2010年11月発売
我と我が嘘に疲れ果てた作家が誰にも見せないと決めて書いた本当のことだけを綴った日記。僕は作家だ。だが執筆中の小説はまったく進まない。たまには本当のことを書きたい。これはフィクションに疲れたマイナー作家の、ささやかな休暇としての日記だ。誰にも見せないのだから嘘は書かない。そういう意味で、僕はこの日記を真実真正日記と名づけよう。虚と実のあわいを絶妙に描き出す慟哭の記録。(講談社文庫) 我と我が嘘に疲れ果てた作家が誰にも見せないと決めて書いた本当のことだけを綴った日記 僕は作家だ。だが執筆中の小説はまったく進まない。たまには本当のことを書きたい。これはフィクションに疲れたマイナー作家の、ささやかな休暇としての日記だ。誰にも見せないのだから嘘は書かない。そういう意味で、僕はこの日記を真実真正日記と名づけよう。虚と実のあわいを絶妙に描き出す慟哭の記録。
遊女屋で幸せの意味を説く紅鶴か、手習い所を開き自立するお夏か。身の振り方も一緒になる女も定まらぬ兵六だが、両替屋の娘が若い奉公人と駆け落ちした始末を頼まれる。剣術だけではもはや生きていけぬ世に、武士の誇りは捨て去れるのか?どうする兵六。人情長屋シリーズ、大団円へ。
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。新訳決定版。
女優、OL、キャバクラ嬢、資産家令嬢ー年齢も職業も異なる四人が耽溺する、美容整形の世界。次第に彼女たちは「触れてはいけない何か」に近づいてゆき…。女性の欲望を極限まで描く、美と恐怖の異色作。
十六、七世紀スペインの片田舎で、意気軒昴たるドン・キホーテが「冒険」を演じているとき、そこには、実は何ひとつ非日常的なことは起こっていない。彼の狂気が、けだるく弛緩した田舎の現実を勇壮な「現実」に変え、目覚ましい「冒険」を現出させる。
ひとかけらのマドレーヌを口にしたとたん全身につたわる歓びの戦慄ー記憶の水中花が開き浮かびあがる、サンザシの香り、鐘の音、コンブレーでの幼い日々。重層する世界の奥へいざなう、精確清新な訳文。プルーストが目にした当時の図版を多数収録。
狂った時代だったけれど、私たちにはジャズがあったーー 圧政下のチェコで歌いあげられた二つの伝説「エメケの伝説」「バスサクソフォン」は、ナチスもソ連も憎悪した音楽・ジャズにのせて、満ち満ちる閉塞感のなかで、生がはかなくもきらめく一瞬をとらえる。 ジャズに憑かれた作者の回顧エッセイ「レッド・ミュージック」併録。 レッド・ミュージック エメケの伝説 バスサクソフォン 訳者あとがき(石川達夫)
大量のたんぱく質が尿に出ているのに、腎機能にはまったく異常がないーー。▼美人医師・若松みなみの検査を受けた三流大学の学生・真柴徹は、以前に軽い気持ちで参加した治験のバイトに疑いを抱いた。▼一緒に治験を受けた火野美紀とともに、真相を探り始める真柴。だが、彼女が突然行方不明になってしまう。美紀を救うべく、単身敵地に乗り込んだ真柴は、恐るべき計画の存在に気づいたのだが……。▼医療ミステリー最新作。
諏訪湖で漁業を営む純朴な青年・田所修一は、下諏訪にできた近代的なカメラ工場と、そこで働く娘たちに憧れを抱いている。素人作家の大島十之助は、小説「愛の疾走」を執筆するために、そんな田所と工場で働く正木美代に恋愛させようと企むが、夫の小説道楽に反対している大島の妻が、策略を田所に打ち明けてしまう。仕掛けられた恋愛の行方は…。劇中劇の巧みさが光る、三島渾身のエンターテインメント小説。1963年初刊作品。
明治15年。年々文明開化の華やかさを増す東京を行く1台の古ぼけた辻馬車があった。それを駆るは元会津同心の干潟干兵衛。孫娘のお雛を馭者台の横に乗せて走る姿が話題を呼び、日々さまざまな人物が去来していく。ある日2人は車会党の恨みを買い、壮士らに取り囲まれてしまう。危機に晒されたお雛が「父!」と助けを叫ぶと、なんと無人の辻馬車が音もなく動き出した!そして現れたのは…?山風明治ロマネスクの最高傑作。
危機に陥ったとき、お雛が呼ぶと現れる干兵衛の息子・蔵太郎と妻・お宵の幽霊。2人に助けられながら、干兵衛はいつしか自由党壮士と明治政府の暗闘に巻き込まれていた。お雛との平穏な生活を望みつつも、会津藩士だった頃の自分を自由党壮士の姿に重ねて心揺れる干兵衛。そんな中“赤い盟約書”を巡って事態は急展開する!最後に干兵衛が選び取る運命とは…。激動する時代の波に翻弄される人々の悲喜を謳い上げた大傑作。
逃走するロシア人が抱えていた一枚の絵。大塚は、それがロシアの教会で百年にわたり封印されていたイコンであることを突き止める。イコンに描かれた聖人カシアンにまつわる伝説とは? 渾身の黙示録的サスペンス!
京子はビストロを経営する美しきギャルソン。だが幼いころ義父から酷い性的虐待を受けた彼女の中には、レズビアンでサディストのナオミや、淫乱で奔放やユカリなど、様々な人格が潜んでいた。さらに京子の周りでは、昔の恋人をはじめ何人もが謎の死をとげていて!?(彼らを殺したのはもしかしてーわたしも知らない、もう1人のわたし!?)そして再び京子に愛する男が現れたとき、彼女の内の邪悪な殺人鬼が蠢き出す…。
側室として首里城に返り咲いた真鶴に懐妊の兆し!? 一人二役の二重生活も、いよいよ限界か。否応なく押し寄せる列強の足音と、近代化の波。王国滅亡へのカウントダウンか……。琉球ロマン、いよいよクライマックス
柳広司×夏目漱石 傑作パスティーシュ!(文体模写) 探偵小説好きの僕はひょんなことから先生の家に書生として住み込むことになった。 先生は癇癪持ちで、世間知らず。書生の扱いときたら猫以下だ。 家には先生以上の“超変人”が集まり、次々に奇妙奇天烈な事件が舞い込んでくる。 後始末をするのは、なぜかいつも僕の仕事だ。 先生曰く、 「だって君、書生だろ?」。 『吾輩は猫である』の物語世界がミステリーとしてよみがえる。 ユーモアあふれる“日常の謎”連作集! <解説・田中芳樹>
松山から東京に戻った3年後、山嵐と再会した坊っちゃん。山嵐は「教頭の赤シャツが自殺した」といい、坊っちゃんはその自殺の真相を探るために再び松山を訪れ……傑作パスティーシュ登場!