ジャンル : 外国の小説
私の愛した人でないのなら、 あなたはいったい、誰なの? 3歳半の息子を独りで育てるジュネヴラは、ロンドンの超一流ホテルで 見覚えのある長身の後ろ姿に目を奪われ、思わず叫んだ。「ルーク!」 4年前に燃えるような恋に落ち、幸せの絶頂で姿を消した人。 必ず戻ってくると信じて待ち続けた、私の愛しい、息子の父親……。 ゆっくり振り向いたその男性の顔にはしかし、むごたらしい傷跡が。 「人違いをなさっているようですね、お嬢さん」 アメリカで出版業を営むクリスチャン・ネモと名乗った彼こそ、 彼女をこのホテルに呼び出した仕事の取引相手だった。 けれども、ジュネヴラには彼がルークとしか思えなかった。 ルークの背中には、ほくろがあったはず。それを確かめられたら……。 大作家エマ・ダーシーが1980年代に描いた、劇的なシークレットベビー・ロマンスをお贈りします。愛しのルークの背中にはほくろがあったはずだと思い出したジュネヴラ。やがてクリスチャン・ネモの背中に触れるチャンスが訪れますが、驚きの結果が……。
シンデレラが恋した大富豪。 近づくほど、彼の心は遠くなり……。 ロンドン郊外にある大きな屋敷で庭の手入れをしているダニー。 主は家に高い塀を巡らせ、護衛と番犬に囲まれて暮らしており、 敷地内のコテージに住みこむダニーもいまだ姿を見たことがない。 ある夜、ダニーが芝刈り中に背後から突然、長身の男性が現れた。 荒削りで野性的な美しい顔ーーなんと、彼こそが屋敷の主ピアスだった! 傲慢そうで冷たいブルー・グレイの瞳をした彼は、 39歳にして大企業を率いる大富豪だが、どこか陰があり謎めいている。 そんな彼に魅了され、気づけばダニーは純潔を捧げていた。 ところが、ピアスが彼女に向けた言葉は、あまりにも冷酷なものだった。 「こんなふうに君と何度会っても、君とは結婚しないよ」 キャロル・モーティマーが1985年に書いた珠玉のシンデレラ・ストーリーをお届けします。「僕を愛してはいけないよ」そう忠告するヒーローに向かって、「もう愛してしまったわ」と堂々宣言する若きヒロインがとても清々しく、格好よくさえ感じられます!
万事休す! ナイフを突きつけられ、 公爵は言った。「彼女は僕の妻だ」 セアラの父が破産の末に亡くなり、家は没落した。 その後は貴婦人の付き添い人としてどうにか生計を立てていたが、 夫人が亡くなり、解雇されてしまう。 侍女と二人、糊口をしのぐため、セアラは職を求めて船に乗り込んだ。 そこで出会ったのは、息をのむほどハンサムな男性、スミス氏。 彼に初めて心ときめかせたのも束の間、旅は早々に暗転するーー。 船長と水夫たちが乗客を襲い、海へ突き落とすという凶行に及んだのだ! 船長のピストルがセアラに狙いを定めたとき、 スミス氏の力強い声が響いた。「私はシバートン公爵。彼女は私の妻だ」 自分たち夫婦の身代金を払うと申し出て、セアラたちは命をつなぐ。 その夜から公爵と二人、身代金が届くまでの間、同じ船室に監禁されて! Amazonレビューで著者の最高傑作と評される話題作! 『花嫁は絶体絶命』などスリリングな名作で知られる実力派ルイーズ・アレンが描くドキドキの作品です。思わぬ窮地の中、公爵に抱き寄せられ、「公爵夫人のふりを」と囁かれた瞬間、不思議と心が落ち着いてーー?
よるべなき窮地の乙女を守るのは、 優しいおじ? それとも美貌の伯爵? 「初めて会ったときから、あなたが欲しかった」 18歳で天涯孤独となったカトリオーナに救いの手を差し伸べたのは、 放蕩者と悪名高い次期伯爵ニール・シンクレア。 彼の瀟洒な邸宅に住み、美しいドレスと宝石で身を飾ってよいという。 つまり愛人契約だ。黒い瞳のハンサムな彼の官能的なほほえみに、 カトリオーナの心は乱れたものの、結婚前の無垢な乙女が 愛人契約にのるなどとんでもない醜聞だ。一抹の不安を胸に カトリオーナは会ったこともないおじと名乗る人物の屋敷に身を寄せる。 だが不安は的中したーー彼女が一族の家系図を見つけたことから、 予想もしなかった事件の幕が開いてしまう。 HQの大人気作家ニコラ・コーニックが、スコットランドの名作家スティーヴンソンの『誘拐』を題材に描いたドラマティックな作品です。ウィットに富んだ会話に魅力的な悪役登場、誰が味方で誰が敵かもわからない展開ーーページをめくる手が止まらない一冊!
傲慢富豪の略奪愛が、 私の心を酔わせる。でも……。 結婚を間近に控えたレイチェルは、アレクシスに唇を奪われた。 彼はオフィスにも押しかけてくる強引で傲慢な石油王。 大嫌いな彼のキスに酔ってしまうなんて、自分が許せない。 そんなときレイチェルの父に莫大な借金があることが判明し、 彼女は婚約者に助けを求めたがむげに断られ、婚約も破綻した。 ああ、どうしたらいいの? 絶望するレイチェルの前に 再びアレクシスが現れ、なんと、彼が借金を肩代わりしたと告げた。 大金と引き替えに、レイチェルを買ったつもりでいるらしい。 身勝手な救済に腹を立てつつも、彼の大胆な誘惑につい心が揺れる。 彼の熱い求愛は彼女を“道具”として使うための手段とも知らず……。 巨匠ヴァイオレット・ウィンズピア、アン・ハンプソンと並んで、主人公の感情を深く豊かに表現する現代ロマンスのスタイルを築いた作家アン・メイザー。他のベストセラー作家たちからも憧れられる存在であるメイザーの1980年代の名作をご堪能ください。
生を手離さずにいることは、こんなにも難しいーー。 失業、借金、いじめ、病気……駅で自ら死を選ぶ人々と、その防止に奔走する地下鉄職員・葉育安。 現代台湾文学を牽引する作家・何致和が、都会の声なき声を拾い再生を描く台湾発の話題書。 台湾文学賞、誠品読書職人賞など受賞多数! ・ ・ ・ 葉育安(ヨウ・イクアン)、45歳、思春期の娘と認知症の老母との3人暮らし。 優柔不断、すべてに受け身で生きる彼が 地下鉄の自殺防止プロジェクト長として向き合うことになったのは、 地下鉄のホームで今まさに自死へ向かう人たち。 ・ 会社のお金を横領したサラリーマン、SNSで失恋を晒された中学生、持病に悩む老人、周囲から羨まれながらも生きる気力を失った女性……自殺防止プロジェクトリーダーを任せられた育安は、なんとか成果を出そうと試行錯誤を重ねるも、自らの足でホームから飛び降りる人たちを止めることはできない。 それでも群集のなかに身を置いて、日々を生きていく寄るべき人々の体温が、見知らぬ他人をいつしか温めていくーー出口のない問題を抱え生きる全ての人へ、ささやかでも、明日へ向かう力の一端になる物語。 ・ 現代社会のひずみや抑圧を描いたソン・ウォンピョン『アーモンド』、ハン・ガン『回復する人間』らにも通じるストーリーテラーの初邦訳。 ・ 《解説:松本俊彦(精神科医・作家)》 読了後、語られなかったこと、描かれなかった余白に読者は深く心を揺さぶられ、何かを考え始める。こうした、読後から始まる独特の余韻、静かな残響音は、本作品における最大の魅力といってよいだろう。 ・ 《台湾文学金典賞授賞/選評 凌性傑(詩人・作家)》 何致和は中年男性の心境をきめ細やかに描き出し、公共交通機関と時代の鼓動を結び付け、地下鉄によって交わる人生を通じ、様々な流動を表現する。その流動感に、多声的な語り、語りの視点の交代が加わることで、重層的で、極めて読みごたえのある作品に仕上がっている。 地下鉄という現代の交通機関は、個々の実存の不安を乗せる一方で、出発と帰還を支えている。本書で最も引き付けられるのは、冷静に傍観しているようでいて、「理解しようとする」やさしさを潜めた語りである。
全世界100万部突破 30カ国翻訳 TikTokで話題の超問題作 人肉食が合法化した社会を冷徹に描き切った、究極のディストピア食人ホラーSF! ************ ◆クラリン文学賞(2017)受賞 ◆レディース・オブ・ホラーフィクション賞長編部門最優秀賞(2020)受賞 ◆ワシントン・ポスト紙ベストSF(2020)選出 ◆フィナンシャル・タイムズ ブックオブザイヤーSF部門(2020)選出 ************ 動物感染症のパンデミックにより畜肉が食べられなくなり、かつてない食糧危機が人類を襲った近未来の世界。たんぱく源を求め続けた人々の間で、移民・貧民を狙った人肉の闇取引が横行。食肉需要を満たそうとする企業の圧力に政府が屈し、ヒトの飼育・繁殖・屠畜・加工が合法化された。この出来事は〈移行〉と呼ばれ、家畜化されたヒトは〈頭〉、それを加工して作られた人肉は〈特級肉〉と言い換えられた。「クレイグ食肉処理工場」の重役マルコスは、〈頭〉を解体し、〈特級肉〉として出荷する日々を送っていた。ある時、一頭の家庭飼育用の最高級の〈頭〉のメスをなりゆきで譲り受けるが、非合法とされる「人間扱い」をはじめてしまい……。 世界中で話題沸騰〈スパニッシュ・ホラー文芸〉超問題作!
「俺はファントマだよ、陛下!」 フランス史上最大の怪人。 元祖黒マスクの怪人──バットマンも、怪人二十面相も、源流はファントマにあり! ジューヴ警部とファントマの因縁の対決。 愛人殺し容疑の王の身代わりに幽閉された、新聞記者ファンドールの危機一髪! 久生十蘭が換骨奪胎し『魔都』を生んだ怪作。 ダークヒーロー犯罪小説。 コンコルド広場の噴水のニンフ像が夜な夜な歌をうたう──大晦日、新聞記者ファンドールはお忍びでパリにやってきたヘッセ=ヴァイマル王国の王と意気投合。ところが王の愛妾死亡事件に巻き込まれ、ひょんなことから王の身代わりを演じるはめに。相棒の敏腕警部ジューヴはファンドールを救いだすべく奔走! これもファントマ? あれもファントマ! 怪人の狙いはいかに? パリを縦横無尽に追跡する、めくるめく死闘のスペクタクル。 元祖黒マスクの怪人ファントマ。今なおフランスで絶大なる人気を誇り、映画にもなり絵にも描かれ、おびただしいフォロワーを生んだ悪のアイコンは、コクトーに、マグリットに、ブルトンに、横尾忠則に愛された。犯罪大活劇のファントマ・シリーズ全32巻より、もっともファントマらしいと謳われるうちの一冊を本邦初訳。 ジゴマ、シェリ=ビビ、そしてこのファントマで、ついに完結を迎える〈ベル・エポック怪人叢書〉の第3回配本。 【目次】 第1章 やんごとなき酔っぱらい 第2章 レモンおばさんの間借人 第3章 モンソー通りの惨劇 第4章 誰と勘違いしているのか 第5章 〈歌う噴水〉の前で 第6章 捜査開始 第7章 王の謁見 第8章 マリー・パスカル 第9章 食卓には三人…… 第10章 ヴルフェンミーメングラシュク 第11章 百二十七駅 第12章 めくるめく変装劇 第13章 ヘッセ=ヴァイマル王国 第14章 ヘードヴィゲ王妃の謁見 第15章 謎の牢獄 第16章 ダイヤ泥棒 第17章 手がかりを追って 第18章 眠る男 第19章 自由の身に 第20章 フレデリック=クリスティアン二世 第21章 恐るべき確信 第22章 われら三人のうちに……ファントマあり! 第23章 公式見解 第24章 ジューヴの噓 第25章 生きねば 第26章 ベストの告発 第27章 北南線大爆発 第28章 無罪か、有罪か 第29章 危険な発見 第30章 尾 行 第31章 通 夜 第32章 ファントマの逮捕…… 訳者解説「コンコルド広場の噴水、あるいはファントマの肖像」
いまや誰もが知っている童話「シンデレラ」。日本においては明治期にヨーロッパからもたらされたと思われているが、それだけではない。日本のシンデレラ受容史からさかのぼり、アジア地域、アフリカへと物語の起源に迫る。
出版社
幻戯書房ジャンル
戦場、野戦病院、兵舎、総司令部などにおける「現実」を直視し、戦時下の軍人や女たちの生を鮮明に描き出すことによって、戦争美化の言説に抗議の声をあげるーーパリ郊外のメダンにあるゾラ宅に集った、モーパッサン、ユイスマンスら6人のフランス自然主義作家が普仏戦争(1870-71)を記録、諷刺した短編小説集。本邦初完訳。 序文 水車小屋の攻防 エミール・ゾラ 脂肪の塊 ギ・ド・モーパッサン 背囊を背負って ジョリス゠カルル・ユイスマンス 瀉血 アンリ・セアール 大七事件 レオン・エニック 戦闘のあと ポール・アレクシ 補遺一 (五十周年記念の再刊に寄せた)レオン・エニックによる序文 補遺二 メダンの夕べーどのようにしてこの書が作られたか 註 『メダンの夕べ』年譜 訳者解題
どこかの記憶はあなたの記憶 彼女が噓のつもりで適当に言った不気味なローカル番組は実在し、しかも彼女自身も出演していた(「二つの真実と一つの嘘」)。飛び込んだ人間がたまに消える池で行方不明になった兄の思い出(「センチュリーはそのままにしておいた」)。バラッドの謎を解き明かそうとするネットユーザーたちは、その歌に秘められた恐ろしい意味に気づきはじめる(「オークの心臓集まるところ」)。6人のガールスカウトたちのわたしたちがキャンプで体験したこと(「科学的事実!」)。 迷っても、しっかりと着実に、奇想と現実の狭間を歩む。もっとも新しく、もっとも懐かしい、記憶を揺さぶる奇想短篇集。
アメリカ海軍、特撮を撮影す 第2次世界大戦中、B級モンスター映画界のスターであるシムズ・ソーリーは奇想天外な仕事の依頼を受ける。相手はアメリカ海軍で、巨大なトカゲの着ぐるみに入ってほしいというのだ。 アメリカ海軍は巨大な火を吹くトカゲを生み出し、日本を降伏させようという極秘計画を進めていた。ところが、ベヒモスと名付けられた全長400メートルの怪獣はコントロールが効かなかった。海軍は苦心の末に着ぐるみを使い、ベヒモスが日本を破壊するのを日本の外交団に見せつけようと決断したのだった。 そこでベヒモスのスーツアクターに選ばれたのが数々のモンスターを演じてきたシムズ・ソーリー。拒否権などないシムズは、戦争を終わるならばと、この二度とない“生涯最高の役”に取り組むが……。 一見、荒唐無稽でありながら、人類への愛に満ち溢れたシオドア・スタージョン記念賞受賞作。
「魔道祖師」の墨香銅臭が描く中国BLファンタジー最新作 待望の第5巻! 奇妙な出来事が連続する銅炉山。目にするもの、耳にするものにおぞましい記憶を呼び起こされ、謝憐(シエ・リェン)の胸に動揺が広がっていく。花城(ホワチョン)はそんな謝憐(シエ・リェン)に寄り添い、はぐれないよう互いの指に赤い糸を結びつける。その決して切れることない糸が、二人の心も繋いでいた。 やがて山頂を目指す途中で雪崩に巻き込まれ、謝憐(シエ・リェン)は無数の神像が祀られた広大な石窟で目を覚ます。すぐに花城(ホワチョン)と合流するものの、どこか彼の様子がおかしい。花城(ホワチョン)が頑なに見せようとしない、顔を隠された神像や壁画が教えてくれたのは、彼の正体と八百年続く謝憐(シエ・リェン)への思慕でーー。
あなたは僕を知らない。僕だって、あなたを知らない。 エジプト、カイロ。親に決められた既定路線の人生を歩む新婚の医師ターレクは、 ある日魅力的な青年アリーと出会い、その平穏な未来は一変する。 保守的な文化圏での同性愛と不倫は疑惑と波紋を呼び、そして物語は思わぬ方向へと転がり始める…。 喪失と欠落、そして家族の愛を描く珠玉の文芸作品。 カナダのフランス語圏の作家のデビュー作にしてフランスで大ヒット。フェミナ賞とルノードー賞の最終候補となり、「高校生が選ぶフェミナ賞」やリブレール賞(フランス版本屋大賞と呼ばれている)ほか様々な賞を受賞した、話題の一作。 [著者プロフィール] エリック・シャクール Éric Chacour 1983年カナダのケベック州モントリオール生まれ。エジプト人の両親を持つ。パリ・ドーフィンヌ大学を経てモントリオール大学で国際関係論の修士号を取得した。 金融業界で働く傍ら小説を執筆。第一作である本書は2023年カナダでの出版後フランスでも刊行されたちまち人気となり、同年度の「高校生が選ぶフェミナ賞」を受賞したほか、フェミナ賞とルノードー賞の最終候補に選ばれた。翌年にはフランス書店大賞、フランコフォニー五大陸賞などを受賞。 2025年現在はモントリオール在住。 [訳者プロフィール] 加藤かおり (かとう・かおり) フランス語翻訳家。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。訳書にガエル・ファイユ『ちいさな国で』、エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』、ブリジット・ジロー『生き急ぐ』(以上早川書房)、アントニオ・カルモナ『サヨナラは言わない』(小学館)、セシル・トリリ『ちぐはぐなディナー』(講談社)ほか多数。 [原題] Ce que je sais de toi
すべての香りに物語がある。時代も距離も超えて辿る、美しく哀しい記憶の旅。香りと人と時間が奏でるショートストーリー。フランスで刊行され高く評価された作品を、著者自ら邦訳した幻想的な一冊。 ************************** 悲しみの匂いとはどんなものだろう。人の気配を匂いから感じることがあるが、不在の匂いとはどんなものだろうか。 誰かが死ぬとき、この世界の秘密の一部は永遠に失われてしまう。 人はみずからの秘密を抱えてあの世に旅立つ。残されたものにできることは、物語を語ることだけ。それが真実か否かは一生わからないまま。 秘密はどのような匂いをさせているのだろう。〈本文「ニューヨークで」より〉
老いを意識し、創作への不安を抱える作家ソフィのもとに、モップのような毛並みの若い犬が現れる。信頼と愛情を向けてくる犬と森を歩き、自然と向き合う時間が、彼女に作家として、女性としての自分を見つめ直すきっかけをもたらした。フェミナ賞受賞の感動作
19世紀後半の台湾を舞台に、原住民族と外部勢力(主に清軍)との衝突を描く歴史小説「花シリーズ三部作」の最終第三作。「奇密花 奇密社の故事」「大庄阿桃 大庄村の阿桃の物語」の短編2篇と「戯曲 苦楝花(Bangas) 苦楝の花」を収録。 「奇密花」:花蓮県南部の瑞穂を訪れた小君はアミ族の村・奇密社の虐殺現場にタイムスリップする。 「戯曲 苦楝花(Bangas)」:サキザヤ族の大部落、タクブワン部落の頭目・Pazikとその妻・カナサウの受難を戯曲形式で描く。 「大庄阿桃」:台東市に駐屯する清軍への包囲攻撃(大庄事件)に参加した夫を亡くしたタイボアン族・阿桃の物語。 原題『苦楝花』(INK、2019年)。「花シリーズ三部作」第一作『フォルモサに咲く花』(原題『傀儡花』)、第二作『フォルモサの涙』(原題『獅頭花』)。 著者のことば サキザヤ族の物語は実際には昨年のうちに書き上げていた。しかし、自分で納得できないと感じた。なぜならサキザヤ族の故事は本来とても悲壮であり神聖なものなのでそこに手を加えることができないからだ。手を加えるべきではないと思うものの、そのままでは小説として成立しづらい。そこで私は身の程をわきまえず、シェークスピアばりの劇本形式に書き換えるという、新たな手法への挑戦を試みた(「戯曲 苦楝花」)。「大港口事件」「大庄事件」はそれぞれ「奇密花」「大庄阿桃」として短編小説の形式で描いた。私は司馬遼太郎の歴史短編小説『幕末』と藤沢周平の『隠し剣孤影抄』『たそがれ清兵衛』に感服しており、これらは私が作家としての殻を破るために「西施の顰に倣う」つもりで挑んだ作品である。(「後記」より) 本書を読むために 奇密花 奇密社の故事 戯曲 苦楝花(Bangas) 苦楝の花 大庄阿桃 大庄村の阿桃の物語 後記 訳者あとがき
作家・松田青子さん推薦! 「「ゴール」も「正解」もない世界で、 どんな未来が待ち受けていようとも、 赤い靴を履き、けもの道を行く。 あらゆる「境界」の前で足掻く。 どうしたって痛い。 どうしたって傷つく。 それでも「自由」には抗えない。」 逃げ出してしまいたい。そう願っていたとき、ジャカルタで英語教師をしている「あなた」は悪魔から赤い靴を譲り受ける。冒険に連れて行ってくれるその赤い靴を履いて、どこへ行って何をするかはあなた次第。ニューヨークで成功を収めるのか、カリフォルニアで観光客になるのか、アムステルダムの歓楽街に迷い込むのか、決して止まることのない列車に乗るのか……物語の展開はあなたが決める、ゲームブック形式の長編。インドネシアのフェミニズムの旗手による移動と境界をめぐる傑作。英国PEN翻訳賞受賞作。 装幀:佐野裕哉 装画:Genie Ink
国内の著名な作家が日本語に翻訳した文学作品の図書目録。1970年代から現在までの約50年間に国内で刊行された翻訳書の中から、作家509人が訳した小説、戯曲、詩、ノンフィクションなどの文学作品3,408点(漫画・絵本等を除く)を収録し、訳者名を見出しとしての五十音順に排列。見出しには生没年、肩書きなどの簡単なプロフィール、各文献には内容紹介、短編集の収録作品を示した。巻末に「書名索引」「原著者名索引」付き。
ーー地球温暖化が深刻化した近未来を舞台にしたCli-Fi(気候変動フィクション)-- オランダの女王サスキア自ら操縦する小型機が、滑走路に乱入した野ブタと衝突して不時着。 その場に居合わせたのが、テキサスで巨大な野ブタを追っていたハンターのルーファス。サスキアをその場から助け出すと、彼女と行動を共にすることになる。 世界が気候変動による海面上昇や異常気象に苦しむ中、テキサスの億万長者であるT.R.シュミット博士は、「世界最大の銃=ビッグガン」と呼ばれる巨大な装置をメキシコ国境近くに建設し、二酸化硫黄を成層圏に噴射するソーラー・ジオエンジニアリング計画を進めていた。そして、オランダ、ヴェネツィア、太平洋の島々など、海面上昇の脅威に晒される低地国家や地域の有力者と資産家を招いた発射実験によって既成事実化してしまう。 T.R.のソーラー・ジオエンジニアリング計画の支持者と反対者の間で国際的な対立が激化していく中、登場人物たちはそれぞれの立場で地球規模の危機に立ち向かう。 『スノウ・クラッシュ』で“メタバース”を生んだニール・スティーヴンスンが描く、破天荒な英雄たちによる地球改造の「神話」 。