2001年発売
物語は2008年のアメリカ。世界有数のバイオテクノロジー会社とFBIの女性長官は〈良心〉というプロジェクトで、男性のみが有する犯罪誘発遺伝子を破壊するため、特殊なウイルスを開発しようとする。それにより、暴力犯罪を劇的に減少させようというのだ。しかしFBI特別捜査官デッカーは、そのプロジェクトの被験者を密かにDNA鑑定し、遺伝子が異様な形で改変されていることを知る。やがて、ウイルスに感染した男性たちが次々と変死していく。事件の裏では「クライム・ゼロ」という恐るべきシナリオが進行していたのだ。悪は根絶されるべきなのか?ヒトゲノムがもたらすユートピアの悪夢を描いた傑作冒険ミステリー。
アルストーン公爵は、伯爵夫人デイジーとの情事に倦怠を感じていた。別邸でのパーティーでも刺激を求め趣向はエスカレートする一方である。ある夜、レディは仕立てられるかを巡り友人と大金を賭けてしまう。そして世間知らずのモデルとして修道院の付属学校を卒業した姪を迎える。ロレナは、牧師だった弟の一人娘で三年間で美しく成長していた。その上教養も高く、社交仲間にも臆さず次第に人気者になっていく。ロレナの清純さに打たれた公爵はデイジーに別れ話を切りだした。だが、逆上した彼女に銃を向けられる。
神々の島、ハワイイに魅せられた人々が夢をつむいだ一軒の屋敷。そこに交差した青春を、ほろにがく回想する入魂の掌編小説。海の写真家、芝田満之の至福の映像とが織りなすファンタジーの世界。
公園の隅に置かれた男の死体をめぐる話「帰郷」、慰安婦ゴゼイと徴兵を拒否した昭正の切ない愛に生者と死者の声がかさなる「群蝶の木」、日常生活を反転させる不安をえがく「剥離」「署名」など、『魂込め』で川端賞・木山賞を受賞した著者があらたに到達した四つの小世界。
「死ぬなら戦場で死にたい」と、函館五稜郭で討幕軍に討たれた土方歳三。幕府の崩壊と共に消えた新選組の鬼副長として活躍した彼は、局長・近藤勇が官軍に投降した後も、新選組の指揮をとり、最後の最後まで戦い続けたー。頼みとする会津も敗れ、仙台で榎本武揚軍に加わる。そして、函館での凄絶な闘死。冷徹無比と言われた男の美しい生きざまとその魅力を浮き彫りにする力篇。
遠間憲太郎は長年連れ添った妻とも離婚し、五十歳になりさらに満たされぬ人生への思いを募らせていた。富樫重蔵は大不況に悪戦苦闘する経営者だが、愛人に灯油を浴びせられるという事件を発端に、それを助けた憲太郎と親友の契りを結ぶ。真摯に生きてきたつもりのふたりだが…。人間の使命とは?答えを求めるふたりが始めた鮮やかな大冒険。
憲太郎が恋心を寄せる篠原貴志子。両親に捨てられた五歳の圭輔。行き場のない思いを抱えた人間たちが、不思議な縁で憲太郎と結ばれてゆく。しだいにこの国への怒りと絶望を深める憲太郎は、富樫と壮大な人生再生への旅を企てる。すべてを捨て、やり直すに価する新たな人生はみつかるのか?ひとりひとりの人生に熱く応える感動の大長篇。
夏目漱石の「吾輩は猫である」は、飼い猫の目を通しての人間像を描いた文化論的小説だったが、この作品は、花子という飼い猫を中心としたちいさな猫社会を反射鏡として、現代の人間社会をするどく映している。
お前は俺のものだ。持ち物の分際で逆らうな-女性が羨むほどの美貌を持ったショーンは、法律事務所のオーナーで同居人でもあるレナードのもの。彼を所有物として扱うレナードは、何事にも本気にならないプレイボーイ。彼が行きずりの相手・四季という少年を同居させ、ショーンの目の前で抱くようになったことで、2人の関係は微妙に変わっていく。レナードの横暴さに反発しながらも彼の魅力に惹かれていく四季と、レナードの真意が分からず翻弄されるショーン。それぞれの想いの行方は…アダルトハードなラヴロマンス。
「堕天使、占星術、魔術、騙し絵、迷宮、愛死、弦楽」各部屋に悪魔的な意匠をちりばめた館で奏でられる殺人組曲。屋根裏部屋から世界は覗かれ、倫理の欠片もない探偵や殺人鬼が暗躍する。館を支配する昏い旋律が止むとき、世界を揺るがす真相が明らかに。鬼才が技巧の限りをつくして描きあげた騙し絵ミステリー。
東京駅で射殺されたミス岡山の女子大生、楠ゆかり。彼女は半年前、竹久夢二が描いたと思われる幻のスケッチブックを発見、公表し、注目を集めたことがあった。この発見と事件にはどんな関係が?狂おしいまでに夢二を愛する人たちによって綾なされる複雑な人間模様。ラストには、全ての人への永遠の問が待つ。