2006年発売
借金返済のためにボーイズキャバクラでバイト中の大学生・竜弥のもとに突然、現れた義兄、英彦。幼き日、竜弥に憧れと恐れと…生まれて初めて欲情を抱かせた怜悧な義兄との8年ぶりの再会…だが、弁護士の英彦は、そんな竜弥の想いも知らず、常連客である人妻との不倫を詰る。身の潔白を証明すべく、竜弥は英彦の前に己の欲望のすべてを曝け出すことに…。
実業家の父のお供で砂漠の街、ドバイを訪れた大学生の森は、大富豪の王族兄弟、キファーフとシャーヒーンの二人から同時に熱烈なラブコールを送られ…。優しく気品に溢れる兄キファーフに惹かれつつも、野性的な異端児、弟シャーヒーンの「おまえは俺を必ず好きになる」という一言が忘れられない森。ある晩、シャーヒーンに強引に連れさられてしまった森は…。月の砂漠のエロマンティック冒険譚。
他人の欲望を糧に暮らすネットアイドル…復讐のために死体を切り刻む女子中学生…過去を百円硬貨で清算するビジネスマン…そして静かに稼働を始める処刑システム…。謎の暗殺者・小田切明が仕掛ける終わりのない残虐遊戯。
伊月潤一、26歳。住所も定まらず定職もない、気まぐれで調子のいい男。女たちを魅了してやまない不良。寄る辺ない日常に埋れていた女たちの人生は、潤一に会って、束の間、輝きを取り戻す。だが、潤一は、一人の女のそばには決してとどまらず、ふらりと去っていく。小さな波紋だけを残して…。漂うように生きる潤一と14歳から62歳までの9人の女性。刹那の愛を繊細に描いた連作短篇集。
芝三丁目に「よろづ献残 大和屋」という看板を出す箕之助は、女房の志江、街道筋の用心棒・日向寅次郎、大工の留吉などと力を合わせて町の浜辺で起こる事件の数々を密かに解決してきた。折りしも初鰹の季節、一匹三両という高値でそれを競り落とした料理茶屋・浜幸屋の話題で町は持ちきりだった。しかし、その店の倅・幸太郎によからぬ噂が。旗本屋敷で行なわれる賭博にはまり、果ては押し込みまで働いているというのだ。箕之助たちは悪徳旗本を秘密裏に成敗し、浜幸屋を危機から救うために立ち上がる。
作家の彦坂和彦は、太平天国の乱をテーマにした作品を執筆するため中国へ取材旅行に出かけた。上海で新彊省出身の若い女性と知り合い、一緒に南京へ行くことになる。彼女は、北京政府からの分離独立を求めるテロリスト・グループの活動家だった。共感した彦坂は、彼女たちの計画に協力する約束をする。なんとその計画とは、2008年の北京オリンピックを中止させるべくメインスタジアムを爆破する、というものだった。公安の追跡を逃れながら、いよいよ実行の日が近づく-。
ソ連の老作家が書いた痛烈な体制批判の小説。その入手を命じられた元新聞記者・鷹野は、本人に会い原稿を運び出すことに成功する。出版された作品は、全世界でベストセラーとなり、ソ連は窮地に立った。ところが、その裏には驚くべき陰謀が…。直木賞受賞の表題作など全5篇を収めた、初期の代表的傑作集。
大手広告代理店・東邦広告に勤める辰村祐介には、明子、勝哉という2人の幼馴染がいた。この3人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。その過去が25年の月日を経た今、何者かによって察知された…。緊迫した18億円の広告コンペの内幕を主軸に展開するビジネス・ハードボイルドの決定版ここに登場。
新規クライアントの広告コンペに向け、辰村や戸塚らは全力を傾注する。そんな中、3通目の脅迫状が明子の夫の許に届いた。そして勝哉らしき人物が上野近辺にいることを突き止めた辰村は、ついに行動を起こす!広告業界の熾烈な競争と、男たちの矜持を描くビジネス・ハードボイルドの結末は。
死体は蝋燭と花で装飾されていた。事件を追う異常犯罪専従の刑事カーソンは、30年前に死んだ大量殺人犯の絵画が鍵だと知る。病的な絵画の断片を送りつけられた者たちが次々に殺され、失踪していたのだ。殺人鬼ゆかりの品を集めるコレクターの世界に潜入、複雑怪奇な事件の全容に迫ってゆくカーソン。彼を襲う衝撃の真相とは。
秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。失われつつある日本の風土を克明に描いて、直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した感動巨編。
イタリア人実業家の亡夫から相続した、小島の館に隠棲する日本人女性=レニエール夫人。彼女から鑑定の依頼を受けヴェネツィアを訪れた神代教授と京介だったが、跡を追った深春、蒼と合流そうそう島の売却を巡るトラブルに巻き込まれる。そして不可解な殺人事件が!文庫版特典「蒼のヴェネツィア案内」も収録。
犀川助教授と西之園萌絵。四季と再びの邂逅を試みる。 四季が残したメッセージは、何を示す? 妃真加(ひまか)島で再び起きた殺人事件。その後、姿を消した四季を人は様々に噂した。現場に居合わせた西之園萌絵は、不在の四季の存在を、意識せずにはいられなかった……。犀川助教授が読み解いたメッセージに導かれ、2人は今一度、彼女との接触を試みる。四季の知られざる一面を鮮やかに描く、感動の第3弾。 プロローグ 第1章 漸近し集束した曲線 第2章 発散の手前の極解 第3章 収斂の末のゼロ・デバイド 第4章 時間変化率の不連続性 第5章 祈りと願いの外積 エピローグ 『四季 秋』を読んで