1996年9月発売
天保十年。尾張藩江戸下屋敷で催された正月の祝いで余興を演じた角兵衛獅子、みつと文吉。二人は屋敷の庭に、一つの“宿場町”が造られているのを見た。十年後、質屋に奉公する文吉は、主人の供で行った小田原宿で、たかと名を改めたみつに再会する。二人はそこで、江戸で見た“宿場町”とそっくりな“虎屋”を発見する。たかの正体は“悪女”。箱根山中に埋められているという百万両の黄金を狙っていて、その鍵が“虎屋”にあるという…。
みずから望んで“ホームレスの猫”になったものの、この暮らしは容易でない。やはり、プライドを失わずに人間と共生する道を探そうか。理想の飼い主を求めて…。実話をもとにした、ユーモラスでほろ苦いお話。
愛なんて、くつ下みたいなものだわ。ずっとペアだと思っていたのに、ある日突然、片っぽだけになっちゃうんだから…。ショッピング、スポーツ・クラブ、テレフォン・セックス、ニュー・エイジ、不倫、ロックン・ロール、バイ・セクシャル、ヴェジタリアン…。恋にお悩みの人はもちろん、お悩みでない人にも贈る、最高に元気が出る90年代の恋愛小説。
女薬剤師ヘラはハイデルベルクの産婦人科病院に入院中。病院の夜は長く、退屈だ。二人部屋の隣のベッドにいるのは、初老のローゼマリー・ヒルテ。暇つぶしに、ヘラは夜ごと彼女に自分の過去の秘密を打ち明けはじめる。相手の病状は芳しくなさそうだし、どうせ先は長くないはず。だが、ローゼマリーは恐ろしい聞き手だった…。
シリコンバレーの大企業でロボット開発に携わるジャージーは、ひょんなことからサイバースペースで一匹の蟻を目撃した。どうやら会社が研究中の人工生命プログラムが、彼のマシンに迷いこんだらしい。だが自力で進化し増殖するこの蟻が、試作品のロボットを乗っ取って世界を覆う光ファイバー網に侵入してしまったために、思いもよらぬ騒動が…!高度な機械知性の誕生をポップな感覚で描き出す近未来コンピュータSF。
エディンバラの新聞社に勤務するはみだし者の記者キャメロンは、特ダネを告げる謎の男の電話に振りまわされていた。折りしも、悪辣な権力者たちが次々と惨殺される事件が発生。被害者は、キャメロンが記事で悪行を非難した人物ばかりだった。彼は殺人の容疑で逮捕され、やがて驚くべき真相が…全英ベストセラー第一位を記録した噂の作家の鮮烈なミステリ。
1962年10月、キューバをめぐる米ソ反応兵器の応酬によって、これまでの国際体制は崩壊した。日本政府は、多角的な視点で新たな世界における長期的な安全保障策を研究する会合を組織し、日常生活を維持しつつ大戦後を生き延びる方策として、最終的に目指すべき場所は地球の外にしかないとの結論を得る。北崎重工から宇宙開発事業団へと転出した黒木正一は、人生最後の熱情をかけて、南太平洋上に建設中の宇宙港・JSP-03の完成に邁進していた。しかし闇部では旧合衆国テロ集団の恐るべき策謀が渦巻いていた。
平凡すぎるほど平凡なサラリーマン、デイヴィッド・エリオット。ある日、出勤した彼を出迎えたのは、上司の拳銃だった。あやうく危機を脱した彼に、今度はプロの殺し屋が襲いかかる。助けを求めてたずねた親友も彼の命を狙い、最愛の妻も子も敵にまわる。一体なぜ?何が起こったのか?顔のない敵を相手に超高層オフィスビルのなかで死闘が始まる。かつてベトナムで戦った兵士の本能がデイヴィッドに甦り、摩天楼は地獄の戦場と化してゆく。
筑波の山から程近い豊田の里-平小次郎将門の生地である。筑波明神の祭礼の夜契った女(小督)に対する愛情が将門の胸を離れない。将門の父平良将急死の後、一門の同族は所領の横領を企てている。小督の父源護に申し込んだ縁談も、しかるべき官位なきゆえと断られ、伯父等の甘言に乗せられた将門は、官途につくべく従兄貞盛と共に京に向かう。京で、将門が辿る運命は苛酷、無慈悲なものであった。貴子姫との恋も貞盛に奪われ、官位への道も開けない。寂寞と望郷の思いが将門の胸にみちる。空しく坂東へ帰った将門を待つものは伯父達の陥穽である。伯父良兼の妻詮子に図られて、源家へ赴く途上、将門は敵の大軍に挾撃される。将門は、奪然、寡兵をもって敵陣に殺到する。戦機とみに熟し、豪快壮烈な血戦は関東の野に拡がってゆく。