なりゆきで紫を伴ったまま、近所の大規模マンションに売り込みをかける創士郎。 ごみの窃盗事件や管理費未払い問題などを解決し、 何とか管理組合に顧問として任命されることになった矢先、 創士郎の活動を妨害する者が現れた。それは、元いた会社のブラック上司だった。 果たして創士郎の初仕事の行方は? そして、判明した紫の意外な正体とは……。
京都を彩る花鳥猫。水にまつわるあやかし事鎮め、じんわり優しい3つの物語。 過保護な幼馴染みの拓己と水神さまのシロに世話を焼かれながらの京都・伏見暮らしも早や半年。 高校二年生になったひろは進路希望届を前に悩んでいた。 京都に残るか、東京に戻るか、進学するのか、 そして将来何をしたいのか……決められずにいた。 そんなある日、親友で陸上部に所属する陶子の様子がいつもと違うことにひろは気づく。 そこに不思議な少年の声が聞こえてきてーー!? (「飛燕の絆」) 造り酒屋の清花蔵の跡取りである拓己が、蔵の庭造りをすることになった。 ひろは拓己の剣友が住む寺へ行き、拓己と一緒に紫陽花を選んだのだが…?(「六月の猫」)。 7月に入り、友人たちと祇園祭りに行く約束をしたひろに、去年クラスメイトだった大野達樹が「話がある」と言ってきて…?(「瑠璃色の夜明け」) 緑眩しい初夏から夏の京都を彩る、花鳥猫。水にまつわるあやかし事鎮め、 じんわり優しい3つの物語。
青空のかなたへ、大きな弧を描くーー央学高校ラグビー部の奇跡 かつて強豪と謳われた央学高校ラグビー部は、 いまや勝ちなし、メンバーすらも集まらない危機に瀕していた……。 「来るんじゃなかった……」倒れた母親に代わり、 部員たちが暮らす白虹寮の代理・寮母になった山田瑞希にも、 覇気のない少年たちにしか見えなかった。 ーーあのプレイを見るまでは。天才肌のスタンドオフ・逸哉と人知れず努力を重ねるウィング・龍之介。 それぞれの夏に心揺さぶられる瑞希。 いつしかラグビーへの想いが、前へ進むことを躊躇っていた三人を変えていきーー? 第一話 四月の終わりーー 心奪うような、その独走 第二話 五月の扉ーー どれほど雨が降ったとしても 第三話 八月の夜空ーー 二人を載せた脆い天秤 第四話 十一月の決戦ーー 虹の軌跡のその果てに