2007年発売
医者を親に持つ僕と羅は、反革命分子の子として山奥で再教育を受けることになった。厳しい労働にもめげず、僕らは仕立屋の美しい娘に恋をした。僕らは禁書のバルザックを手に入れ、その小説世界に夢中になった。親友の羅はバルザックの語る壮大な冒険を、哀しい恋の物語を娘に読み聞かせ、ふたりは親密になっていくが…。文化大革命の嵐が吹き荒れる中国を舞台に、在仏中国人作家がみずからの体験をもとに綴る青春小説。
井の頭公園に湧く水をたどりながら、僕たちは海まで歩くーそれは、永遠の夏休みのはじまりだった。ひととひととがつながりあうミラクル。おだやかな熱に包まれる再生の物語。
深手を負い、記憶を失った青年クリスタを襲った犯人は…?血脈の業がもたらす悲劇の連鎖をアデリエンは断ち切れるのか?ミステリータッチの新しいファンタジー・ノベル。剣と魔法のファンタジーに食傷気味の人に贈る、剣と魔法のファンタジー。
終戦間際、木曾の山間に引っ越して来た九人家族の少年一家。貧しい生活の中、その少年と牛の「うめ子」との触れ合いを描く、「牛と少年」。ある山間の村で言い伝えられているかっぱのカワランビー。その村に住む子どもの友情と、カワランビーの意外な真実を描く、「カワランビー」。戦争末期、小学校三年生の幸吉は、ある田舎町に一家で疎開することに。戦時下の中でも儚く残る人間の優しさと、不条理を描く、「白い坂道」。昭和二十七年の岐阜東濃、高校生の幸吉と真二。二人は野鳥捕りに出かけることになるのだが…。人の不思議なつながりを描く、「鳥屋」。息子の戦死に疑問を持つおばばは、峠の茶屋を営む。明らかになる真実と壮絶な結末を描く、「霧降り峠」。裏金を持ち逃げし、山の中でロビンソン・クルーソーのように生きようとする男。知り合った村の少年「智」も追っ手に狙われる…「つちのこ」。ファンタステックな小説六編収録。
隠岐島に流罪となった後醍醐天皇が旅の途次、美作出雲街道近くのとある小さな村に逗留された。そこには帝も愛でたという壮麗な桜が今に残る。しかし、その桜には村の若い男女の悲しい恋の物語が…。
『解けない絆を』…それは、ボクの祈り。ボク達はいつも普通じゃない生活を求めてしまう。そんな生活は、大変なものである場合が多い。なのにボク達は、こんなにも強く望んでしまう-旅の終わりに訪れる始まりを求めて、ボク達は未来へと歩いてゆく。異世界で紡がれる友情-15歳の感性が光るSF小説。
江戸で始末屋を営む室井十郎太と秀二郎に遅い春が訪れようとしていた。愛するお凛との祝言を控えた十郎太は、忙しい日々を送っていた。だがその矢先、お凛が十郎太に恨みを持つ博徒の一家に攫われてしまう。お凛を人質にとった博徒は、十郎太に香具師の元締と同心の暗殺を要求してきたのだ。卑劣な博徒たちを倒し、お凛を救うため、十郎太は乾坤一擲の策を講じるがー。十郎太とお凛の命運はいかに!?大好評書き下ろし時代長篇。
錺職人の夫が急逝し、義理の子供たちから家を追い出されてしまった後添えの八重。先妻の子・おみちと日本橋堀江町に引っ越して小間物屋を開いた。血のつながりはないが、実の親子のように仲の良い二人。新しい生活は希望に満ちていた。しかし、向かいに岡っ引きでも手を焼く猛女のお熊が住んでいたからたまらない。しかも、この鼻摘まみ者の息子におみちが気のある様子。頭を悩ます八重のもとに、自分たちを追い出した義理の息子が金の無心に現われて…。
心に茨を持った小学五年生・供犠創貴と、“魔法の国”長崎県からやってきた転入生・水倉りすかが繰り広げる危機また危機の魔法大冒険!“最後の一人”から驚愕の誘いを受けた創貴はー!?これぞ「いま、そしてかつて少年と少女だった」きみにむけて放つ、“魔法少女”ものの超最前線、「りすかシリーズ」第三弾。
人類は誕生と同時に「虚構」を生みだし始めた。原始の昔に口承された物語から、現代最先端のヴァーチャル・リアリティまで、それは我々の文明に寄り添うように今も確かに存在する。先史時代の洞窟、六歌仙のサロン、戦国時代の戦場、現代のTVスタジオ…著者もまた時空を超えて「虚構」を追い求めてきた。作家の個体進化をたどることで、人類文明の系統進化を仮想体験する稀有の作品集。
環境破壊と貧窮のうちにゆっくりと滅びつつある近未来の日本。老夫婦が辿りついた理想の“終の棲家”とは(表題作)。現在・過去・未来にわたり、すべての生きとし生けるものに等しくやってくる終末の風景を、時に叙情的に、時に黒い笑いを交えて直木賞作家は描き出す。もしかしたらそれは、明日のあなたのことかもしれないー甘美な破滅と残酷な救済が織りなす、8つのものがたり。
壬申の乱に勝利した天武天皇は、聖徳太子以来の理想である律令国家建設へ向け、さまざまな改革に着手した。その路線を継承し完成させたのが、大化改新の立役者である父・中臣鎌足の志を継いだ古代日本最高の政治家、藤原不比等だった。大宝律令の制定、正史「日本書紀」の編纂、そして万葉歌人がその繁栄をうたいあげた平城京建都まで、日本民族の国家完成を描く。日本書紀の世界を再現した「古代からの伝言」シリーズ、堂々完結。
六本木に新しくお目見えした東京ミッドタウンを舞台に繰り広げられるスパイ情報戦。巧妙な罠に陥り千里眼の能力を奪われ、ズタズタにされた岬美由紀、絶体絶命のピンチ! 新シリーズ書き下ろし第4弾!
娘ざかりのおいとは、江戸入船町の裏店で古着屋をいとなむ父と二人暮らし。隣に住む幼なじみの龍次を恋慕っていたが、上方へ年季奉公に行ってしまった。それから三年、待ちこがれた龍次が、突然帰ってきた。だが、女が一緒で…。町娘の熱い想いを綴る表題作ほか、武家の若妻が官能の目覚めに懊悩する「路地の奥」など全四篇を収録。男を惑わす江戸の女たちを鮮やかに描く傑作時代小説集。
「寛は何を集めているの?」と鈴子が聞いた。「昆虫」と寛は適当に答えた。「何と何を捕ったの?」「まだ。夏休みは始まったばかりだろう。もう宿題をやっているのか?」「夏休みはあっという間に過ぎるのよ」少年にしか見えないこの世界の真実を描く、芥川賞作家の書下ろし長編小説。
主婦の典子は、娘との関係がうまくいかないことで悩んでいた。そんなある日、典子のもとに、中学時代の交換日記が届く。差出人の名前はないが、最後に日記を書いていたのは、メンバー四人の中でリーダー格だったハセジュンこと長谷川淳子だった。ところが、テレビで淳子が他殺体で見つかったとのニュースが。一週間も前に殺された淳子が、日記を送れたはずなどない。これは誰かのたちの悪いいたずらか、それとも…。