小説むすび | 2020年9月発売

2020年9月発売

愛のかけらを拾って愛のかけらを拾って

あの夏の日々が戻るなら、何もいらない。 失った赤ちゃんの記憶が戻るなら……。 あれからもう、7年がたつ。ミーナはあの夏、交通事故に遭った。 頭に大怪我をし、2年ものあいだ入院してつらいリハビリに耐え、 記憶を一部失ったままとはいえ、ようやく普通に暮らせるようになった。 今は生まれ故郷で、自然保護の仕事をしている。 そんなとき、近くでリゾート開発の計画が持ちあがった。 開発会社のオーナーである大富豪のガイと仕事で会うことになり、 彼を前にしたとたん、ミーナの全身に雷のような衝撃が走った。 そばに近づくだけで体が反応し、胸が高鳴り、手に汗がにじむ。 この男性には、以前会ったことがあるような……。 もしかしてこれは、失ったあの夏の記憶の一部なの? 本作の邦題は、ハーレクイン公式Twitter上で行われた一般投票によって選ばれました! 運命のいたずらか、記憶喪失のせいですれ違う恋人たちのもどかしいロマンスをお届けします。情感豊かに描かれ、読み終えたあと心にじんわりと感動が広がる物語です。

ポルトガルの花嫁ポルトガルの花嫁

透明人間になったようで切ない……。 あなたは私を透かして、別人を見ている。 親友の結婚式に招待されたキャサリンは南欧に降り立ち、 まばゆいばかりの日差しに輝く花々と、風格のある屋敷に魅了された。 そして、親友の兄で、ポンタレグレ伯爵の称号を持つエドゥアード。 たびたび話に聞いていた“伝説の人”は、セクシーな男性だった。 だが彼はキャサリンを見た瞬間、その黒い瞳と微笑を凍りつかせた。 なんでも、少年時代の初恋の人に、彼女がそっくりなのだというーー 23年前、報われない恋に絶望して命を絶った女性に。 憂いを秘めたエドゥアードを知るほどに惹かれるキャサリンだったが、 同時に胸が締めつけられるような苦しさに悶えた。 なぜなら、彼の心はまだ、亡き初恋の人に囚われているのだから……。 ヒロインが愛に臆病なのには、もう一つ理由がありました。未婚の母に育てられ、父親が誰かもわからない自分と、ふさわしい家柄の地元の娘と結婚すべき伯爵とでは、あまりにも釣り合わないと気に病んでいて……。ベテラン作家C・ジョージの名作をお贈りします。

蝶になるとき蝶になるとき

小さな村の牧師の娘マーシーは、よその家で家事や雑用を手伝って 弟の学資を稼いでいたが、両親亡きあと、ロンドンで清掃員をしていた。 ある日、偶然見つけた住み込み家政婦の求人に応募して採用されるが、 雇い主は、プレイボーイと名高いイタリア富豪のアンドレア。 男性に不慣れで地味なマーシーは、魅力的な彼に心乱されつつも その気持ちを押し隠して、懸命に仕事に励んでいた。 ある日、アンドレアの会社が作るCMへの出演が決まり、マーシーは驚いた。 彼の会社は宝石などの高級品の広告しか手がけないと聞いているから。 だが撮影日に台本を渡されたとたん、マーシーは屈辱のあまり震えた。 不格好な妻でも、この商品でハンサムな夫の胃袋をつかめる、ですって? しょせん私は、醜いさなぎのまま。美しい蝶には決してなれない。密かに想いを寄せるアンドレアが家政婦の自分をどう見ていたのか、まざまざと思い知らされたマーシーの気持ちが切なくて……。こんな雇用関係の二人が、どのように恋を成就させるのでしょうか?

医療短編小説集(909;909)医療短編小説集(909;909)

損なわれた医師、医療と暴力、看護、最期、災害など7つの主題別に、生と死、理想と現実の狭間を描く14編を収録。医療と文学を繫ぐ医療人文学の視点から編まれたアンソロジー。 <目次> 1.損なわれた医師 オールド・ドクター・リヴァーズ……ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ 千にひとつの症例……サミュエル・ベケット 2.医療と暴力 センパー・イデム……ジャック・ロンドン 力ずく……ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ 人でなし……リチャード・セルツァー 3.看護 貧者の看護婦……ジョージ・ギッシング アルコール依存症の患者……F.スコット・フィッツジェラルド 一口の水……T.K.ブラウン三世 4.患者 利己主義、あるいは胸中の蛇ーー未発表の「心の寓話」より……ナサニエル・ホーソーン 診断……イーディス・ウォートン 端から二番目の樹……E.B.ホワイト 5.女性医師 ホイランドの医者たち……アーサー・コナン・ドイル 6.最期 ある寓話……リチャード・セルツァー 7.災害 家族は風のなか……F.スコット・フィッツジェラルド 解説……石塚久郎 1.損なわれた医師 オールド・ドクター・リヴァーズ……ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ 千にひとつの症例……サミュエル・ベケット 2.医療と暴力 センパー・イデム……ジャック・ロンドン 力ずく……ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ 人でなし……リチャード・セルツァー 3.看護 貧者の看護婦……ジョージ・ギッシング アルコール依存症の患者……F.スコット・フィッツジェラルド 一口の水……T.K.ブラウン三世 4.患者 利己主義、あるいは胸中の蛇ーー未発表の「心の寓話」より……ナサニエル・ホーソーン 診断……イーディス・ウォートン 端から二番目の樹……E.B.ホワイト 5.女性医師 ホイランドの医者たち……アーサー・コナン・ドイル 6.最期 ある寓話……リチャード・セルツァー 7.災害 家族は風のなか……F.スコット・フィッツジェラルド 解説……石塚久郎

失花失花

日本統治時代、戦争の影が色濃くなる中、 荒れ狂う時代の波に翻弄される主人公たちの 恋愛、家族、そして職場での人間模様……。 当時を代表する作家たちが綴る名作六編。 モダニズム作家、李箱の遺稿で、死後に発表された『失花』。妻の死後、中国を旅し、華やかな都会の中の孤独をアイロニーをこめて描いた『ハルビン』。日本にいられなくなり新しい生活を求めてやってきた澄子と、雑誌社に勤めながら小説を書く作家との未遂に終わる愛の逃避行『冷凍魚』。思想犯として投獄された男に本を差し入れ、一時釈放を待つ女。しかし住む家まで用意したのに男は迎えにきた父と帰郷してしまう『経営』。変わりゆく農村を舞台に土とだけ向き合って生き、すべてを失ったあと自らの命を絶つ父。帰郷し田んぼに出てはじめて父の思想にめざめる『土の奴隷』。妻とその女友だちとの交流を通して男と女の不可解な感情とすれ違いを描いた『秋』。 日本統治時代、戦争の影が色濃くなる中、 荒れ狂う時代の波に翻弄される主人公たちの 恋愛、家族、そして職場での人間模様……。 当時を代表する作家たちが綴る名作六編。 失花 실화 李箱(イ・サン/이상) 岡裕美 訳 ハルビン 哈爾濱 하얼빈 李孝石(イ・ヒョソク/이효석) オ・ファスン 訳 冷凍魚 냉 동 어 蔡萬植(チェ・マンシク/채만식) オ・ファスン 訳 経営 경 영 金南天(キム・ナムチョン/김남천) 岡裕美 訳 土の奴隷 続「第1課第1章」 흙의 노예 李無影(イ・ムヨン/이무영) カン・バンファ 訳 秋 가을 池河蓮(チ・ハリョン/지하련) カン・バンファ 訳 解説 渡辺直紀 文学史年表 著者プロフィール 訳者プロフィール

第九の波第九の波

思わず息を詰めていた。市民の健康より利権や金を優先する政治と大企業、監視し合う人々……2012年の事件を題材とする本作のきな臭い空気がいまの日本に重なる。深呼吸するためには、主人公のように自らもがかねばならない。 ーー小山田浩子(小説家) 東海岸の町、陟州をご存知だろうか。石灰鉱山にまつわる謎の死、カルト宗教団、原子力発電所の誘致をめぐる対立などが混在し、欲望が渦巻く陟州を。驚くほど詳細なディテールで描かれた、いまにも手が届きそうなほど鮮明で、恐ろしいほどリアルな陟州を舞台に、この地で苦しい思春期を送った3人が再び舞い戻り、繰り広げられる憎しみと羨望のドラマがゆっくりと浮かび上がる。しかし、何といってもこの小説が読者の胸を熱くさせるのは、彼らのラブストーリーだ。こんなにのめり込んだ悲しい愛の大叙事詩は久しぶりだ。さすが『目連正伝』を書いたチェ・ウンミだが、これが初めての長編小説だとは。驚きだ。 ーークォン・ヨソン(小説家・『春の宵』著者) この作品は、2012年、江原道にある町で実際に起こった事件をモチーフにしているが、ルポや告発小説とは異なる。ソン・イナ、ユン・テジン、ソ・サンファという主人公を通して、一見平和そうな田舎の小さな町の裏側を生々しく描く。そこには富の分配から疎外され、不条理な生活を強いられた人々がいる。著者のチェ・ウンミは、陟州を金と権力によって手中に収めようとする者たちが現れるのも、私たちの生きている社会に問題があるのではないかと問い続ける。 作品の最後の方でソン・イナが、荒波が押し寄せては引いていく陟州の海岸をゆっくり歩いていくシーンがある。『第九の波』は、それでも私たちはこの社会で戦いながら生きていかなければならないという、チェ・ウンミ文学らしいテーマを垣間見せてくれる。 『第九の波』というタイトルは、19世紀ロシアの海洋画家イヴァン・アイヴァゾフスキーの代表作から取っている。

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