2007年発売
信長の夢は、天下一の棟梁父子に託された。天に聳える五重の天主を建てよ!巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊は、無理難題を形にするため、前代未聞の大プロジェクトに挑む。長信の野望と大工の意地、情熱、創意工夫ーすべてのみこんで完成した未會有の建造物の真相に迫る松本清張賞受賞作。
俺は絞殺された。よりによって世界で一番嫌いな男、バイト先のバーのマスター・別所にだ。だが、なぜか俺の魂は昇天せず、よりによって別所の体に飛び込んでしまった。俺は自分を殺した罪で捕まってしまう!?そんな不条理な!俺の死体を呆然と見つめる俺。しかしその頃、俺を追い込むもう一つの殺人が起きていた。その容疑者が別所なのだ。別所のアリバイを証明すれば俺は殺人で捕まってしまうし、結局真犯人を見つける以外には窮地を脱する道はない。果たして俺は俺を救えるのか?「小説推理」新人賞受賞の新鋭が挑む、傑作絶対絶命・無理難題ミステリ。
「週に五日、黒部峡谷を往復しています」宇奈月に住む須笑子という女性からの手紙に興味を抱いた旅行作家・茶屋次郎は現地を訪ねた。そこで、須笑子の恋人が黒部峡谷で行方不明となっていることを聞く。知り合った便利屋の父娘と捜索を始めた矢先、谷底の絶壁で宙づりになった恋人の遺体を発見。自殺か他殺か?登山経験のない彼がなぜそんな場所で?茶屋は調査を開始するが、今度は須笑子が失踪した。彼女の身に何が!?立山黒部を舞台に描く旅情ミステリーの傑作。
二七才、スナック勤務のあたしは、おなかに「俺の国」と称した変な地図を彫っている三才年下のダメ学生・カザマ君と四か月前から同棲している。ある日、あたしは妊娠していることに気付き、なぜか長野のペンションで泊り込みバイトを始めることに。しかし、バイト初日、早くも脱走を図り、深夜、山の中で途方に暮れて道の真ん中で寝転んでしまう。その時、あたしの目に途方もなく美しい、あるものが飛び込んでくるー。表題作を含む三編を収録した、二五万部突破「さくら」著者の清冽なデビュー作。
永久歯が生えてこないという娘おてるを診ることになった桂助。彼女は桂助とともに長崎で学んだ斎藤久善の患者で、その見たては間違いなかった。斎藤のところには患者が多数詰めかけ、〈いしゃ・は・くち〉は閑散としていた。そこに、同心の友田からの依頼で、桂助は傷のない女性の死体を診ることになった。すみれの花の汁が付いていたことを見つけ、その真相に迫っていくのだが……。新たに入れ歯師が仲間に加わることになる、大人気シリーズ第5弾。
犬山家の三姉妹、長女の麻子は結婚七年目。DVをめぐり複雑な夫婦関係にある。次女・治子は、仕事にも恋にも意志を貫く外資系企業のキャリア。余計な幻想を抱かない三女の育子は、友情と肉体が他者との接点。三人三様問題を抱えているものの、ともに育った家での時間と記憶は、彼女たちをのびやかにするー不穏な現実の底に湧きでるすこやかさの泉。
烏賊川市警の失態で持ち逃げされた拳銃が、次々と事件を引き起こす。ホームレス射殺事件、そして名門・十乗寺家の屋敷では、娘・さくらの花婿候補の一人が銃弾に倒れたのだ。花婿候補三人の調査を行っていた《名探偵》鵜飼は、弟子の流平とともに、密室殺人の謎に挑む。 ふんだんのギャグに織り込まれた周到な伏線。「お笑い本格ミステリー」の最高峰!
その年、ペテルブルグの夏は長く暑かった。大学もやめ、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に郷里の家族の期待と犠牲が重くのしかかる。この悲惨な境遇から脱出しようと、彼はある「計画」を決行するが…。世界文学に新しいページをひらいた傑作。
定年を前に人生に倦んでいた男は、自らの前に現れた美しい虎を、神々しいまでに崇高な野生と感じた。閉塞した都市空間において、その生は奇跡であり忘れていた闘いへと彼を誘うのだった。虎がやがて大きな飛翔を見せるとき、彼は人生最大の決断を迫られた。知的ダイナミズムに富んだ、都市寓話の決定版。
佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて……。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。 切なさの分だけ家族はたしかにつながっていく。 佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて……。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。 吉川英治文学新人賞受賞作。
かつて外資系証券会社の腕利きディーラーだった孝男は、元同僚だった冴子と十年ぶりに偶然再会した。遠い日のニューヨークでかわされた、いまだ実現していない約束。コインの裏表に託したふたりだけの運命が再び動き出した時、9・11WTCへのテロが…。著者が新境地に挑んだ、せつない大人の恋の物語。
モスクワの上流訓練学校で破壊工作技術を叩き込まれた九鬼鴻三郎は、数年ぶりに日本の土を踏んだ。秘密工作員となった彼に与えられた任務は、全身が凶器と化したアメリカ人二人の来日目的を探ることから始まる。接触の一瞬後には、生死を分かつ闘いの分水嶺が待っていた。
生きるのが辛くなった人々をやさしく迎えてくれる木戸番小屋があったーー 江戸の片すみ・澪通りの木戸番小屋に住む笑兵衛(しょうべえ)とお捨(すて)。心やさしい夫婦のもとを、痛みをかかえた人たちが次々と訪れる。借金のかたに嫁いだ女、命を救ってくれた若者を死なせてしまった老婆、捨てた娘を取り戻そうとする男……。彼らの心に温かいものが戻ってくる物語全8作。 第39回吉川英治文学賞受賞作 第一話 女のしごと 第二話 初恋 第三話 こぼれた水 第四話 いのち 第五話 夜の明けるまで 第六話 絆 第七話 奈落の底 第八話 ぐず
ついにグインは最強と謳われる闘技士ガンダルと対面した。紅鶴城の大広間に現われた伝説の戦士は、全身を鎧で固めた巨大な要塞のような男であった。ガンダルの執拗な挑発に辟易して広間を抜け出したグインは、城の一隅で、若くして死んだタイスの公子の幽霊と出会い、彼に導かれるように、地下水路への入口を発見する。そこでグインが見たものは、地下に広がる広大無辺な空間であり、そこに君臨するマーロールの姿であった。
部下の自殺をきっかけに自身もうつ病に罹り、会社を辞め妻子とも別れ、何もかも壊して故郷・博多に戻った精一郎。九年前にがんを発症し、死の恐怖から逃れようとするかのように、結婚と離婚をくりかえす敦。小学校以来の親友であるふたりの男は、このやるせない人生を受け入れられるのかー。
一族を惨殺され、秘伝書「辟邪剣譜」を奪われた林平之は、復讐を誓い武林の名門・華山派に弟子入りする。一方、華山派の一番弟子・令狐冲は、謹慎中に幻の楽譜「笑傲江湖」を手に入れるが…。二つの秘譜の謎をめぐる魔界魔道の大伝奇ロマン。