2004年発売
酒場で出会い深い仲となった「危険なまでに魅惑的」な女モリーの依頼を受けた酔いどれ探偵ミロ・ミロドラゴヴィッチ。レイプされ、無惨に殺された妹の敵討ちを手伝って欲しいというのだ。女の言葉を信じ、容疑者が現われるはずの公園へと向かったミロだったが…テキサスで酒場を経営し退屈な日々を送っていたミロを突如襲う無数の銃弾。酔いどれ探偵に安息の日々は訪れないのか?ついに沈黙を破った巨匠が放つ、叙情派ハードボイルドの新傑作。CWA(英国推理作家協会)賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
復讐、虐待、束縛、背徳、疑心暗鬼…暗黒の深淵にたたずみ、卑しさ故に純美な五人のファム・ファタルと、翻弄され堕ちていく愚かな男たち…。狂気と愛憎の狭間で揺れ動く壮絶な人間模様を抉り出した「蝋燭遊戯」「老人と膿」「You裡」「代償」「夢の報酬」の五篇を収録。クライム・フィクションの鬼才が放つ現代悪女列伝。
1906年、サンフランシスコは黒幕の支配下で市政・警察は腐敗していた。市を浄化すべく警察副本部長バイロン・ファロンが闘いを開始するが、彼は死亡してしまう。バイロンの息子の新人警官ハンターは父が何者かに殺害されたものと考え、ブラザーフッドと呼ばれる彼の親族とともに、指紋、盗聴、録音といった最新の技術を用いて捜査し、悪辣な一派を追いつめていく。だがその時、未曾有の大地震が直撃、建物は倒壊し、市は炎に包まれた。混乱と惨状の中で繰り広げられる、正義の闘いの行方は?市の浄化に命を賭けた男たちの壮大なドラマ。ワーナー・ブラザースが1億3000万ドルの製作費をかけて映画化する話題作。
おれの名前は三神外道、通称げど、酒と小説をこよなく愛する、しがない広告屋だ。だがおれには、眠ることで小説世界に侵入できる「小説探偵」としての顔がある。日々訪れる依頼人は、未解決の伏線に消えた息子を探す人妻、耽美小説の超美形キャラに、自作内ギャンブルに溺れた三文作家-現実と小説世界をまたぐさまざまな難事件を解決していくおれだったが、やがて、失われた記憶にまつわる巨大な陰謀が、悪意に満ちた全貌を現わしつつあった…。ミステリ、ホラー、時代小説、ファンタジイほか、あらゆるジャンル小説に過剰な愛をそそぎこんだ、7篇収録の連作集。
「俺、クローンだよ」「キョウイチも?」「も?」「うん。わたしもクローン」…。医療ナノマシン機器メーカーに勤務するキョウイチは、仕事のために訪れたカウンセリング施設で、研修生のユンとその恋人マークに出会った。キョウイチは、天衣無縫なユンに次第に惹かれていく自分に気づく。そしてこの懊悩は、お互い共に、“オリジナル”ではないことを知り頂点を迎える。やがてユンは、臨床心理エンジニアとして赴任するマークと一緒に、火星へと旅だった。その半年後、火星は突如として緑の星に変貌し、独立運動を背景とする反乱が勃発する。キョウイチは連絡の途絶えたユンたちを探すため、軍に同行し、火星へと赴く。そこは、思念が現実化する、異様な世界であった…。第5回日本SF新人賞受賞作。
航空自衛隊のエースパイロットが引き起こした未曽有の過失事故、それによって国家の威信に重大な波紋が生じる。麻薬密輸船の攻防に頭を悩ます防衛庁は、何故かパイロットの精神鑑定を要求する巨大企業資本に翻弄され、途轍もない陰謀に巻きこまれていく…。女性自衛官初の戦闘機パイロット、岬美由紀、二十八歳。その愛と青春、挫折、そして生涯を賭けて挑む“謎”と“戦争”。サイコスリラーの妙味を加えた新感覚冒険ミステリー長編、最新傑作。
原因不明の人体発火現象が世界各地で多発。このニュースに英王室のシンシア妃は過剰反応を示し、バッキンガム宮殿にひきこもってしまう。王妃の状態を探るため、臨床心理士・嵯峨敏也は宮殿に招かれるが、彼は王妃とともに人体発火を目のあたりにする。事態の深刻さに気づいた嵯峨は真相究明のため、旧知の元航空自衛隊パイロットの岬美由紀に協力を求める。恐怖の事件の陰に、巨大な世界統治の謀略が横たわっていた。「千里眼」岬美由紀が、ついに宿敵メフィスト・コンサルティングとの最終対決に臨む。シリーズの謎もすべて解き明かされる待望の特別記念作品。
それは百年ほど前の、岡山でのこと。腐臭たちこめる茅屋に、行き場のない者たちが吹き溜まり、夜昼なくまぐわい続ける、禍々しい世界。男と女はもちろん、人とけだものから、死者と生者まで、相手かまわぬ嬲り合いの果て、幻想が現実を侵食し、すべては地獄へなだれこむー。血の巫女・岩井志麻子が、呪力を尽くして甦らせた、蕩けるほど淫靡で、痺れるほど恐ろしい、岡山土俗絵巻。
いつも部屋の窓格子のむこうを通る青年に恋しながら、他の男に身をゆだねてみごもり投身する女。男たちに暴行を受けた心の傷を癒せぬまま、自分を慕う弟に体を許してしまう姉。新しい女がよりそう恋人の前で舞いながら、簪で自分の目を突き刺す女…。女たちの胸の奥底深くひそむ闇、業と不幸を四季に咲く花々の悲しい運命に託して描いた十四の物語。なかにし礼、幻の処女小説。
17歳の鴇谷春生は、自らの名に「鴇」の文字があることからトキへのシンパシーを感じている。俺の人生に大逆転劇を起こす!-ネットで武装し、暗い部屋を飛び出して、国の特別天然記念物トキをめぐる革命計画のシナリオを手に、春生は佐渡トキ保護センターを目指した。日本という「国家」の抱える矛盾をあぶりだし、研ぎ澄まされた知的企みと白熱する物語のスリルに充ちた画期的長篇。
恋人の髪の匂いから、隠された一面を知る男。一夜の出会いから、過去の真実に気付く少年。軽いゲームのつもりが、危険な賭けに巻き込まれる男。香水の残り香に、恋の行方を悟る女…。飲み物、煙草、装身具、香水など、誰にでもあるお気に入りの一品が、思いがけず日常を反転させるスリリングな瞬間を、ミステリの名手八人が鮮やかに描く。短編小説の醍醐味溢れる、傑作アンソロジー。
地球を離れ四百時間、惑星「ズヴゥフル5」の大学で出会った少女「耀奈」。その胸には真紅のネックレスが輝いていた…。付き合い始めた地球人の“ぼく”の周りで起きる異変、耀奈と別れなければ不幸を背負うという謎の警告。そして、彼女の身体に秘められた、母国を救うためのある使命とはー。少女との切ない邂逅を描いた表題作他、異空間を舞台にした「泣ける」ファンタジー四編。
英国の秘密情報部MRUに属するジャックに、奇妙な任務が下された。1970年代初頭、北アイルランドにパラシュート降下した工作員の死体を探し出し、その所持品を持ち帰れというのだ。ただし、目的はまったく明かされない。疑念を抱きながら、自前のトロール船でアイルランドへの航海に出たジャックを、何者かが銃撃してくる!冒険小説復権の鍵を握る、英国推理作家協会賞受賞作。
ツェッペリン型飛行船が、米国レークハースト上空で突然、爆発炎上した。これは単なる事故なのか、それとも何者かによる破壊工作か。この事故で死亡したとされた新聞記者のルントは、実は生きていた。彼は事故の真相を明らかにするため、あるナチス党員を追った。伝説の“ヒンデンブルク”から生還した昇降舵手の息子が、5年の歳月をかけて、綿密な取材を元に構築した驚異の小説。
“ヒンデンブルク”の大惨事をめぐって飛び交う様々な憶測。ルントが白羽の矢を立てたのは、昇降舵を握っていたボイセンだった。ルントは彼がドイツの北にあるフリースラント諸島に住んでいることを突き止める。しかし、そこの島民は驚くほど保守的で、ルントの調査は思うように進まなかった。挙句の果てにボイセンと接触したルントだったが、彼が耳にしたのは驚愕の事実だった。
1918年、「オデッサの星」は革命直後のロシアから出航した。極秘の荷物と乗客を載せてー。一方、現代の合衆国では、メイン州を原因不明の津波が襲う。さらにエーゲ海では、米海軍の小型潜水艦が何者かに乗っ取られ、旧ソ連の潜水艦基地へと運ばれた。すべてをつなぐ線上に浮かんだのは、帝政復活を目論む富豪ラゾフ。オースチンはかつての仇敵ペトロフと組んで、真相を探り始める。
ラゾフの狙いは、世界の海底に眠るメタン・ハイドレートと判明した。この未来の代替燃料を独占し、世界を一挙に支配下に置こうという野望。合衆国東海岸におけるメタン・ハイドレートの鉱床を突き止めたオースチンらは、その位置関係に慄然とする。かくしてNUMAの精鋭はペトロフの部隊と協力し、ラゾフの本拠へと向かった…。好評シリーズ第3弾は息詰まる結末になだれこむ。