2019年7月発売
人でごった返すスペイン、マドリードの空港。搭乗便を待つメーガンは思いがけない人物にでくわした。エミリオ・リオスーずっと憧れていた兄の友人。冷酷な経営手腕と派手な女性関係で知られる裕福な実業家だ。2年前に冷たくあしらわれて以来、距離を置いてきたけれど…。すると彼は挨拶もないまま、メーガンを引き寄せてキスした。呆然とするメーガンに、彼は謎めいた視線を送ってたたみかける。「今夜、僕と一緒に過ごさないか?」「100万ドル出せるならね」動揺のあまりメーガンは軽口で返した。それが、めくるめく嵐のような1日の始まりだったー
挙式の直前で婚約者に裏切られたリリーは、おばのもとに、 しばらく滞在することにした。だが、一つ気がかりなことがある。 アレッサンドローーおばの屋敷に住まう、初恋の相手のことだ。 おばに拾われて、イタリア有数の実業家にまでなったが、 孤児だった彼は、想像を絶する悲惨な少年時代をおくったという。 その生い立ちが影を落とし、鼻持ちならない人間なのだ。 いまは誰にも傷つけられたくない……誰も愛したくない…… 複雑な想いを抱えたまま、リリーはアレッサンドロと再会する。 変わらぬ美貌にひどく冷酷な笑みを浮かばせたーー
病身の母を救うため、オリンピアは祖父のもとを訪ねていた。駆け落ちした母は、ギリシア富豪の祖父に勘当されたが、かつてオリンピアは祖父の屋敷に招待されたことがあった。そこで結婚相手にと紹介されたのが、若き実業家ニックだった。魅力的な大富豪に、オリンピアはたちまち夢中になるも、ニックの親友とあらぬ関係を疑われて、疎遠になっていたのだ。援助する代わりに、その彼との結婚を祖父につきつけられ、戸惑うオリンピアをニックは無遠慮に眺めながら、言い切った。「僕の跡継ぎを産むのが、結婚の条件だ」と。
母の死後、19歳のメレデスは幼い弟とふたりだけになった。 困窮したメレデスは、長らく絶縁状態にあった ファウラー大財閥を築いた、母方の祖父を頼るしかなくなった。 だが祖父は血筋のためなら、なんでもする冷徹な人物だという。 機転をきかせた彼女は屋敷に着くなり、権力闘争から守るために 弟を自分の息子だと偽るが、すぐに激しく後悔した。 祖父の後継者、実質上の大財閥の統括者であるデインに、 身持ちの悪い女だと、底冷えする目つきで蔑まれたから。 そして、メレデスは寡黙で美しい彼に心を奪われたから。
私が本当に愛されるわけがないーわかってはいたが、バイオレットはその夜、憧れのブレイクの腕を拒めなかった。元ボスのブレイクは、太り気味だと彼女を揶揄していたのに、会社を辞めて垢抜けると、とたんに目の色を変えてきたのだ。ところが、バージンを捧げたバイオレットの妊娠が発覚しーブレイクは結婚を申し込んでくれたけれど、彼女は落ち込む。恋人を事故で失って以来、独身を通してきたブレイクにとって、それは愛でなく、責任を果たすためのものにすぎないから。それどころか目的は、バイオレットの体だと告げられて…。
就任式で新オーナーを見てキャシーは気を失いそうになった。 6年前、キャシーと情熱的な一夜をともにして結婚も誓ったのに、 そのまま姿を消し、ひどい仕打ちをしたサンドロではないかと。 その後、キャシーは妊娠に気づいて愕然としたが、 誰にも頼ることなく、一人で双子を産んで育ててきた。 妊娠がわかったときに一度だけ電話をし、すげなくされた、 あのときの絶望感は、いま思いだしても鋭く胸を刺す。 呆然とする彼女の前で、サンドロは残酷すぎる言葉を口にした。 「僕たちは以前、どこかで会ったことがあるのだろうか」
長い金髪を額でわけて腰まで垂らし、透き通るように白い肌。 19世紀の絵画から抜けだしてきたような花屋のソーニャは、 30歳以上も年上の富豪に見初められて、婚約間近だった。 ところが晩餐会で見た、富豪の甥デイヴィッドに胸がざわつく。 男らしい彫りの深い美貌が眩しく、心惹かれたのだ。 だが身を落としているとはいえ、ソーニャは滅びた貴族の末裔で、 誰にも言えないような、忌まわしい過去の呪縛に囚われている。 しかも、デイヴィッドには財産目当ての女と嫌われていて……。 私の愛は叶わぬ夢と、未練を断ち切るように彼女は目を伏せた。
幼い頃から“あやかし”を見る能力を持つ大学4年生の静(しず)姫(き)。そのせいで卒業間近になるも就職先が決まらない。絶望のなか教授の薦めで、求人中の「いざなぎ旅館」を訪れるが、なんとそこは“あやかし”や“神さま”が宿泊するワケアリ旅館だった! 驚きのあまり、旅館の大事な皿を割ってしまい、静姫は一千万円の借金を背負うことに⁉ 半ば強制的に仲居として就職した静姫は、半妖の教育係・葉室(はむろ)先輩と次々と怪異に巻き込まれてゆき…。個性豊かな面々が織りなす、笑って泣けるあやかし譚!
父の再婚で家に居場所をなくし、大学進学を機に京都へやってきた文香。ある日、神社で1冊の御朱印帳を拾った文香は、神だと名乗る男につきまとわれ…。「私の気持ちを届けてほしい」それは、神様の想いを綴った“手紙”だという。古事記マニアの飛鳥井先輩とともに届けに行く文香だったが、クセの強い神様相手は一筋縄ではいかなくて!? 人が手紙に気持ちを託すように、神様にも伝えたい想いがある。口下手な神様に代わって、大切な想い、届けます!
高2の奏(かなで)は小学生の頃観た舞台に憧れつつ、人前が極端に苦手。ある日誘われた演劇部の部室で、3年に1度だけ上演される脚本を何気なく音読すると、脚本担当の一維(いちい)に「主役は奏」と突然抜擢される。“やりたいかどうか。それが全て”まっすぐ奏を見つめ励ます一維を前に、奏は舞台に立つことを決意する。さらに脚本の完成に苦しむ一維のため、彼女はある行動に出て…。そして本番、幕が上がるーー。感動のラストは心に確かな希望を灯してくれる‼
その結末に、あなたは耐えられるか…⁉「どんでん返し」をテーマに人気作家7名が書き下ろす、スターツ出版文庫発のアンソロジー、第二弾。寂しげなクラスの女子に恋する主人公。彼だけが知らない秘密とは…(『もう一度、転入生』いぬじゅん・著)、愛情の薄い家庭で育った女子が、ある日突然たまごを産んで大パニック!(『たまご』櫻井千姫・著)ほか、手に汗握る7編を収録。恋愛、青春、ミステリー。一気読みして驚いて、また最初から読み返し…。ハッとする。グッとくる。今年一番の衝撃短編、ここに集結!
駆出しの作家だった頃の私が取り組み、完成できなかったノンフィクション。それは、ある忘れられた柔道家の型破りな半生を追ったものだった。だが、彼に寄り添う女、高校時代の恩師など、取材を進める毎にその実像はぼやけていく。一方、私と本人の間には、取材対象と取材者の垣根を越えた感情のさざ波が立ち始めー相対する二つの魂の闘争と交歓を描く。
東日本大震災の翌年、僕は京都から上京した。大学のキャンパスで出会った君は独り政治活動を行い、浮きまくっていた。啄木の歌を愛し、諳んじる僕はアニメ研究会に引きずり込まれ、ヲタと二次元の洗礼を受けつつ君に惹かれ、身を投じていく。生きにくさと時代閉塞を打破するコミカルでシリアス、一途な平成meets Revolution!平成の終わりに恋と革命に萌えた若き命。
ロシア語時代のナボコフ最高傑作に蝶への情熱に満ちた初邦訳の短篇を付す。ロシアから亡命し、ベルリンに暮らす駆け出しの詩人フョードルは、祖国への郷愁、鱗翅学者の父への追慕、急進的知識人の伝記執筆、ジーナとの恋愛を通じて芸術家へと成長していく。言葉遊戯を尽くし、偉大なるロシア文学作品の引喩に彩られた「賜物」と、その関連作品としてナボコフの死後に発表された「父の蝶」を収録。
過労死してしまった青年が異世界に転生。そこは魔術が存在する世界であった。双子の弟カイル、そして幼馴染の少女ルイズと共に王都の魔術学院へと入学したアインは、前世の知識を活かし新たな魔術を開発する日々を送っていた。惜しげもなく魔術を公開するアイン。しかしそれは、アインの知らないところで謎の組織の誕生へとつながっていく。そして出会う新たな人々。アインは化学の知識を活かし、異世界の流通に革命を起こしていくー。「小説家になろう」発、大人気ヒューマンファンタジー第2弾!!
異世界転生した40歳の男がなりたかったものとはなんでしょう? 勇者様でしょうか? 魔王様でしょうか? それともハーレムを作ること……? いいえ、男が、何がなんでもなりたかったものーーそれは異世界イチの、害虫ハンターだったのです!ゴキブリもヒトデもどんと来い! 全部まとめて駆除対象だぁぁぁぁ!!!エロ面白くて、ちょっぴりだけ役に立つ(?)害虫駆除ファンタジー!
かつてのパーティ仲間で恋人でもあるエルフのフィル、その妹のティル、美少女獣人のルーナ、ラルズール王国のお姫様のセレネと新たにパーティを組み、最強の冒険者をめざす中年、ユーヤ。高難易度のダンジョンに挑み、ボスモンスターを倒し、さらにレベルアップしたユーヤたちは、いよいよラルズール王国に足を踏み入れる。王国では、優勝者には王位が与えられる「継承の儀」が始まろうとしていた。ゲームの知識と鍛え抜かれた技で、三度目の人生に挑むおっさんの物語、待望の第四弾!
「小説家になろう」ローファンタジー部門全期間第一位達成! 「僕の部屋がダンジョンの休憩所になってしまった件」のスピンアウト爆誕!! 学生寮の管理人のジョブチェンジしたらダンジョンがオマケでついてきて、スクールカーストも上昇中!? 一つ屋根の下ではじまる、学生寮直結型異世界ファンタジー!! 両親に失踪され、東京の立川市にある学生寮の管理人をすることになった僕。 建物はボロボロ、寮生は奇人変人だらけ、幽霊が出る噂まであったその寮は、なんとダンジョンとつながっていた! クラスに友達は一人もいないけど、ダンジョンに行けば、モンスターを倒してレベルアップできる。スライムや女騎士、女魔法使いの友達もできた。 かくして今日も放課後の異世界冒険部がはじまる!
降りそそぐ小花、時空はゆらぎ、 小鳥の侍女たちが行き交う庭園と城館。 そこは迷宮? 小説と人形が織りなす奇蹟の幻想譚。 第46回泉鏡花文学賞受賞作家 山尾悠子の最新作!! あらたな領域に踏み入る記念碑的小説である。 ★物語と人形たち まず山尾悠子による「小鳥たち」という掌篇が書かれ、登場する小鳥たちを人形作家の中川多理が創作した。その人形作品を踏まえて『夜想#中川多理ー物語の中の少女』に続編「小鳥たち、その春の廃園の」が書かれ、再び呼応して新たな人形が作られた。 それを受けて、最終章「小鳥の葬送」が書き下ろされ、ついに中川多理の手から大公妃が産み出された。 ★摩訶不思議な幻想小説の奇蹟の成立 山尾悠子の幻想譚は、場面が揺らぐように紡がれていき、確かにそこに伽藍はあるのだけれどもこちらの認識が朧になるという快楽性をもっている。構造はあるが、揺らいでグラデーションでずれていく。その揺らぎに現実の人形が参加しているのだ。 母、娘、そして侍女……幻想の物語、幻想の人形そして幻想の本として収斂する『小鳥たち』。