2022年12月発売
東京・三田綱町で一大外科病院を築き上げた元海軍軍医の時田利平の一族が辿る数奇な運命を、昭和の初頭から太平洋戦争の敗戦、復興にいたるまでの時期を背景に描いた、空前の大河小説。二・二六事件に遭遇する陸軍中尉の脇敬助、利平の次女でセツルメント運動に献身する時田夏江、夏江の甥で大人たちの世界を垣間見ていく小学生の木暮悠太……。それぞれの運命が大きく変転していくーー。 芸術選奨文部大臣賞。
矢崎忠一は、最愛の妻を殺しました。 陸軍中尉はなぜ、親友の幼馴染である美しき妻・雪野を殺したのか。 問わず語りに語られる、舞台女優・沢子の流転の半生と異常な愛情。 大正ロマンの旗手による、謎に満ちた中編二作品。挿絵106枚収録。 どうした訳だろう。彼女(あれ)は、あの晩に限って、今まで一度も見せたことのないような厳然とした顔をして言った。 「あなたは取返(とりかえ)しのつかないことを仰言(おっしゃ)いましたわね。しかしあたしはもう覚悟をきめました。あなたはあたしの良人(おっと)です。さ、どうでも気のすむようになさい」(「秘薬紫雪」より) 私は一人の不思議な、風のような女の知り合いになった。(…)其日(そのひ)にも私は例の隅の卓(テーブル)で、食後の煙草(たばこ)をふかしていたのです。一人の見知らぬ女が、恰度(ちょうど)私と反対の隅に坐ってじっとこちらを見ているのです。特に注意を惹(ひ)く女でもなかったのですが、一見非常な苦悩を湛(たた)えて、世にもたよりないと言ったようなその眼が、じっと私を瞶(みつめ)ているのです。(「風のように」より) 秘薬紫雪 風のように 解説(末國善己)
シリーズ第5巻「渋江抽斎」は鷗外の史伝小説の第一作であり、史伝三部作の一つである。江戸時代の侍医、考証学者であった渋江抽斎とその妻五百や子孫について描いた作品。江戸時代のお金事情や女性が軽んじられていた時代にたくましく生きた妻五百など抽斎の生き様以外の魅力も詰まった作品である。 その一 その二 その三 その四 その五 その六 その七 その八 その九 その十 その十一 その十二 その十三 その十四 その十五 その十六 その十七 その十八 その十九 その二十 その二十一 その二十二 その二十三 その二十四 その二十五 その二十六 その二十七 その二十八 その二十九 その三十 その三十一 その三十二 その三十三 その三十四 その三十五 その三十六 その三十七 その三十八 その三十九 その四十 その四十一 その四十二 その四十三 その四十四 その四十五 その四十六 その四十七 その四十八 その四十九 その五十 その五十一 その五十二 その五十三 その五十四 その五十五 その五十六 その五十七
シリーズ第5巻「渋江抽斎」は鷗外の史伝小説の第一作であり、史伝三部作の一つである。江戸時代の侍医、考証学者であった渋江抽斎とその妻五百や子孫について描いた作品。江戸時代のお金事情や女性が軽んじられていた時代にたくましく生きた妻五百など抽斎の生き様以外の魅力も詰まった作品である。 その五十八 その五十九 その六十 その六十一 その六十二 その六十三 その六十四 その六十五 その六十六 その六十七 その六十八 その六十九 その七十 その七十一 その七十二 その七十三 その七十四 その七十五 その七十六 その七十七 その七十八 その七十九 その八十 その八十一 その八十二 その八十三 その八十四 その八十五 その八十六 その八十七 その八十八 その八十九 その九十 その九十一 その九十二 その九十三 その九十四 その九十五 その九十六 その九十七 その九十八 その九十九 その百 その百一 その百二 その百三 その百四 その百五 その百六 その百七 その百八 その百九 その百十 その百十一 その百十二 その百十三 その百十四 その百十五 その百十六 その百十七 その百十八 その百十九
「おまえは出来は悪いが、うちの娘だ」 思いつめたら突き進む“跳ねっ返り”女性警察官の真情。 認知症の高齢女性を助けた青年が水死体で発見された。 鈴山澪は事件の背後に悪名高い刑事の存在を探り当てる。 不審な動きを見せる刑事は何を追っているのか? 特殊詐欺の闇を抉り出す渾身の警察小説! 心優しき青年はなぜ殺されなければならなかったのか? 新潟県警に勤務する鈴山澪は地元のテレビ番組で、特殊詐欺対策啓蒙コーナーを担当している。 共演者の麻子は、恋人を詐欺被害で亡くしていた。ある日、麻子は生放送で、未だに捕まらない 犯人への憎しみを口走って炎上する。 一方、澪の友人で、大雪の日に認知症の高齢女性を保護して表彰された青年がいなくなる。 その件に絡んで謹慎となった澪は行方を探し、富山の海岸で変わり果てた姿を目にする。 辿りついた防犯映像には地元暴力団との交際が噂される刑事の姿が……。 警察組織に背を向けて事件を追う澪は、いつしか、封印した自らの過去に踏み込んでいくことにーー。 新潟を舞台にした新たなる警察小説
この仕事は、誰かがやらなければいけない。 目の前の患者を救うことを、分け隔てなく。 函館にある医療刑務所分院に努める勤める金子由衣(かねこゆい)は、2年目の矯正医官。医療刑務所では、患者である受刑者の平均年齢も高く、凶悪な罪を犯した者も基礎疾患などを抱え医師の助けを必要としている。一方で不調を訴え刑務作業逃れをしようとする者も多い。受刑者の過去の罪と患者としての現在の状況を毎日のように目の当たりにし、贖罪とは何かを考える由衣だったが、当直の晩、糖尿病を患っていた前科四犯の受刑者が亡くなった。これは医療事故か、あるいは殺人事件なのかーー。
武士から菓子職人に転身した変わり種の主、治兵衛。父を助ける出戻り娘、お永。看板娘の孫、お君。 親子三代で切り盛りする江戸麹町の評判の菓子舗「南星屋」には、味と人情に惹かれやって来るお客が列をなす。 麹町を大火が襲った夜以来、姿を見せなくなった気のいい渡り中間を案ずる一家だったが、ある日、思わぬところから消息が届き……。 「誰だって、石の衣は着ているもんさ。中の黒い餡を、見せねえようにな」 ほろりとやさしく切ない甘みで包む親子の情、夫婦の機微、言うに言えない胸のうち。 諸国の銘菓と人のいとなみを味わう直木賞作家の大人気シリーズ、最新刊! 〈収録作〉 饅頭くらべ 母子草 肉桂餅 初恋饅頭 うさぎ玉ほろほろ 石衣 願い笹 饅頭くらべ 母子草 肉桂餅 初恋饅頭 うさぎ玉ほろほろ 石衣 願い笹
廃屋で全裸の男が遺体で発見された。動物用の檻に閉じ込められ、腹部には深く大きな傷があった。そして傷口には、薬品が付着している。混乱の中、捜査が始まるが、今回の事件、刑事・如月塔子の相棒は鷹野秀昭ではなかった。いったい、なぜ? 戸惑っている塔子を嘲笑うかのように、その夜、第2の事件が発生ーー。闇夜から犯人を、引きずり出すことができるのか? 大人気警察シリーズ、2年ぶりの最新刊!
誰かと生活することは、めんどくさいけどあたたかい。鎌倉駅から徒歩8分。木々と小鳥に囲まれたシェアハウスには、今日もカレーとコーヒーの香りがいっぱい。まだ空室アリ〼。男手一つで育ててくれた父が死んで、鎌倉のカフェを引き継いだ香良。ある日離婚した親友が押しかけてきて、いつの間にかシェアハウスをはじめることに! 次々やって来る入居者たちは、みんなちょっとワケあり。慣れない他人との共同生活に、イラっとしたり文句を言ったりもするけれど……。家族だから言えない、家族だから甘えられない。そんなひとりぼっちになった住人たちが見つけた新しい形のきずなに、あたたかい気持ちになる1冊。
元エリート官僚、総理の娘。--真波莉子に敵現る。完璧女VS敏腕女!人気のないキャバ嬢どうする? 給食異物混入の犯人は? 正々堂々と産休をとりたい! ど田舎にロックフェスを誘致? パワハラ男をどうにかせよ! かつての上司が自殺?「わかりました。その問題、私が解決します」女の人生難問だらけ。男と戦う暇はなし。頑張る女性応援世直しエンタメ、好評第二弾!
若き日の逍遙と懊悩を小気味いい文章で綴る --私達は金輪際あきらめなかった。事は夜間学部学生の面目に関する問題だ。かりに、帝国大学を卒業しなくったって、帝国大学の池の鯉はどうしても釣り上げてみたいものである。-- 東京大学の仲間たちと、勝手気ままな共同生活をしていた〈私〉。卒業しても定職に就くのはイヤで、ツテをたどりつつ満州暮らしを続けていた。なんとか生活を安定させようと、彼の地の女性との婚姻を画策するが、うまく事は運ばず……。 著者が世に出るまでの物理的、精神的な放浪を綴った本編と、「書いて、喰って、支払をするより外にはない」と腹をくくった経緯を記す「放浪無慙」(「あとがき」に代えて)を収録。
町の名士と日蔭者の子の愛と葛藤を描く --自分のいう血のこわさとは、日蔭者の子とその父、というこの血の関係のこわさなのだ。この血ゆえに、かつては全力をあげて拒否しようとした存在を、いまはかえってその血ゆえに、“父なるもの”としてわがふところに受容しようとしている。-- 医者であり町の名士である高峰好之と、その愛人のあいだに生まれた伊作。好之の死後、伊作たちは高峰家とは疎遠な状態だったが、85歳になる母が、父のさみしそうな様子を夢に見るというので、父の墓に参り、その足跡を調べることに。その作業は、恨みに思っていた父と、あらためて向き合うことも意味していた……。 第28回読売文学賞に輝いた傑作私小説。
新橋署生活安全課の刑事・天木淳は洋上風力発電の最新技術データが、業界トップメーカーから、ライバル社に流出していることを知る。内偵捜査を始めると、鍵を握る人物が、大学時代の友人であることがわかった。卒業して二十年、まったく違う道を歩いていたふたりの運命がいま交錯する。
エスピオナージからミステリ、ミリタリーまで、著者の現代小説を集成した合本愛蔵版。長篇三作と、短篇「幻虎の吠える丘」を収録。 一等陸佐のもとに届いた、かつての上官である退役陸将補の訃報。彼はその死に、存在を秘匿された対敵諜報部門の関与を疑うが……。(『東京の優しい掟』) グラフィッカーの僕は、勤めているゲームソフト会社の社長から、独立を目論む者を突き止めて欲しいと頼まれる。何かが会社に起きている。裏切り者は誰なのか? ゲーム業界の中で新たな“ゲーム”が始まった。(『虚栄の掟 ゲーム・デザイナー』) 内憂外患に煩悶する青年将校が、母国再生のために叛乱を決意。果たして首都占領は成功するのか?(『平壌クーデター作戦』)
彼は「クレムリンの魔術師」として知られていた。ヴァディム・バラノフは、ロシアの皇帝の黒幕になる前はTVのリアリティ番組のプロデューサーだったという。“私”はある夜、SNSで知り合った人物からモスクワ郊外の邸宅に招かれて、その祖父の代からの「ロシアの権力の歴史」を知る。ヴァディム・バラノフには、舞台芸術アカデミーで演劇を学んだ青春時代、ヒッピーの両親をもつクセニアという美しい恋人がいたという。ロシアのプロパガンダ戦略や、ウクライナとの戦争において、ヴァディム・バラノフはどんな役割を担っていたのだろうか?エリツィン、クリントン、メルケル…実在の政治家たちも実名で登場し、ソチ冬季オリンピック開会式で赤軍合唱団にダフト・パンクを歌わせた史実なども挿話され、プーチンの権力掌握術やロシアの国民感情が語られてゆく。迫真のリアルポリティーク小説(全31章)。2022年バルザック賞受賞、ゴンクール賞最終候補など、話題沸騰のベストセラー!アカデミー・フランセーズ賞受賞作品。
頃は鎌倉最末期。四天王寺から流出した奇書『未来記』をめぐる権力者同士の争奪戦に、天狗、妖人、名もなき庶民も加勢する。勝者は楠木正成か、怪僧文観か、後醍醐帝か、はたまた天狗か!? 未来を制するのはーー著者会心の歴史伝奇。