2019年6月発売
味比べで時吉と闘った、女料理人と童の小店に、地攻め屋の悪辣な脅迫! 品川の「紅葉屋」九つの息子、「おいらは紅葉屋を継ぐ……」。 母と子の願いを叶えるべく、父時吉は捕物への助っ人で、伜千吉は「勘働き」で協力。 旅籠付き小料理のどか屋のあるじ時吉は、十年ほど前、江戸で一番の料理人を決める「味くらべ」に出たことがある。 その折に闘った若き女料理人がその後、品川で夫と田楽と蒲焼きの見世「紅葉屋」を出し人気となった。 だが夫が病で亡くなり、幼い童と二人、悪辣な地攻め屋に立ち退きを迫られている。 縁あって、お上の「黒四組」から秘かに十手を預かっている時吉と息子の千吉は……。 **********************本書に登場する小料理********************** ・帆立ての時雨煮 ・焼き茄子の煮浸し ・鯵の焼き霜造り ・蛸飯 ・黄金蓮根 ・蛸の小倉煮 ・岩魚の魚田 ・鮑と胡瓜の辛し酢 ・鯛の納豆焼き ・豆腐の蒲焼き ******************************************************************** ◆ 著者について 倉阪鬼一郎 くらさか・きいちろう 1960年、三重県伊賀市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。印刷会社勤務を経て1998年より専業作家。 ミステリー、ホラー、幻想、ユーモアなど、多岐にわたる作品を精力的に発表する。 2008年「火盗改香坂主税 影斬り」(双葉文庫)で時代小説家としてデビュー、好評を博す。
巨大異国船団が来襲!? 北九州沿岸での脅威に目付と藩が一致団結! 福岡藩、小倉藩の島々で、不審な山林伐採跡が……? 長崎奉行からの知らせに、幕府から急遽派遣される目付筆頭の遠国での活躍! 長崎奉行からの出島のオランダ商館長にキリシタンの疑いありとの報を受け、目付・稲葉徹太郎が赴く。 また商館長の蔵から盗難があったことも判明し、稲葉が探索。 そんな折、北九州沿岸に唐船出没との報せに、目付筆頭の妹尾十左衛門が急遽赴く。 敵は大砲を備えた巨船群との報もあり、近隣の藩も及び腰だった。 一方、江戸では目付を騙る者たちの悪行が横行し……。 ◆ 著者について 藤木 桂 ふじき・かつら 千葉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。 テレビドラマの企画脚本などを経て、本格時代小説に挑戦。本作品でデビュー。
金曜日の夜、怜史は高速バスターミナルの待合室にいた。翌朝、大阪に到着する高速夜行バスに乗るためだ。乗車後、最後尾の席に座った怜史だったが、隣の空席を挟んで、一人の女性が座った。連れは誰もいなさそうだ。彼の頭の中に、ある邪悪な計画が芽生え始めるが、いざ実行に移すと事態は思わぬ方向へ…。人気作家による書下しノンストップ官能!
◎妖しき煙が女たちを発情させていく! ◎人妻からOLまで…快楽一色のハーレム団地 団地に住む冴えないサラリーマンの関谷信太郎は、ある晩、南米旅行の土産である怪しげなお香を焚いてみる。 すると、憧れていた隣の奥さんが突然訪ねてきて、信太郎を甘く誘い、二人で快楽を貪ることに。 後日、再び部屋でお香を焚くと、ちょうど現れた宅配業者の若妻がよがり始め、またも美女との性交を味わう。 どうやら、土産のお香に女を発情させる媚薬効果があると気づいた信太郎は…!? 団地がふしだらハーレムに…淫惑の集合住宅エロス!
ごろごろする石。乾いた土。ながれる川の、吹いてくる風の、音。土や緑の、山羊や牛の、マッチの、におい。遠くないところで戦争があり、でもここには、べつの戦いがある。べつの剝きだしの生が、ある。 (帯文/小沼純一) 「火でも焚いてみるか?」「あたし、何も持ってない。あんたは?」「あるとも」--山羊の番をする少女のもとに、どこからともなく現れた14歳の少年。風の強い丘の草地、赤い燐マッチで火を熾した二人は隣どうし寝そべり、小石なみにカチカチのチーズを炎でとろりとさせパンにぬって食べる……。夕暮れどきの情景が、香りと音をともない彩り豊かに立ち現れる(表題作「パストラル」)。規範的なフランス語と異なるスイス・ロマンドの地理に即した文学言語をもちい、恋、老い、農家のくらし、山の民話など、人間と、人間を取り巻く世界の根源的な姿を映し出す20作品。 パストラル 農村の年寄り 湖の令嬢たち 日照り 使いの者 居酒屋の老人たち 香具師一家の休息 助けを求めて 野生の娘 山にひびく声 フォリー姿の物狂い 森での一幕 眠る娘 恋 三つの谷 田園のあいさつ 漁師たち ぶどう作り 恋する女の子と男の子 農家の召使い
あと5時間でこの世界は消滅するーー。歴史を正しい方向に戻さなければ! 直木賞候補作となった記念碑的作品。 「あの戦争」で無条件降伏したはずの日本が本土決戦をしているーー! 「その年」の10月にはいると、ソ連軍は敦賀に、アメリカ軍は四日市に大上陸作戦を展開した。18歳までの男子で本土防衛特別隊が組織されたが、ほとんどは全滅。いまや、山奥の農村の村民までもが敵に通じている。俺は敵弾をあび、頻死の重傷だ。その時、Tマンと名のる男が現われ、「この世界はまちがっている」と告げたーー。時空を超えて日本の歴史の変革を謀る男の見たものとは?! 第50回直木賞候補作となった小松左京初期の傑作。貴重な図版を含む解説も収録。
2020年本屋大賞第3位! 「ブランチBOOK大賞2019」受賞! 「未来屋小説大賞」第3位 「キノベス!2020」第6位 小説の向こうに絵が見える! 美しさに涙あふれる読書体験 両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。 水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。 描くのは「命」。 はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。 絶賛の声、続々!!! 自分の輪郭を掴む、というのは青春小説の王道たるテーマと言っていい。それを著者は、線が輪郭となり世界を構成する水墨画と見事に重ね合わせてみせた。こんな方法があったのか。 青春小説と芸術小説が最高の形で融合した一冊である。強く推す。 --大矢博子(書評家) 水墨画という非言語の芸術分野を題材にした小説で、架空の登場人物が手にした人生とアートの関係性、時空をも越えたコミュニケーションにまつわる真理を、反発心や違和感など一ミリも感じることなく、深い納得を抱いて受け取ることができた。それって、当たり前のことじゃない。一流の作家だけが成し遂げることのできる、奇跡の感触がここにある。 --吉田大助(ライター) "点"は意志を持てば"線"になり、 誰かと誰かを繋ぐ いつしか"縁"となる 線は、僕を描く 新しい自分を何度でもはじめよう --金井政人(BIGMAMA) 心の中に静かな水滴が落ちて、 その波紋が何処までも残っている この先の僕を描く 一部になってくれた本です --加藤慎一(フジファブリック) 美しさに温かさに涙があふれる。いつまでも読み終わりたくない傑作。 漫画版センボク、全4巻完結!!! 漫画は『この剣が月を斬る』の堀内厚徳さん。漫画内の水墨画は砥上裕將さんによるものです!!
大ヒット映画「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の監督が贈る、書き下ろし長編小説 「なんで生まれてきちゃったんだろうって、ずっと思っていました」 高校生の時に母親に捨てられ、知り合いの家や建設現場を転々とし、詐欺で入った刑務所で30歳を迎えた山田。 出所後に海の近くの塩辛工場で働き始めた彼は、川べりに住みたいと願い、ムコリッタという妙な名前のアパートを紹介される。 そこには図々しい隣人の島田、墓石を売り歩く溝口親子、シングルマザーの大家の南など、訳ありな人々が暮らしていた。 そんな山田に、役所から一本の電話がかかってきた。 幼い頃に別れたきり一度も会っていない父親が孤独死したので、遺骨を引き取ってほしいというーー。 ずっと一人きりだった青年は、川沿いの古いアパートで、へんてこな仲間たちに出会う。 友達でも家族でもない、でも、孤独ではない。 “ひとり”が当たり前になった時代に、静かに寄り添って生き抜く人々の物語。
1160年、平治の乱の後、源頼朝は平清盛によって助命される。後に大納言・時忠が、「此一門にあらざらむ人は、皆人非人なるべし」とまで言い放ち、知行国三十余国、荘園五百ヵ所、田園その数を知らずと言われるまでに栄華を誇った平家一門の命運は、この瞬間に窮まった。 後に平氏を滅ぼすことになる頼朝を清盛はなぜ救ったのか? 平氏を滅亡に追い込んだ天才武将・源義経は数々の戦果を挙げたにもかかわらず、兄の不興を買って非業の死を遂げる。その義経が怨霊として祀られていないのはなぜなのか? 二つの謎が解けるとき、源氏と平氏の真の姿が現れる。
男として生まれた。でも、あのおねえさんみたいな、きれいな女の人になりたいなーー。蔑みの視線も、親も先生も、誰に何を言われても関係ない。「どうせなるのなら、この世にないものにおなりよ」。その言葉が、生きる糧になった。カルーセル麻紀さんのことを、いつか絶対に書きたかった、という熱い思いが物語から溢れ出る。
大阪南部のある一族に持ち上がった縁談を軸に、わがままな母を甘やかす本家の祖父母、学生運動をしていた婿養子の父、穏やかで優しい精神を病んだ叔母、因襲的な親戚の姿を、河内弁で幼女の視点から鮮やかに描き出す。三島由紀夫賞受賞作にして新潮新人賞受賞の驚くべきデビュー作。
吹雪の白い静寂のなかに消えていった、あの光景。アルプスの山とともに生きた、名もなき男の生涯。雪山で遭難したヤギ飼いとの邂逅に導かれるように、20世紀の時代の荒波にもまれながら、誰に知られるともなく生きたある男の生涯。その人生を織りなす、瞬くような忘れがたき時間が、なぜこんなにも胸に迫るのだろう。80万部を超えるベストセラー、英語圏でも絶賛! 現代オーストリア文学の名手が紡ぐ恩寵に満ちた物語。
父がある事件で逮捕され、中学二年生の悠馬(ゆうま)は、いじめられるようになった。父の無実が明らかになっても、いじめは続き、学校での居場所はない。そんな悠馬の唯一の理解者が、転校生の暁斗(あきと)だった。ある日、悠馬は暁斗から「お父さんの事件の真犯人を捕まえられるんじゃないか」と提案され、二人は事件を調べ始める。ところが、悠馬たちを謎の男たちが追い続ける。はたして悠馬は真相にたどり着けるのか!?
おおきくなる、つよく逞しく、この夜を越えてゆけ。 自分の、ひとつひとつの輪郭がぼやけて、危機感をもてないまま 今日も一日をやり過ごす。就職して恋愛結婚して、その先に何があるだろう。 地震に金融崩壊。カタストロフに満ちた社会で、丁寧な明日をうまく保てない。 ある日、夜の川のたもとで出会った少年。女友達の幼い子ども。 そして舞い込んできたルームメイト。時を重ねて、夜の時間がほどけてゆく。 黄昏日本の、みずみずしさをたたえた青春物語。 「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」の3作を収録した 新芥川賞作家の飛翔作。
夜更けの蔵前で、どくろが長い髪を曳いて舞い飛ぶという奇怪な出来事が!!さらに、小石川の寺で墓荒らしがあり、若い娘の首が盗まれていた!?命を削るようにして妖を癒やす十七娘・お光を、なるべく、怪事件に関わらせまいとする同心・和泉京之介だが…。娘陰陽師・長谷部透流の悲しく壮絶な過去とは!?そして、京之介たちの前に、最強最悪の“敵”が立ちはだかる!!怪奇な謎を追う同心と可憐な娘との恋心を絡めて好評!!大人気シリーズ第五弾の登場!!
時は文久二年。旅籠「つばくろ屋」の跡取りとして生まれた高弥は、生家を出て力試しをしたいと考えていた。母である佐久の後押しもあり、伝手を頼りに東海道品川宿の旅籠で修業を積むことになったのだが、道中、請状を失くし、道にも迷ってしまう。そしてどうにか辿り着いた修業先の「あやめ屋」は、薄汚れた活気のない宿でー美味しい料理と真心尽くしのもてなしが、人の心を変えていく。さびれたお宿の立て直し奮闘記。
過酷な冬を越すために人間が冬眠する世界での物語。 ふとした偶然からチャーリーは冬季取締官に志願する。 冬季取締官は眠らずに盗賊(ヴィラン)や冬の魔物(ウィンターフォルク)に対処する過酷な仕事だ。 無事取締官になったチャーリーは、冬眠に失敗しナイトウォーカーになった女性を別の地区まで送り届けることに。 ナイトウォーカーは普段はおとなしいが、 空腹になるとひとを襲うちょっぴり危険な存在だ。 途中で思わぬ事件に巻き込まれながらも、ようやく〈セクター12〉にたどり着いたチャーリーは、 夢の中の夏の楽園(サマートピア)で、美しいベルギッタと出逢うことになるのだった。 二度と還らぬあの夏の砂浜で。