2024年発売
日常にひそむ不安や欲望 家族の中で抱く孤立感 生きあぐね、もがく女たち 現代女性文学の原点となった 呉貞姫の作品集 朝鮮戦争を体験した著者の幼少期が反映された「幼年の庭」「中国人街」のほか、「三十代の内面の記録」という六編を収録。繊細で詩的な文章は、父の不在、家族関係のゆがみ、子どもや夫への愛情のゆらぎに波立つ心を描き出す。それは時代の中で懸命に生きる人の肖像でもある。 『幼年の庭』に描かれた韓国の女性たちの姿は、 同時代の日本の女性たちとも重なる部分があるだろう。 現代の韓国文学に日本の読者が共感するように、 幅広い層の心に響く小説集として 多くの人々に読まれることを期待している。 --清水知佐子(本書「訳者解説」より) 【推薦のことば】 呉貞姫に心奪われることなく「文学する」ことは可能だろうか。韓国において、致命的なほど文学の虜になるというのは、呉貞姫の世界に魅了されることを意味する。「呉貞姫」という名前は、文学そのものだ。彼女の小説の緻密で秘密めいた恐ろしい美しさについて語ることは、もはやいかなる発見の感動も与えない。それは、韓国現代文学が有する、生きた神話に属するからだ。 ──イ・グァンホ(文芸評論家) 「彼女の体の中に、深い水の時間たち」(『呉貞姫を深く読む』、文学と知性社、2007年、未邦訳)より ワット アー ユー ドゥーイング? あなたは何をしていますか? アイム リーディング ア ブック……。久しぶりに広げた「幼年の庭」の冒頭を読んだ私は一瞬にして、今はもう再開発でなくなってしまった昔の家の屋根裏部屋に、一つひとつ、ときめきと不安と挫折の間を貫くその文章を読んでいた頃に戻り、まるで古びた未来を見下ろすかのような、誰もいない路地を見つめているような錯覚に囚われる。「夜のゲーム」も「火の河」も同じだっただろう。当時、偽悪的な人物と彼らのタブーに挑戦することは、苦痛でありながらもどれだけ痛快だったことか。 生というもののしぶとさと人生の不条理をむき出しにした場面の上に、自身を限界まで追い立てたであろう若かりし日の先生の姿が重なる。四方に対して恥ずかしくて申し訳なかった、眠れないあの夜の数々を今なら少し理解できる。ぴんと張り詰めた緊張の中を、いつも慎み深く歩いていたであろう先生の姿を思い浮かべながら、私も少し慎重にならなければならないのではないかと考える。三十年余りが過ぎたけれど、私は今も呉貞姫文学の庇護の下にいる。 ──ハ・ソンナン(小説家) 『幼年の庭』(文学と知性社、2017年)帯文より 幼年の庭 中国人街 冬のクイナ 夜のゲーム 夢見る鳥 空っぽの畑 別れの言葉 暗闇の家 著者あとがき 日本語版刊行に寄せて 訳者解説
イタリアに限らず、世界中でガリバルディの名前のついた通りや公園などがいたるところにある。それほどガリバルディは世界中で慕われた人物である。アレクサンドル・デュマのガリバルディに関する本は本書『ガリバルディ回想録』と『ガリバルディ千人隊』の二作品ある。『ガリバルディ回想録』はまさしくガリバルディ の正伝となっていて、ガリバルディが一八〇七年七月二十二日にニースで生まれてから一八四九年六月三十日までの記録である。我々はこの『ガリバルディ回想録』を日本語で出版することで満足するが、その理由は、第二巻『ガリバルディ千人隊』は一八六〇年の第二次イタリア独立戦争当初の一年間弱だけだからである。この貴重なガリバルディ伝を日本語にすることでガリバルディ理解が深まることを期待しています。
〈古典部〉シリーズ第5作『ふたりの距離の概算』と第6作『いまさら翼といわれても』を合本し、函入り単行本に。 最新短編「虎と蟹」「三つの秘密」も収録したファン必携の1冊。 ・ふたりの距離の概算 ・いまさら翼といわれても ・三つの秘密、あるいは星ヶ谷杯準備滞ってるんだけど何かあったの会議 ・虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人 ・巻末付録
実家に暮らす29歳の喜佐周(きさ・めぐる)。古びた実家を取り壊して、両親は住みやすいマンションへ転居、姉は結婚し、周は独立することに。引っ越し3日前、いつも通りいない父を除いた家族全員で片づけをしていたところ、不審な箱が見つかる。中にはニュースで流れた【青森の神社から盗まれたご神体】にそっくりのものが。「いっつも親父のせいでこういう馬鹿なことが起こるんだ!」理由は不明だが、父が神社から持ってきてしまったらしい。返却して許しを請うため、ご神体を車に乗せて青森へ出発する一同。しかし道中、周はいくつかの違和感に気づく。なぜ父はご神体など持ち帰ったのか。そもそも父は本当に犯人なのかーー?
読者の度肝を抜く勢いで怖さと笑いを届けるデビュー作。はてなインターネット文学賞カクヨム賞、カクヨム「ご当地怪談」読者人気賞受賞作品と書き下ろし60枚を含む渾身の作品集! ・八尺様がくねくねをヌンチャク代わりにして襲ってきたぞ!(Xで関連語がトレンド入りした話題作) ・八尺様のビジネスホテル (書き下ろし・著者独自の解釈で描かれる「八尺様」が登場するスピンオフ作) ・キリコを持って墓参りに (カクヨム「ご当地怪談」読者人気賞受賞作) ・尺八様 (カクヨム「ご当地怪談」読者人気賞受賞作) ・お昼におばけを退治する (昼×怪談の組み合わせで、余韻の残る恐怖を味わえる作品) ・一人心中 (倒錯的な関係の男女が登場する、ほの暗く濃厚なホラー短編) ・身長が八尺ぐらいある幽霊が俺にビンタしてきて辛い! (書き下ろし・物理攻撃を放つ霊とは?) ・ホラーのオチだけ置いていく (一部書き下ろし追加・カクヨムで話題を呼んだ「オチのみ」の新ジャンル) ・書籍化必勝法 (書き下ろし・書籍化を目指す書き手が主人公の問題作) ・あとがき (書き下ろし・最後まで油断ができない展開で贈る「あとがき」)
任官七年目の裁判官、安堂清春は、東京からY地裁に赴任して半年。幼い頃、衝動性や落ち着きのなさから発達障害と診断され、専門医のアドバイスを受け、自身の特性と向き合ってきた。市長候補が襲われた詐欺未遂と傷害事件、ほほ笑みながら夫殺害を供述する女性教師、“娘は誰かに殺された”と主張する父親…。さまざまな事件と人との出会いを通じ、安堂は裁判官として、そしてひとりの人間として成長していく。生きづらさを抱える若手裁判官が、自らの特性と格闘しながら事件に挑む異色の青春×リーガルミステリ!
前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。 父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。 それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくがーー。 一人一人違う”私たち”が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編! ■プロフィール 寺地はるな (てらち・はるな) 1977年佐賀県生まれ、大阪府在住。2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。2021年『水を縫う』で河合隼雄物語賞受賞。2023年『川のほとりに立つ者は』で本屋大賞9位入賞。『大人は泣かないと思っていた』『カレーの時間』『白ゆき紅ばら』『わたしたちに翼はいらない』など著書多数。
親友・西の葬儀で弔辞を終えた松は、彼との過去に思いを馳せた。-中学のある時期から、事あるごとに口出ししてくるようになったクラスメイトの西。はじめは冷たくあしらっていたが、あまりのしつこさに不本意ながらも助言を受け入れた先では、いつも未来が開けていると気づき、彼との友情を深めていく。
糸の向こうにあるのは必死の命。 だったらこれは遊びでは無い、戦いだ。 特に釣り好きの間では天賀太平よりは「天下太平」、あるいは顔がそっくりな「へのへのもへじ」を縮めて「へのじ」と呼ばれるこの物語の主人公は、天賀太平二十三歳。 花房藩五万三千石で釣り役を務めている。 やる事なす事すべて頓珍漢、だけどなぜかみんなに愛される釣り侍は、「天下太平日々是れ好日、世はなべて事も無し(今日は天気が良くて嬉しいな)」を口癖に、今日も竿をふるのである。 序章 第一章 いずれあやめかかきつばた 第二章 五月のお焦げせんべい 第三章 大平・命がけの釣り修行 第四章 大スズキと鬼カサゴ 第五章 五月のやぶからし 第六章 変わり膳のおぼろ月 終章 つかの間の休息
時空を超えてつながる愛の物語 家族を襲った突然の惨劇ー。母はなぜ酸鼻な死を遂げたのか? 母の死をきっかけに前世と現世を視る能力を得た主人公の光。 事件の真相を探るうちにみえてきたものとは…。 第一章 今生の別れ 第二章 再会 第三章 別れと出会い 第四章 真実 第五章 永遠の愛 エピローグ
めそめそするな、くよくよするな。 多情多恨、魂の叫びを聞け。 人間は皆、自分の秘密や弱点を隠して生活していた。 悲しみを隠し、苦痛を隠し、貧しさを隠し、自分の自出を隠し、 隠せるものは何でも隠し、幸せそうに振る舞う賢明な処世術が盤石で、 善良な人間の生き方だよ。(本文より) 序章 浸潤な虐め 第一章 邂逅と幸運 第二章 原野への誘い 第三章 将来への光輝 第四章 心腹の疾それぞれの罪 最終章 麦秋への回
横溝正史参加作品6本&戦前の傑作4本を収録 書籍初収録作品あり 「朝から夜中までの彼と彼女」 阿部知二/北村壽夫/横溝正史/ささきふさ/佐左木俊郎/尾崎士郎 「諏訪未亡人」 延原謙/吉岡龍/海野十三/角田喜久雄/横溝正史 「三太郎とヘナ子」 失名氏/吉岡龍/大下宇陀児/横溝正史/池田忠雄/横山隆一/岸鏋三郎 「探偵作家コンクール」 小栗虫太郎/横溝正史/海野十三/久生十蘭/木々高太郎/甲賀三郎/大下宇陀児 「毒環」 横溝正史/高木彬光/山村正夫 「病院横町の首縊りの家」 横溝正史/岡田鯱彦/岡村雄輔 「楠田匡介の悪党ぶり」 大下宇陀児/水谷準/妹尾韶夫/角田喜久雄/山本禾太郎/延原謙 「天賞堂金塊事件」 大下宇陀児/水谷準/甲賀三郎 「五本の手紙」 乾信一郎/延原謙/甲賀三郎/水谷準/大下宇陀児 「猪狩殺人事件」 覆面作家(小栗虫太郎)/中島親/蘭郁二郎/大慈宗一郎/平塚白銀/村正朱鳥/伴白胤/伊志田和郎/萩一之介 * 編者解説 日下三蔵 執筆者プロフィール
愛する恋人を失い、彼の忘れ形見の娘とも引き離され、絶望の淵に突き落とされた主人公。コリーン・フーヴァーが贈る、愛と許しの物語
こんな地獄を乗り越えないと就職できない世の中、間違ってないかーー? 20XX年の近未来、「ウルトラベビーブーム世代」の大学生たちが、今とは比べ物にならないほど激化した就職活動に挑むーー。 主人公の太田亮介は、就職活動に熱が入っていない京都大学三回生。日本を牛耳る巨大企業「Z社」に入社するため、ようやく重い腰を上げて就活に臨むが……。 銃撃をかわしながら出身大学OBを探す「OB訪問」やSNSでの10万人フォロワー獲得をめざす「インターンシップ」、歴戦の就活猛者たちと激論をかわす「グループディスカッション」、そして多くの就活生が命を落とす「面接試験」。生死を賭けた選考に挑む就活生たちの悲劇を克明に描き、現代の新卒一括採用システムに一石を投じる、“就活エンターテインメント”登場!
「ロシアのウクライナ侵攻」「元総理狙撃事件」から「安保関連3文書の決定」に至る防衛省の激動の1年を、情報課長・井上聡の視点で描いた野心作!!
修験者のなりをして国々を放浪する謎の「十三童子」。 役者と見まがうこの色男は、錫杖を鳴らし銀のキセルをふかしながら、欲にまみれた人間たちをこう誘う。 ーー来世で地獄に堕ちてもよいなら、ひとつだけ願ってこの鐘を撞け。 ただし、撞いた者は来世に底なしの無間地獄に堕ち、子も今生で地獄に堕ちる。 撞くか撞かぬは、本人次第。さあ、あなたならどうする? 人の欲をためす不思議の鐘、鳴らすか、やめるか? 今が人生の分かれ道。 ストーリーテリングの凄さ際立つ新星が放つ傑作時代小説! 心の奥底に響く物語。深い、深すぎる。-細谷正充(文芸評論家) 読むと、心のひだをじゃらんと撫でる音が聞こえる。-三宅あみ(ジャパネスク・ナビゲーター/江戸文化研究家)
「素晴らしい歌を世に送り出せ!」 新人バンドのデビューに奔走するレコード会社。契約を勝ち取り、狙うはアニメの主題歌。次々と難題がふりかかり、予想外の事態に。 え……? 彼らは何かを隠してる! 迫真の音楽業界ミステリ 「我々はアーティストを裏から支える役回りだ」 「耳ってのは脳と直結してる。音を聴くんじゃない。脳で読み取れ」 「才能はあっても、芽の出なかった者が死屍累々の業界だからね」 「アーティストを知るのは初歩。血肉になるまで一緒に歌いあげろ」 扱いづらいベテランを売りこみ 社内外の駆け引きにも惑わされる。新人の才能を見出した若き社員が業界の荒波に立ち向かう!
上泉信綱は剣槍を縦横無尽に振るっていた。相模国小田原城主・北条氏康の機略により、武蔵河越城を落とし損ねた関東管領・山内上杉家憲政と扇ガ谷上杉家朝定、関東公方・足利晴氏の連合軍を救うため、一騎当千の働きをせねばならぬのだ。しかし、獅子奮迅の活躍虚しく、主君である上野国箕輪城主長野業政の嫡男・吉業は護りきれなかった。肩を落とす信綱に、業政は無能な関東管領を見限るという。甲斐国躑躅ヶ崎館・武田晴信の誘いにもなびかず、我が道を行く主君に仕える信綱だったが、ついに業政の命運が尽きてしまう。信綱は「兵法を極めよ」という業政の遺言を成し遂げるべく、弟子の疋田文五郎、神後宗治とともに諸国修行の旅に出る決意を固めることに。出立後、信濃国諏訪大社で奉納演武してからというもの、長坂釣閑斎をはじめ、諏訪四郎、武田晴信、小山田信茂らが、兵法家として名高い信綱を引き留めては策を弄してくる。なんとか魔手を振り切り、常陸国へ向かう一行。ようやく辿り着いた、武の神を祀る鹿島神宮を詣でていると、なんと剣聖・塚原卜伝が現れた。教えを乞う信綱に卜伝は…。戦国武将剣豪ロマン。