2006年発売
「わたしを助けて」。休暇で沖縄へ来た脚本家の前に、かつての恋人が現われる。彼女は「恋愛ドラマの教祖」と呼ばれる売れっ子脚本家となっていた。土曜ドラマのためのシナリオを二人で作り上げていく、息苦しいような四日間の後に…。じんわりとせつない恋の短篇集。他に遺作となった次回作プロットを収録。
バイト先の解体現場に人生のリアリティを見出した大学生のイズミ。巨漢マッチョ坊主カンや、左官職人崩れで女性に対し赤面症の美青年クドウ、リストラサラリーマンのハカセなどと働く「マルショウ解体」の財政は逼迫し、深刻な問題が…。過酷な状況における人間の力強さをユーモラスに描いた傑作青春小説。
そこにあるのは胸躍る冒険物語、それとも恐怖に彩られた悪夢か。めくるめく夢と幻想の迷宮へようこそ…本格ミステリの俊英の初期から現在に至る傑作十編を精選!特別エッセイも併録したファン待望の非ミステリ・ノンシリーズの幻想怪奇作品集。
橿原市近郊の伝建地区・今井町の「今井まちなみ交流センター・華甍」につとめる青垣万穂は、奇妙な手紙を受け取る。新聞の活字を切り張りしたそれには、意味不明の文章がつづられていた。偶然町へ調査に来ていた伝建地区調査員の竹之内春彦に相談したところ、彼は簡単に隠されていた意味を読み解いた。それによると、今井町の旧家である青菅家への招待状だという。半信半疑で青菅家へ出かけた万穂たちだが、そこで彼らが見つけたものは、周囲を金屏風とクチナシの花に飾られた女性の全裸死体だった-。
ドナルド・キーンによって英訳され、さらにラジオドラマとして英国BBC放送で全世界に向けて発信された小田実の「玉砕」は、9・11事件をはじめとする自爆攻撃の出現とともに世界的に注目を集めるに至っている。原作とラジオドラマ・シナリオを含めて、日米英の作家・文学者の発言を収録し、普遍的テーマとしての「玉砕」の意味を問う。 1 全体の序文として 私の「玉砕」へのかかわり,思い……小田 実 2 玉 砕/Gyokusai 玉 砕……小田 実 ラジオ・ドラマGyokusai--玉 砕……ティナ・ペプラー〔金井和子訳〕 3 「玉砕」によせて 英訳版『玉砕』のための「まえがき」……ドナルド・キーン〔金井和子訳〕 崇高にしておぞましき戦争……ドナルド・キーン/小田 実 変革すべき世界はまだまだ若い……ティナ・ペプラー〔金井和子訳〕 あとがき……小田 実 初出一覧
少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって発見される。身勝手な欲望が産む犯行を殺人で抑止しようとする予告殺人。狂気の劇場型犯罪が日本中を巻き込んだー。絶対に捕まらないー。運命が導いた、哀しすぎる「完全犯罪」。『天使のナイフ』の薬丸岳が描く、欲望の闇の果て。江戸川乱歩賞受賞第一作。
確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達ー。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。
東京郊外のビル地下にあるバー“ざばずば”に集う男女5人。脳溢血で急逝した愛すべき酔いどれ作家・アール柱野を偲び、彼の馴染みの店で一晩語り明かそうという趣旨の会合だった。だが、突如身元不明の死体が目の前に転がり出たところから、5人に疑心暗鬼が生じる。殺人犯がこの中にいる!?翌朝まで鍵をかけられ外に出られぬ密室の中、緊張感は高まっていく。しかし5人には、それぞれ、出るに出られぬ「理由」があったのだ…。ミステリ界期待の大型新人が放つ傑作長編。
悪名高い豪商だけを狙い、誰も傷つけぬ。盗むのは五百両以内。七福神の面を着けた七人の盗賊は義賊として庶民に歓迎された。風烈廻り与力青柳剣一郎は、御奉行から七福神捕縛の厳命を受けた。そんな折、辻斬りに殺された男が一味の一人と判明。さらに七福神が次々と消されていく。誰が何の目的で?青痣与力の人情裁きの剣が冴える、人気シリーズ第五弾。
父を殺されたばかりの可愛い女子高生星泉は、組員四人のおんぼろやくざ目高組の組長を襲名するはめになった。襲名早々、組の事務所に機関銃が撃ちこまれ、早くも波乱万丈の幕開けがーー。
18歳、高校三年生になった星泉。高校卒業を間近に控え、できるだけ普通の女子高生として生活したいと願っているが、周囲がそれを許してくれない。星泉の名をかたる「偽者」が現れたり、強引な地上げに苦しむ町から「町を救ってほしい」と頼まれたり…。スーパーヒロイン・星泉の成長と、セーラー服からの「卒業」を描く、大ベストセラー『セーラー服と機関銃』の続編。
第 四 部(続き) 第 三 篇 コラム36 パルチザン 第 四 篇 エピローグ 第 一 篇 コラム37 神聖同盟 コラム38 デカブリスト 第 二 篇 〈付録〉『戦争と平和』という本について数言 『戦争と平和』Q&A アルバム トルストイの生涯 『戦争と平和』年表
ついに日米開戦。マドリードで日系ペルー人として諜報活動を続ける北都昭平とイギリス秘密情報部のヴァジニアとの関係は、困難なものとなる。そんな二人の前に一人の日系米国人女性があわられる。第二次大戦下のスペインを舞台に白熱する情報戦を描いた、『イベリアの雷鳴』『遠ざかる祖国』に続く長編第三弾。
由良由良由良。頭から離れない。あの青白い顔が。あの硝子玉の目玉の鳥の死骸の群れがー。伯爵家での事件を解明できぬまま、警察を辞めた伊庭銀四郎。再び疼きだした心の傷を癒すため、伊庭は京極堂に赴く。一方、「鳥の城」では関口が花嫁・薫子を護っていた。だが、僅かな時間、薫子は一人になったー。
「アルキメデス」という不可解な言葉だけを残して、女子高生・美雪は絶命。さらに、クラスメートが教室で毒殺未遂に倒れ、行方不明者も出て、学内は騒然! 大人たちも巻き込んだ、ミステリアスな事件の真相は? 1970年代の学園を舞台に、若者の友情と反抗を描く、伝説の青春ミステリー。江戸川乱歩賞受賞作。--「この小説との出会いが、本嫌いだったバカ高校生の運命を変えた」(東野圭吾)