2019年7月発売
ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしている──。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。
ヒラヒラと舞う雪花、冬の枯れ草の暖かい匂い、鉄の規律に縛られた軍隊生活、テーブルに刺さった赤い箸の十字架…。農村と軍隊と信仰をめぐる9つの短篇。ノーベル文学賞候補と目される作家が自ら選んだ傑作集。
北町奉行所の元筆頭同心で今は“居眠り番”の蔵間源之助は、元老中で隠居の白河楽翁と鉄砲洲の鰻屋で食事をした直後、店の前で何者かに襲われ昏倒。その隙に楽翁は貴船党を名乗る一団に拉致され、身代金として松平家の家宝「鳳凰の香炉」を要求された。翌早朝、奥女中が貴船党の指定場所に香炉を運び、楽翁は…。家宝の香炉はいつの間にか贋物にすり替えられていた。
評定所に吹き荒れる嵐。 天領の代官への訴追に潜む狡猾な企みとは? 新任の留役組頭が評定所を牛耳らんと古参組頭に罠! 代官はなぜ年貢米よりも、養蚕を領民に勧めたのか? 上州の農民が真実を明かす。 任地の上州で代官の権限を私し、年貢米を差し置いて領民たちに増産させた絹織物の売り上げを献上させ、私腹を肥やした──。 折しも新任の留役組頭の“策謀”に揺れる評定所に送られてきた代官は、新任組頭と苦闘中の古参組頭の“恩人”だった。“罠”だ。 謹厳実直で名を馳せた“恩人”を救え・・・・・・。元留役の結城峰太郎と次男坊の小次郎、目付・遠山景晋の息子金四郎は上州へ。 ◆ 著者について 牧 秀彦 まき・ひでひこ 1969年東京都生まれ。 好評既刊に「辻番所シリーズ」(光文社文庫刊)、「江戸家老塩谷隼人」「日比野左内一手指南」「松平蒼二郎始末帳」シリーズ(徳間文庫刊)等がある。 完結した作品については、「時代小説作家 牧秀彦 公式Webサイト」 に著者自らによる解説を掲載。 ◆ 好評既刊 神道無念流 練兵館 不殺の剣 孤高の剣聖 林崎重信 全 2 巻 八丁堀 裏十手 全 8 巻 ( いずれも二見時代小説文庫 )
将軍世嗣の剣術指南役であった柳生久通は、老中松平定信から突然、北町奉行を命じられる。一刀流免許皆伝とはいえ、市中の屋台めぐりが趣味の男への、あまりに無謀な抜擢に尻込みするが、下手人の知れない、お城御門近くでの付け火に自らが立ち上がる。親の敵に間違えられたり、昼行灯と揶揄されもするが、能ある鷹は爪を隠す、久通の剣の冴えが、火付け一味を一刀両断!
妻が旅行から帰宅した。が、武彦の妻・有沙ではなかった。にもかかわらず、妻としてふるまう女。妻の携帯にかけても、鳴るのは女の携帯。静観を決めこんだその夜、迫られて「妻とは別人の女」との行為にのめり込んだ彼。何が起きているのかを解明すべく、本当の妻を知る女性たちを訪ねていく先々で…。今一番新しい形の書下し官能エンタメ!
これって……裸だ……! 森に迷いこんだ少年が覗き見た見た女体。 しかし、それでは終わらなかった── 巨匠によるディープな傑作官能! 悦也は、マニアックなクラブに出入りしていているうち、人妻の美和を借り受けることになった。 早速、別荘で自分の嗜好をぶつける彼だったが、それを覗いていた少年の告白から、別の日にここで快楽に耽っていたらしい悦也の妹・麻央の性癖を知ることに。 美和と麻央……二人を巻き込んだ背徳の物語が始まる──。巨匠のディープな官能文学! ◆ 著者について 館淳一(たて・じゅんいち) 1943年北海道生まれ。日大芸術学部放送学科卒。 芸能誌記者、別荘管理人、フリー編集者を経て1975年新感覚のSM作家としてデビュー、単行本はもちろん、中間小説誌、男性誌、新聞などで数多くの作品を発表している。 ストーリーの面白さに官能描写のとけ込んだ独特の世界は数多くのファンに支持されている。 『母の密戯』『夜の手ほどき』『囚われの部屋』『夜のオフィス』『誘惑貴婦人』『母娘におしおき』『庶務課 淫らミッション』『熟女を狩る 淫ら顧客サポート』 『僕のアイドル初調教』『清純派アイドル 夜の素顔』『女神のストッキング』『先生の淫笑』『美人社長の肉体調査』(以上、二見文庫)などの他、 『純白のガーターベルト』(双葉文庫)をはじめ著書多数。 第 1 章 霧の中の二人 ……7 第 2 章 マニアックなセッション ……40 第 3 章 弄虐四重奏 ……71 第 4 章 そそるプロポーション ……93 第 5 章 ひとりプレイ ……127 第 6 章 甘い蜜の味 ……146 第 7 章 秘密のスタジオ ……165 第 8 章 ステンレスの環 ……197 第 9 章 美人熟女と若い娘 ……240 第 10 章 棚の上のビデオデッキ ……275 第 11 章 地下室のペット ……300 「股を開け」 鞭をかまえる前に、悦也は言った。 「……!」 それがどういうことを意味するのか、鞭打たれる美しい娘は即座に理解した。 ギョッとした顔で、泣き濡れた目を大きく見開き、まじまじと悦也を見てから、脚が許す範囲で──すでに踵が浮くほど吊られているのだ──じりじりと股を開いていった。 黒い秘叢が濡れた海藻のように見えるその奥に突出した肉の一部が見えた。 「とどめだ」 自分もかなり汗をかいている悦也が、最後の一撃を与えたのは女の最大の弱点、それゆえ男の攻撃欲を一番そそる部分、恥裂だった。 ゴルフのスイングのように斜め下から上へすくい上げるようにスイングされた 乗馬鞭の先端は、たがわずクリトリスの部分をひっぱたいたに違いない。 バシ。 「うぐ……!」
愛を求めて、バレリーナは踊る。 我が子に家族と幸せをあげたくて。 怪我をしたバレリーナ、ルビーがバレエ団から命じられた仕事は、 大事な支援者、大富豪マッテオの案内役だった。 銀行家で、プレイボーイとしても有名な彼の魅力にあらがえず、 ルビーは一夜をともにした。数週間後、身ごもるとも思わず。 私は親に愛されずに育ったけれど、この子に同じ思いはさせない。 彼女はマッテオに伝えるため、貯金をはたいて飛行機に乗った。 だがパーティを開いていた彼は、ルビーを見るなり顔色を変え、 人目に触れないように別の部屋に追いたてて姿を消した。 これは厄介払いということ? 彼女は人知れず泣いた。 卓越した筆力を持つ、ベラ・フランセスの邦訳デビュー作をお届けします。寂しい白鳥ーー孤独なヒロインはバレエに人生を捧げていましたが、ヒーローとの間に新しい命を授かったとき、ある真実に気づきます。孤独を癒やせるのは愛だけなのだと……。
天使が舞い降りたあの夜を、 わたしはずっと忘れない。 テディーは密かに産んだ息子をひとりで育てている。 あるとき訪れたホテルで元夫のギリシア富豪アリストとでくわし、 激しく動揺した。もう会わないはずだったのに、今ごろなぜ? じつは4年前の離婚の前夜、くすぶる最後の情熱を燃やすように テディーはアリストと肌を重ね合わせ、妊娠したのだった。 彼女の息子をひと目見るなりすべてを悟ったアリストは、 子供には両親のいる家庭が必要だと主張し、再婚を迫るが、 テディーの心は虚しく揺らいだ。彼がほしいのは息子だけ。 わたしが今も彼を愛していることに気づきもしない……。 『愛人記念日』『大富豪とうたかたの蜜月』と、ハーレクイン・ロマンスの王道作を次々にヒットさせている実力派作家ルイーズ・フラー。本作では人気のテーマ“シークレットベビー”を軸に、すれ違いで離れてしまった夫婦の再生ロマンスに挑戦しています。
再会した彼は冷たく傲慢で、 無垢な彼女は愛した男性の面影を探した。 ジョゼフィーヌはヨットから海に転落した男性を助けた。 怪我をした彼は記憶を失い、名前も出身もわからなかった。 ギリシアの太陽の下、二人はアダムとイヴのように惹かれ合い、 情熱的な7日間を過ごす。しかし、幸せは長く続かなかった。 彼の名前がアレクサンデルで、皇太子だなんて知りたくなかった。 すべてを忘れていたから、野暮ったい私を恋人と呼んだことも。 だが皇太子が国に戻ったあと、ジョゼフィーヌは妊娠に気づいた。 そのことを知らされたアレクサンデルの行動は迅速だった。 彼の命により、ジョゼフィーヌは塔に囚われの身となってしまう! ドラマチックで大胆な世界観で、読者をあっという間に物語に引きこんでしまうJ・ポーター。今作は記憶のない男性に身分違いの恋をする、激しくも切ないロマンスです。結婚を迫られても、彼との思い出があればいいと、身を引こうとするヒロインがけなげです。
きみを守ると言いながら、彼は奪った。 わたしの心も純潔も夢も。 空虚な船上パーティーの翌朝、頭痛に苦しむアリアンナの前に 驚くほど傲慢でセクシーなイタリア人男性が現れた。 「ぼくはサンティノ・ヴァザーリ。あなたの新しい護衛です」 また父が、厄介者の愚かな娘の監視役を雇ったのねーー ようやく父の愛を諦め、自立への一歩を踏み出したところなのに。 アリアンナは辟易したが、誘拐されかけたところを助けられ、 シチリアに逃れて寝食を共にするうち、サンティノに恋心を抱く。 だが、そのときのアリアンナには知るよしもなかった。 彼が人を愛することなどできない、冷徹な大富豪だということを。 父をふり向かせたい一心で社交界の花となり、“世界で最も恵まれ、最も価値のない娘”と呼ばれるようになったアリアンナ。サンティノもまた彼女の素顔を見ようとせず、心ない誘惑のゲームを仕掛けてきて……。愛を知らない哀しき乙女の、切なくも鮮烈な初恋物語。
早くに両親を亡くしたメイジーは音楽大学に通いながら、学費を稼ぐために夜は清掃員として働く毎日。ある日いつものように掃除をしていると、真夜中のオフィスで一人ウィスキーグラスを傾ける、大富豪アントニオに出会った。今日は亡き弟の命日らしく、彼は悲しみから逃れるようにメイジーを誘惑し、二人はそのまま熱い夜を過ごす。でもきっとこれは一夜の過ち。彼は住む世界の違う人だもの…。そう自分に言い聞かせるメイジーだったが、数週間後、妊娠に気づき、意を決してアントニオに会いに行った。だが彼は冷たく告げたー君とは会ったこともない、と。
恋愛運のない、捨てられた花嫁に、 富豪一族の長男が手をさしのべて……? 美しい海辺の式場で、花嫁のドーンは不安を隠せずにいた。 挙式の時刻はとっくに過ぎているのに、新郎が現れないのだ。 代わりに現れたのは、新郎の兄で富豪一族の長男クーパー。 彼は弟の手紙をドーンに渡し、結婚式の中止を冷たく宣言した。 これまでの人生、5度も恋人に手ひどく裏切られてきたけれど、 まさか今度は結婚式当日に捨てられるなんてーー “また捨てられた、かわいそうなドーン”という 周囲の囁きにいたたまれず、ドーンはその場から逃げ出した。 その彼女を追いかけてきたのは、当のクーパーだった。 傷心のドーンは、彼にもまた思惑があるとは気づきもせず……。 人生でいちばん幸せなはずの日は突然、最悪の日に。ウエディングドレスを脱ぎ捨てて、ひょんなことから新郎の兄と1週間をともに過ごすことになりますが……。人気急上昇中のソフィー・ペンブロークが贈る、キュートなシンデレラ・ロマンスをお楽しみください。
貧困家庭に育ったキャリーは早くから働き、16歳で住む家さえ失った。やがて心安らぐ相手と結婚したが、その夫も半年前に病死し、今は遺された幼い息子たちを育てながら、小さな店を切り盛りしている。そんなある日、キャリーは店に客として現れたディーコンと知り合い、彼の熱心な求愛と子供たちへの優しさに、恋心を抱くようになった。想いは日増しに募り、キャリーはある告白をするー車椅子生活だった亡き夫とは体外授精で子を授かったので、男性とベッドをともにした経験がないのだ、と。前向きに受け止めたディーコンに、彼女はさらなるときめきを覚えた。じつは彼が、富豪一族の出身だった夫の異母兄弟で、息子たちを手に入れようと近づいてきたことなど知りもせずに。
たとえ私の姿が見えなくとも、 この想いは彼に届くだろうか。 集中治療室で働く看護師のエリーズは、 事故で重傷を負ったデーモンを担当することになった。 有名な大企業を牛耳る社長だというが、今はその端整な顔も腫れ、 全身を管につながれて、昏睡状態だ。 見舞いの家族も来ない彼に寄り添い、耳元で懸命に声をかけるうち、 エリーズの心にはいつしか、特別な感情が芽生え始めていた。 だめよ、私情を挟んだりしちゃ。そう自分を戒めた矢先、 ついにデーモンが意識を取り戻すーー視力が失われた状態で。 やがて、看護師が同伴するという条件で退院を許された彼は、 ためらうエリーズを連れて、湖畔の別荘へ向かい……。 かつて信じていた人に手酷く裏切られたことで心に傷を抱える白衣の天使。彼女が孤独な大富豪の耳元に語りかけた言葉は、眠る彼の耳に届いていたのでしょうか? 初版時に爆発的に売れた、HQディザイアを代表するA・ブロードリックの名作。
私の代わりに、婚約を破棄したいと彼に伝えてきてーアリスは妹からの無理なお願いを断りきれず、妹の婚約者に会うため、ひとりギリシアへ飛んだ。旅の途中、とあるホテルに滞在していたとき、あろうことかボーイに扮した謎の男に誘拐されてしまう。名はステファン・カサンドロス。妹の婚約者をよく思わぬホテル王。アリスを妹だと思い、彼女を道具に一矢を報いようとしているらしい。彼女が必死で人違いだと訴えても耳を貸そうとせず、ステファンは彼が所有する地所へアリスを連れ去った。「きみを、思うがままに扱わせてもらう」と、容赦なく宣告して。
不器量で一文無しで、町じゅうの笑い物。 こんな私が、伯爵様に求婚されるなんて。 愛する家族を亡くし、横暴な祖父にこき使われているリジーは 祖父に付き添って訪れた保養地でハリー・ブレザートンと出会う。 どこか陰のある青い瞳の、優しくて魅惑的な紳士ーー こんなにすてきな男性が、私なんかに話しかけてくれるなんて……。 夢のような出来事に戸惑いながらも彼に惹かれていくリジーだったが、 噂を聞いた祖父に激怒され、田舎町の屋敷に連れ戻される。 ふたたびひっそりと使用人同然の暮らしをしていたある日、 リジーの前にハリー・ブレザートンが現れた。 彼は信じられないことを口にしたーー 僕はインバーセッグ伯爵で、あなたに求婚するつもりだと。 夢うつつの喜びもつかの間、ある事件に巻き込まれたリジーは彼に求婚された理由を悟って深く傷つきます。悲しみだらけの人生の、哀れな乙女の運命は……。超人気作家アニー・バロウズの筆が冴える〈神々の悪戯〉シリーズ第3話、心とろける蠱惑のフィナーレ!
母と妹のため二重生活をする娘は、 生涯独り身を覚悟したが……。 3年前、父の死に伴い、カミラは母と妹を連れて別の地へ移り住んだ。 上流階級でありながら一家の経済状態は困窮しており、 カミラは家族にも内緒で、扮装して“リゼット”の名で舞台に立った。 はしたないと揶揄される仕事で日銭を稼いでいるのが明るみに出れば、 社交界から軽蔑され良縁は望めないため、一生独身を貫くつもりで。 しかし、ようやく目処が立ち、これを最後と仕事を引退した夜、 彼女は賊に襲われ、舞台を見ていたアシュビー伯爵ニコラスに救われる。 すてきなお方……。でも、“リゼット”の正体は、絶対に明かせない。 朝まで護衛すると言われたが、彼女は不意をついて逃げ出した。 後日、さるレディの家で、カミラは妹から紹介された男性を見て凍りつく。 「カミラ、こちらはアシュビー伯爵。お近づきになりたいそうよ」 リゼットの美しさに魅せられた伯爵は、じつのところ、彼女を誘惑できるか友人と賭けていました。その後、カミラと出会って心惹かれた彼は、どこかで会ったような印象がぬぐえないでいましたが、彼女は否定して……。二人の美女に惑わされる放蕩伯爵の運命は?
エンジェルは7歳で最愛の母を亡くしたあと、暴力を振るう父から逃れ、里親の家を転々としてきた。大人になった今も“我が家”を知らず、方々を渡り歩いている。先日、雇主から嫌がらせを受けて勤め先を辞めたのを機に、新天地を求めてヒッチハイクをすることに決めた。ある大雨の夜、エンジェルは美しい瞳の男に拾われる。ロイヤルと名乗る彼は、今夜家に泊めてくれるだけでなく、家政婦の仕事を提供してくれるという。あまりに親切な申し出に戸惑いながらも彼女は承諾するが…。