1995年9月発売
深夜。丘陵地帯を車で流していたデッカーは、不審な動きに目をとめた。甲高い泣き声に導かれ、彼がいきついたのは、深閑とした新興団地でひとりシーソーに乗って遊ぶ、幼子の姿。性別は女、身につけたパジャマは血まみれだったが、虐待を受けた形跡はなく、翌日行なわれた聞き込みでも、身元を知る者は現われない。これはいったい…。重厚な物語が展開する、出色の第三弾。
発見された団地でないとしたら、赤ん坊はどこに住んでいたのか。試行錯誤をへて、デッカーたちはついに一軒の家に到達したが、そこに待ち受けていたのは凄惨な四重殺人の現場だった。粘り強い捜査活動の果てに焙りだされた歪んだ心の形とは…。奥深い謎を追いながらも、愛するリナの身を気づかう刑事デッカー。エモーショナルかつ猥雑に語られる、忘れがたいシリーズ第三弾。
夢も見ない眠りから覚めたとき、彼は病院の寝台に横たわり、すべての記憶を喪っていた。自分がウィリアム・モンクという名の刑事だと知らされた彼は、病状を隠して職場に復帰したが、そこで割りふられたのは、万全の態勢で臨んでさえ解決困難と思わせる難解な殺人事件だった…。十九世紀ロンドンに孤立無援の警部が展開する、自分探しと真相究明の旅。時代ミステリの決定版。
日本を遠く離れて二十年…。異国の地アメリカに暮らす姉妹を結ぶ電話線を、英語混じりの笑いとため息が今日も行き来する。漱石や一葉の描いた日本に恋焦がれる妹。アメリカ人になりきれない姉。ふたつの国ふたつの言語に引き裂かれた彼女たちの「特別な一日」が始まる。
離婚歴のある39歳の男が、27歳の不思議な女と出会った。翻弄される濃密な時間。謎が音も立てずに近づいてくる。東京の暗部を照らしだす、スリリングで透明な恋愛小説。
春希は、脚本家として忙しくなり、とりわけ、涼子と組む仕事は次々と評判をとっていく。仕事と家庭の両立にも一生懸命。そんなある日、夫の高志にガンが宣告される…。激動の時代を生きぬいた春希、ついに完結。
女は城壁の中の「女の国」で政治をつかさどり、男は外の「戦士の国」で軍隊を組織するー“大変動”の後の荒廃した世界で、人々は男女に分かれた社会を作り、微妙なバランスを保って生きのびていた。「女の国」に暮らす少女スタヴィア。ひとりの少年戦士と恋に落ちた彼女が数奇なる恋路のはてに見出した、この国の驚くべき秘密とは。気鋭の女性作家テッパーが、未来社会に生きる多感な少女の成長を情緒豊かに描く話題作。
過去二十年間に急速に発展を遂げた惑星パトリアは、いまや新たな宇宙連邦加盟国の最有力候補と目されている。ところが宇宙連邦と敵対するクリンゴン帝国もこの星に目をつけ、その傘下におさめようと魔手をのばしてきた。クリンゴンの機先を制して宇宙連邦に加盟させるべく、カーク艦長率いる航宙艦〈エンタープライズ〉は惑星パトリアへ向かうが、現地では政府と反体制テロリストたちが激しい内紛を繰り広げていた…。
ダレシア大陸各地の英雄譚に登場する英雄たちがこの世によみがえり、民を扇動して反乱を起こしたーそれがタムール帝国の騒乱の真相だった。時を同じくして、イオシア大陸でも同様の事件が起きていた。さらにダレシアでは、トロールや吸血鬼、狼男までが徘徊しているという。この一連の騒乱にはどうやら神がからんでいるらしい。スパーホークはその神の正体をつきとめるべく、タムールの帝都マセリオンをめざしたが…。
高級宝石店の会長ルイスが散歩中に何者かに刺し殺された。会長に300万ドルの保険金がかけられていたため派遣された調査員ドーラは、会長の家族にまつわる怪しげな人々と出会う。会長未亡人にとりいる新興宗教の神父。ルイスの息子クレイトン社長の愛人である美女ヘレン。しかもヘレンの兄も会長の娘の心を虜にしていた…ニューヨークの富豪一家をめぐる愛と欲と殺人がおりなすサスペンス。
ホテルのエレベータホールで、マリアンはわが目を疑った。壁一面に飛び散った血痕。まわりに巡らされた警察の立入禁止テープ-。しかしマリアンが驚いたのは、そこが殺人現場だったからではない。その状況が、昨夜パソコンの画面上で見た「殺人現場」と寸分たがわず同じだったからだ。壁の形から、血痕の大きさや位置までもが…。マリアンが加入しているパソコン通信ネットワーク「インサムニメイニア」では、仮想現実の街でありとあらゆる娯楽を享受できる。そのひとつが「殺人現場」だ。ここでは毎週、アニメーションで殺人が「上演」されている。しかし、それとまったく同じ殺人が、現実の世界で起こることなど、ありえるのだろうか。仮想現実世界の殺人者が、現実の世界に侵入してきたとでもいうのか。最新のハイテク情報を駆使して、コンピュータ・ネットワーク時代の恐怖を描きだす、驚愕のサイコ・サスペンス。
バーテンダーからサンフランシスコの地方検事補に復帰したディズマス・ハーディは、捕獲されてきた鮫の腹から食いちぎられた手首が出てきたのを目にする。ヒスイの指輪をはめた男の手だった。その後、海岸に手首のない男の死体が打ち上げられ、身元はシリコン・ヴァレーの実業家で大富豪のオーエン・ナッシュと判明。2発の銃弾を陰部の上と胸に浴びていた。ハーディは売春、盗難、麻薬所持などの些末事件の処理から、新聞の一面を飾った殺人事件を担当できると張り切る。が、被害者の愛人で元高級娼婦の日系女性メイ・シンが容疑者として逮捕され、事件がスキャンダラスな様相を帯びるとともに、主役の座を野心的な女性検事補プリョスに奪われる。しかも、情報リークの濡れ衣を着せられ、検事局を首になる。ところが、事件は意外な発展を見せ、検察側の敗北、そして思いがけない第二の容疑者の登場。ハーディは、殺人犯として逮捕された元義父-公平さを尊敬されてきた判事だが、メイ・シンと関係があった-の弁護を引き受け、自分を追いやった宿敵の女性検事補と正面から対決することになる。
マンハッタンに住む43歳のセラピスト、クレアには若い頃、女の子を産んですぐ養女にだした過去がある。そんな彼女のもとに患者として現れたのがジョディ。年頃や生いたちから考えてジョディが実の娘ではないかと思いはじめたクレアは、彼女のことが手放せなくなっていく…心理描写に定評のある新進気鋭の女性作家が軽快に描きあげた、クスクス笑えてちょっとこわーいサイコ・ドラマ。
ゲームとして誕生し、いまも幻の傑作として語られる「レッドサンブラッククロス」は、募るその声に応えて、小説として復活した。豊富な作戦知識に支えられて、三百人を超える登場人物にもかかわらず、劇的な展開、手に汗をにぎる熱戦の迫力を現出させる。本書は、いまだ全貌をあらわさない究極の攻防の一端を開封し、読者の想像と頭脳戦の一助として提供する。小説世界から厳密に再現した戦車設計とキャラクター・プロフィール、そして、この傑作を生んだもう一人の作者のメタ論文を加えて、重量級の資料である。