出版社 : 白水社
1906年の夏、17歳の美しい少女マリエットがニューヨーク州の修道院に入ってくる。厳しい禁欲生活が始まるが、彼女は神への献身ぶりで際立つ存在となる。そしてある日彼女の体に聖痕が現われる。院内は大騒ぎとなり、賛嘆と嫉妬と疑惑が渦を巻く。知的な面白さと官能性を備えた感動的な小説。
スチュアート・ダイベック、チャールズ・バクスターら、第一線のアメリカ作家二十三人が〈道のまん中のウェディングケーキ〉という一つのテーマをめぐって、それぞれの物語を紡ぎだす-。しなやかな想像力と奔放なユーモアを駆使して創りだされた、遊び心に満ちあふれた物語の数々。
青年アニセは、ブルトン、ピカソ、チャップリン、ランボー、コクトーなどをモデルとした人物に出会い、芸術、愛、人生に目覚めていく-。パリ・ダダの若き詩人が、〈魂〉の彷徨と成長を描く処女小説。
別れた女房の家の裏庭に穴を掘る男、毎晩赤ん坊を落とす夢を見る女、教会のパンケーキ食べ放題パーティで心ならずもノッてしまう父親、シカゴの高架鉄道の車内で珍妙な芸術を演じてしまう車掌…。オフ・ビートな笑いにのせて贈るおかしなおかしな短編の数々。
ブロードウェイの売れない役者サンディ君、かつての恋人が自殺したと聞いて大ショック。これはぜひとも真相を突きとめねば。『ライ麦畑でつかまえて』を思わせる軽快な文体とユーモアで語られる、とびきりファニーで、ちょっぴり切ないラヴ・ストーリー。
偉大なるフロベールの故郷ルーアンを訪ねた「僕」は、博物館で、彼が『純な心』を執筆する際に常に手元に置いていた鸚鵡の剥製を見つける。だがのちに訪れたフロベール邸のはなれには、もう一羽の鸚鵡が鎮座していた。いったい本物はどちら?フロベールという作家にさまざまな角度から覗き眼鏡をあて、文学的にして愉快な小説。
保守的な空気の中で、上品な生活を送るイギリス中流階級の人間たち、陽光眩しいイタリアの地で、生きる喜びを満喫する男たち-。二つの異なった価値観のぶつかりあいから生じる悲喜劇を、ユーモア溢れる筆致で描く。
全編これ二人の男女の電話の会話からなるおかしなおかしな「電話小説」。しかもこの電話は成人向けのいわゆる会員制セックス・テレフォン。二人は想像力の限りを尽くして自分たちが何に一番興奮するかを語り合う。昨年全米でベストセラーとなった本書のテーマはいわば、想像の世界の「究極のH」。
チターを弾く大みみず、仔牛の肺臓製のレールの上をすべる奴隷の彫像、人とり遊びをする猫…。熱帯アフリカを舞台に繰広げられる奇想の数々。これは真の神話であるとともに、大胆で徹底した言語実験の輝かしい成果でもある。ブルトンが現代における最も偉大な催眠術師と呼んだルーセルの代表作。
ローマ帝国を未曽有の繁栄に導いた哲人皇帝の崇高なデカダンス。真の享楽主義として濶達に生きた皇帝の瞑想的な魂の遍歴。美青年アンティノウスへの溺愛。皇帝みずから語る歴史論・文明論であり、詩であり、人生論である。澄んだ意識のフィルターを通したひとつの人生と帝国の歴史。
E・M・フォースターが死んだ日に霊感を受けた女性作家、女家主の事故死した子供の幽霊を見てしまった男、母が亡くなって後ひそひそと先祖の話し声が聞こえる隣部屋。大作『ポゼッション』でブッカー賞を受けた英国きっての知性派女流の短篇には、いかにも英国的な、繊細で不気味な雰囲気が滞う。
鏡の中に現れる美しい青年に恋をし、やがて悲しいフィナーレをむかえるエウラリアをはじめ、何ものかに魅せられ、囚われの身となり、遥かな迷宮に迷い込んだ者たち。幻や想像の世界に現実以上のものを見てしまった人間の悲劇が、イタリアの若き女性作家の手からダマスク織りのように紡ぎだされる。
ロンドンから飛行機に乗って一路ハワイへ、格安チケットでお見舞いに。トラベルワイズ・ツアーズの一行と英国人父子がくりひろげる、どこまでも愉快な物語。はたしてホノルルは、この世のパラダイスなのか?コミック・ノヴェルの第一人者デイヴィッド・ロッジが贈る、待望の最新長編小説。
常に小説の新境地を開くジュリアン・バーンズの最新作。今回は登場人物がすべて読者に直接語りかけるという斬新なスタイルがとられる。高校時代からの親友で何から何まで対照的な性格の2人の男が、ひとりの女性をめぐって恋の鞘当て。バーンズ独特の皮肉な視点で描く愛のゆくえ。フェミナ賞受賞。
大作『ロンドン・フィールズ』が英米でベストセラーになり一躍注目された大型新鋭エイミスが描く現代版『王子と乞食』。金持ちのダンディと下層階級出身の若者の立場が一人の女性の出現で逆転していく-鋭いウィットと生き生きした語り口にのせて展開する、現代イギリスの性と階級をめぐる寓話。
境界線上のことば、溶解する意識-。30年代NY伝説のギャング、ダッチ・シュルツことアーサー・フレゲンハイマーの最期のことばを元に書き下ろしたバロウズの「映画シナリオ形式の小説」。
『フロベールの鸚鵡』『10・1/2章で書かれた世界の歴史』と、知的で愉快な小説のはなれわざを見せたJ・Bが「普通の」小説に挑んだ。一人の女の一生を、少女時代から結婚生活への幻滅、世界の七不思議を求めての旅と、2021年までたどっていく。もちろんJ・Bならではの皮肉な人生観察も効いている。