出版社 : 白水社
ホールデン・コールフィールドが大人になったら、こんなふうに語るかもしれない。ブロードウェイの売れない役者サンディ君が、ニューヨークの街をさまよいながら語る、とびきりファニーで、ちょっぴりさびしいラヴ・ストーリー。「ライ麦畑でつかまえて」のアダルト版登場。
『フロベールの鸚鵡』は、面白おかしい冗談と真摯な叙述を驚くほど巧みに交錯・結合させた小説である。ここには、文学的考証があり、文学評論があり、文学的実験の展開がある。政治、経済、テクノロジー、いずれ分野においても、あらゆる問題に手ぎわのいい即答が要求される現代にあって、この世には真の答えなど存在しない問題もあるのだということを、ジュリアン・バーンズは敢然と、しかも典雅なユーモアをもって我々に想起させる。
1920年の夏のある日、英国ヨークシャの田舎の小駅に一人の若者が降り立つ。村の教会の壁画修復にやってきた彼、バーキンは、第一次大戦で心に深い傷を負っていた。静かな村でも主人公のひと夏の経験を柔らかな筆致で描き心にしみる名作。ガーディアン賞受賞作品。
暴力をふるう夫を、レズビアンの恋人と謀って毒殺した実際の事件を基に、夫との出会いから裁判に至るまでの、刻一刻の女の心理を鮮やかに描き出す。『ベルリン・アレクサンダー広場』で大都市小説の金字塔を打ち建てた奇才デープリーン異色の実験作。
愚直な夫と周囲の俗物への嫌悪から、ラ・レヘンタ(地裁所長夫人)は新しい生活を模索するが、信仰と愛の誘惑の間に揺れ、そして意外な結末を迎える。軽妙な語り口と鋭い風刺、批判精神でさまざまな登場人物を生き生きと描き、時代や国境を越えて、人間存在そのものの弱さと愚かさを鮮やかに提示する。
情熱の都市セビリアを舞台に、希代の妖婦コンチャに魅せられ、炎を精練しつくした冷たい情熱にひきこまれてしまった一人の男が繰り広げる、苦悩と陶酔の華麗な絵巻。世紀末耽美頽唐派の代表的作品。
絶界の孤島に君臨する女城主モナの城にたどり着いた主人公が、エロスの秘儀を目指して昇りつめる過程を、卓越した芸術的手法で著した異色作。衝撃的な内容で騒然たる話題をさらった、倒立のビルドゥングス・ロマン。
家族というものには主人公がいない。イタリア統一の波乱の時代に生きた文豪マンゾーニの家族模様を、膨大な書簡を通して事実が自ら語るにまかせて再構成した、ギンズブルグの長編力作。
彼らは自らを〈人間〉と呼んでいた!南米大陸の果て、パタゴニアの海に舟を浮かべる狩漁の民アラカルフ。かつてマゼランは、ダーウィンは、宣教師たちは彼らに何をしたのか?西欧文明が誤解し、虐げ、滅亡に追いこんだ1民族に寄せる鎮魂の書。