著者 : ジャッキー・アシェンデン
祝賀舞踏会の夜、国王秘書のウィニフレッドは灯りを消し、やっとベッドに潜り込んだ瞬間、誰かの手に触れて凍りついた。「来てくれたんだね。待ちくたびれたよ」この声は…私のボス、オーガスティン国王?部屋を間違えた!そして彼も私を誰かと勘違いしている。抗うべきなのに、ウィニフレッドは正体を伏せたまま身を任せた。じつは5年前に仕えて以来、ずっと彼に憧れてきたのだ。だが代償は大きく、ウィニフレッドは王の世継ぎを宿してしまう。私には母親になる資格なんてない…。でも、どうすればいいの?
シドニーは30歳の誕生日に突然現れたハリールから求婚され、動転した。学生時代、彼とは固い友情で結ばれていた。引っ込み思案の彼女を異国の王子ハリールはいつも励まし、勇気づけてくれた。やがて感謝の想いは恋心へと変わり、5年前、王位継承のため帰国するハリールについに愛を告げた。だがなぜか彼は冷たく拒絶し、絶縁を言い渡して去ったのだ。まだあのときの傷さえ癒えていないのに…。シドニーは求婚を一蹴するが、2週間だけ滞在してはと誘われ、思わず心が揺れるーハリールの密かな企みにも気づかずに。
里親の家庭をたらいまわしにされ、さみしく育ったソラス。仮面舞踏会の夜、漆黒の髪と完璧な男らしい肉体を持つガレンに出会ってたちまち虜になり、純潔を捧げた。だが妊娠に気づいたのは出産の1週間前ーそして出産翌日、国王の使者が来たのだ。あの夜の男性は国王陛下だったの?極度の疲労で何も考えられず、差し出された書類にサインした。大金と引き換えに赤ん坊を奪われるとも気づかずにー。だから子供を取り戻すため秘密のナイトクラブで王を誘惑した。ソラスの顔も名前も知らない彼はまんまとのせられたが、写真をたねに脅しても応じず言った。「君を王妃に迎えたい」。
カストール・クセナキスの豪邸に足を踏み入れたとき、店のレジ係にすぎないグローリーは自分の思いつきを後悔した。悪名高いギリシア富豪が連日主催する派手なパーティに潜り込み、自分の純潔と引き換えに姉の治療費を手に入れようだなんて…。カストールは招待客ではない小柄な女性を琥珀色の目で見つめた。フードつきの真っ赤なコートを肩にはおり、震えている。見るからに無垢なグローリーの話を聞くやいなや、彼は言い放つ。「ある事業のため僕は妻が必要だ。報酬を払うから結婚してくれ」
最後にひと目、義兄コンスタンティンに会って別れを告げよう。身重のジェニーはそう決めて、継父の追悼会に出席した。彼女が9歳のとき、実母がコンスタンティンの父と再婚して以来、ずっと優しかった義兄。友情はやがて片想いへと変わっていった。ところが3カ月前、ジェニーに思いがけない奇跡が起きた。コンスタンティンに誘惑されて純潔を捧げ、身ごもったのだ。でも、彼には婚約者がいるーこの子を守れるのは私だけ…。悩む彼女にコンスタンティンが放ったのは、耳を疑う宣言だった。「婚約は破棄した。愛はないが、代わりにきみと結婚する」。
オリヴィアの婚約者コンスタンティンの亡父の追悼会に、彼の兄で15年前に死んだはずのヴァレンティンが突然現れた。会場が大混乱に陥るなか、オリヴィアは連れ去られた。かつてヴァレンティンと幼い恋を育んだ島へ。彼が生きていた!だが喜びはなく、あるのは困惑だけだった。「僕は君を弟から取り返し、必ず君と結婚する」なぜ?あのとき、私の前から消えてしまったのに?かつて愛した人の宣言に、オリヴィアは“ノー”と答えた。ヴァレンティンの彫刻のような冷たい美貌を見上げるとー?!
その夜、リアは絶望を抱え、許婚の寝室へ向かった。初めて会った瞬間から、私を虜にしたラファエル。なのに父の決めた許婚は、あろうことか彼の異母弟なのだ。でも、籠の鳥の私にいったい何ができただろう?ラファエルへの恋心を封印し、リアは許婚の寝室を訪ねた。夫となる人に心を捧げられないならば、せめて体を捧げるーそれが、実らぬ恋をあきらめるただ一つの道に思えたから。迎え入れた許婚の端整な顔がその刹那月明かりに照らし出され、リアは息をのんだ。ラファエル!まさか部屋を間違えたの?抗うすべもなく情熱を交わした後日、リアは妊娠に気づくー。
ともに児童養護施設で育った、病気療養中の親友に懇願され、アイビーは卵子提供をして、代理母となった。だが親友は急死、おなかの子だけが残された。ドナーは無慈悲と噂される砂漠のシーク、ナジールだという。悩んだ末、アイビーは身重の体で彼を訪ねることにする。現れたのは、威厳に満ちたブロンズ色の肌の屈強な体格の男性。なぜか子供に執着する彼に結婚を申し込まれ、驚くアイビー。「イエスと言うまで、きみはここから生きて出られない」おなかの子と生きのびるためには、彼に従うしかないの?
修道院の養護施設で育ち、シスター目指して修練中のアンナはある日、院長から王の娘の教育係に抜擢された。だが着任したその日に、アドニス王に即刻帰るよう命じられる。彼は教母である院長が花嫁候補を送りこんだと察知したのだ。そうと知らないアンナは、せめて2週間の試用期間をと願い出た。すぐに解雇されたらシスター不適格とみなされてしまうわ…。幸い滞在は許された。けれどギリシア彫刻のように長身で逞しいアドニス王に惹かれ、純潔を捧げるのに時間はかからなかった。叶わぬ恋と知りながら。そして王の子を身ごもるとも知らずに。
会ったこともない公爵の妻になれですって?困窮し、父の介護に明け暮れるウィローは、突然の結婚話に動揺した。その昔、父と先代の公爵との間で交わされた約束だという。とにかく話を聞こうと領主館に赴くと、待っていたのは数日前、領地の森の湖で裸で泳いでいた美しい青年ーわたしの唇を盗んだ彼が第7代オードリー公爵だったなんて!「結婚して跡継ぎを産んでくれるなら、莫大な報酬を授けよう」体の不自由な父との困窮生活から抜け出せるなら…。無垢なウィローは結婚の条件として人工授精を提案するがー。
ステラはホテルの一室で眠る男に、震える手で銃を向けていた。富豪ダンテ・カルディナリー兄を死に追いやった男の息子だ。私には無理よ…。でも、父の命令に背くことは許されない。ところが目を覚ましたダンテの天性の魅力に籠絡され、虜となったステラは、あろうことか純潔を差しだしてしまう。5週間後、スラム街の貧しいアパートメントに身を潜めながら、ステラは怯えていた。どうしよう、まさか妊娠するなんて。そこへ突然ダンテが現れると、傲慢にも言い放った。「きみをここから連れていく。もちろん…おなかの子もだ」
両親を亡くしたマチルダは育ての親のおじ夫婦を助けるため、年の離れた裕福な男性との形だけの白い結婚を受け入れた。婚約の前に旅へ出た彼女は、金色に輝く瞳のエンツォと出会って初めて恋に落ち、熱い2日間を過ごす。だが翌朝には彼の寝顔にそっと別れを告げ、泣く泣く姿を消すしかなかった。4年後、マチルダはパーティ会場に現れた大富豪をひと目見て、愕然とする。エンツォ!こんな形で彼に再会するなんて…。マチルダの傍らでは幼い息子が無心に笑い声をあげていたーエンツォとまったく同じ金色の瞳を輝かせて。