2017年9月発売
初めてだった。これほどに、自分を認めてくれる教えは。だから、信じることに決めた。百姓たちは、苦しい日々を生き抜くためにキリシタンになった。なにかが変わるかもしれないという、かすかな希望。手作りのロザリオ。村を訪れた宣教師のミサ。ときの権力者たちも、祈ることを奨励した。時代が変わる感触がそのときは、確かにあった。しかしー。感涙の歴史巨編。戦国期から開国まで。無視されてきたキリシタン通史。
教えを棄てた。そう偽り、信念を曲げず、隠れ続けたキリシタンたち。密告の恐怖。眼前でおこなわれる残虐な処刑。なんのために、信じているのか?そう迷うこともあった。だが。九州のその村には、おびえながらも江戸時代が終わるまで決して逃げなかった者たちがいた。隠れ、そして信じ続けた者たちがいた。いままで誰も描きえなかった美しく尊い魂の記録。慟哭の隠れキリシタン秘史。
京都の呉服商・高倉屋の娘みやびは、智恵も回るし手も早い。ご寮人さんとなってからは、奥に控えて習い事に興じるよりも店に出たがる働き者で、美しいもの、新しいものが大好き。女だてらに世界を視野に、職人の技巧を駆使した織物を万博に出品しては入賞を果たし、日本が優れた芸術の国であることを世界に知らしめた。皇室御用達百貨店となった高倉屋の繁栄の礎を築いた女性の軌跡を描く大河小説。
結婚という名の壮大な悲喜劇を描くオバマ前大統領も絶賛の全米話題作! 電撃的な出会いで結婚した、売れない俳優ロットと美貌のマチルド。純真な妻に支えられた夫はやがて脚本家として成功し、それは幸せに満ちた人生のはずだったーー妻のいまわしき秘密を知るまでは。家族の愛は夫婦の噓に勝てるのか? 巧みなプロットと古典劇の文学性を併せ持ち、全米図書賞候補にもなった圧巻の大河恋愛小説!
ベストセラー「わりなき恋」に次ぐ、愛を求めさまよう男女の物語。 親子の葛藤、女の友情、そして運命の出逢い。5人の男女のさまざまな愛のかたちを、パリと京都を舞台に描き出す大河恋愛ロマンです。 表題作「愛のかたち」に加え、「南の島から来た男」を収録。いずれも、悲痛な運命に抗って力強く生きる登場人物の姿が、静かな感動を呼びます。 プラヴェートセスナでの飛行、イスラエルやイランなどの紛争地取材、フランスの上流社会の社交のやりとり……。岸惠子さんの豊かな人生経験なくして生まれえなかった豊穣な愛の物語集。読むと人生が輝き出す岸さんの人生讃歌です。 ☆「愛のかたち」 「愛しているんだ、ただ今はこの愛に埋没したくない」化粧品会社のパリ駐在員、渚詩子は、フランスの監獄から少年を脱獄させたいという奇妙な弁護士、ダニエルと知り合う。この出逢いをきっかけに、恋愛に疎かった詩子は愛の不思議に身をゆだねる。 ☆「南の島から来た男」 「わたしは楽園向きの女ではないと思う」新聞社のパリ支社で働く藤堂華子は、モーリシャス島出身で一文なしの青年ドムと、パリの屋根裏部屋で暮らすようになる。しかし、ドムにはある秘密があった。華子は愛とジャーナリストの矜持の間で揺れる
『結晶世界』『ハイ・ライズ』などの傑作群で、叙事的な文体で20世紀SFに独自の境地を拓いた鬼才の全短編を五巻に集成。第四巻には自伝的要素が色濃く投影された本邦初訳作「Dead Time」や発表時に多大な衝撃をもたらした濃縮小説「下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件」など21篇を収録。
拓未に告白されたとき、菜月の人生三度目のタイムリープが始まった。この状態に陥ると、菜月は同じ一時間を五回繰り返すことになる。つまり菜月は、このあと拓未に五回告白されるはずだった。しかし一回目、告白の場所に向かおうとした菜月の目の前で、拓未は屋上から墜死する。なぜ!? チャンスはあと四回、それまでに彼の死を止める方法を、絶対に見つけなければ! 女子高生が文化祭中の校舎を駆け巡る、鮮やかな学園ミステリ!
クリスマスが迫るウィーンで、オペラ界の歌姫を看取った人々。チャーター機でロンドンへの帰途に着くが、悪天候でオーストリアの雪山に不時着してしまう。彼らが避難したのは小さな山村ーーだが雪で外部とは隔絶していた。小体なホテルに落ち着いたものの、歌姫の遺産をめぐって緊張感は増すばかり。とうとう遺書が読み上げられた直後に、事件が起きてーー。修道士カドフェル・シリーズの巨匠による、本邦初訳の傑作本格ミステリ!
「ついに本物の任務だ!」英雄スカンドゥラノンの息子にして、〈銀鷲獅子団〉のタドリスは歓声をあげた。初めての監視なしの任務。ホワイトグリフォンから遠く離れた歩哨地で、三ヶ月の任務だ。タドリスと人間の相棒〈銀の刃〉は、心配する両親を尻目に大喜びで出発した。ちょっとした冒険行のはずだった。〈銀の刃〉と荷物を入れた籠を掴んで跳んでいたタドリスが、コントロールを失い墜落するまでは……。〈魔法戦争〉三部作完結。
〈銀鷲獅子団〉司令部は大騒ぎになっていた。予定を過ぎているのに、タドリスと〈銀の刃〉が任務地に着いていないのだ。遠話装置での連絡もない。すぐにスカンドゥラノン率いる捜索隊が二人の消えた地点に向かう。一方森に墜落したタドリスと〈銀の刃〉は、大怪我を負いながら見えない追跡者から逃げていた。誰が何の目的でつけ狙うのか。鷲獅子と人間、体力と知力の全てを使い、姿なき敵と戦う。〈ヴァルデマール年代記〉外伝完結。
豊饒な物語世界を紡ぐ作家・田中芳樹。『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』といった傑作に結実する、原初の煌めきを宿した作品群を発表年代別に全2巻に集成。第1巻は、第3回幻影城新人賞を受賞して作家としての記念すべき出発点となった表題作をはじめ、小惑星航路を行く航宙士たちの人間模様が交錯する詩情豊かな佳篇「流星航路」など“幻影城”に発表された9篇を収める。
稀世の物語作家・田中芳樹の輝かしい軌跡を辿る短篇集成。第2巻は、人知を超える能力を宿した青年・冬木涼平が自らの運命に翻弄される姿を描き『創竜伝』の原点となった三部作を劈頭に、星間戦争のさなか終わりなき戦闘に倦んでいた青年将校が死の影を纏う謎めいた少女と邂逅する「戦場の夜想曲」など11篇を収録。著者の魅力を再発見できる貴重な初期作品群を全2巻で贈る。
戦後最初の長編SF作家として知られた著者の、高名にして入手困難な短編集二冊を合冊し、単行本初収録の連作「浮間の桜」と短編「笑わぬ目」を加えた。巻末エッセイ=山田正紀/『縹渺譚』あとがき=今日泊亜蘭/解説=日下三蔵
マギーは20年前、道端に捨てられているところを保護された。以来、里親のもとを転々とし、不遇な子供時代を過ごして成長した。ある夜、マギーが勤務先のコーヒーショップで床磨きをしていると、護衛たちを大勢引き連れた尊大な男性がいきなり入ってきて、コンスタンティン国王レザだと名乗り、マギーを鋭く見つめた。いったい何の騒ぎ?驚き怯える彼女にレザが厳かに口を開いた。マギーはじつは彼の隣国の、暗殺された国王夫妻の娘だというのだ。そして彼女を腕にかき抱くと、蠱惑的な笑みを浮かべ宣告した。「君は生まれたときに僕と婚約した。それが君の運命だ」
「どういうこと、レオ?本気のはずがないわよね」サミーはレオが差し出した婚約指輪を見て、そうきいた。彼はプロポーズしているの?よく知りもしない、隣人の私に。レオは世界的企業を経営する億万長者。私は地味な小学校教師。いぶかるサミーに、レオは途方もない偽りの婚約話を持ちかけた。亡き弟の娘の親権を取るために、社会的信用が欲しいのだと。代わりに、彼女の病弱な母が抱える住宅ローンを全て支払うと。そして、本物の恋人には絶対になりえない、君が適任だと…。密かに憧れたこともある人の残酷な申し出に、サミーは震えた。
愛を信じない偽りの夫を、 まさか愛してしまうなんて……。 なんてすてきな人なの……。仕事で異国に赴いたエマは、 仕事相手の孫だというニコライに一目で心を奪われた。 彼はニューヨークに住む有名な大富豪だが、 大切な祖母のため、20年ぶりに故国に帰ってきたのだという。 彼の圧倒的な魅力の虜となったエマは純潔を捧げてしまうが、 翌朝、残酷な現実に打ちのめされる。名刺を残し、彼は消えていた。 2カ月後、妊娠したエマはニコライを訪ねて事実を告げるが、 彼から放たれた言葉はあまりに冷たいものだった。 「この困った状況の解決には結婚しかない。つまり経済的援助だ」 話題のレイチェル・トーマスが今回挑むのは、悲しい過去を抱えたヒロインとヒーローの愛なき結婚の物語。母に捨てられ、幼い妹を支えながら懸命に生きてきたヒロインが、小さな命を守るためだけの結婚を通して、真の愛に目覚めていく様子が丁寧に描かれます。
私はただの繭。赤ちゃんを産んだら、 からっぽになって去るだけ……。 天涯孤独のアリナのお腹には今、小さな命がすくすく育っている。 でも、その子と彼女に血のつながりはない。 度重なる流産の末とうとう子宝に恵まれなかった友人夫妻のために 代理母を買って出たのだが、不幸な事故で夫妻はこの世を去ったのだ。 悲しみのなか、アリナは亡き友の兄で大富豪のイーサンを訪ね、 お腹の子の保護者になってほしいと頼む。 赤ちゃんには、本当の親族に愛され幸せになってもらいたいから……。 だが、イーサンの答えはアリナの予想をはるかに超えていたーー この代理母契約のことを知る者が他にいないとわかるや、彼は言った! 「だったら、この子供は僕ら二人の子供にしよう」 イーサンが提案しているのは便宜上の結婚。そこに愛はなく、永遠に続くわけでもない。けれども、一緒に過ごすうちにどんどん彼に惹かれていく自分を止めることができなくて、アリナはその切ない愛に苦悩して……。孤独に生きてきたシンデレラヒロインの物語!
イタリア公爵の跡継ぎヴィンチェンツォと公爵家の使用人の娘ジェンマ。身分違いの恋とは知りながら将来を誓い合った二人だったが、ある夜突然、ヴィンチェンツォはさよならも言わずに姿を消した。息子の失踪に怒り狂った父公爵に母娘ともども城から追い出され、ジェンマは愛しの人と住む場所を一度に失った悲しみに苛まれた。10年後、公爵が他界し、城がさる実業家に買収されると知り、過去にけじめをつけるために、彼女はあえて城の求人に応募する。すると驚くべきことに、実業家の正体は…ヴィンチェンツォだった!彼の銀の瞳に再び心を奪われかけた瞬間、ジェンマは思い出したー母から繰り返し教えられた、愛は階級差を超えられないということを。