1983年発売
老練の船長が体験した、あまりにもおぞましい晩餐会での出来事を語る「胸像たちの晩餐」、12人の求婚者から1人選んで結婚する毎に相手が死ぬという悲劇を繰り返す美女の物語「ノトランプ」、かつての惨劇の舞台であり、現在は観光名所となった《血の宿》に泊まった男女を見舞う絶体絶命の危機「恐怖の館」など、『オペラ座の怪人』で知られる文豪の手腕が発揮された恐怖綺譚集。
「あなたがもし、円熟や調和、光や清爽、そして生の決して急がないリズムを希求する諸君ならば、あなたにとって神のような作家であり、作品である」比類なき自然描写の作家アーダルベルト・シュティフターの作品集全4巻、ここに完結。
黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。
アメリカ自然主義文学の巨匠フランク・ノリスの長編小説。カリフォルニアを舞台に西部開拓が終わり、資本主義経済が爆発的な成長を遂げる時期の、横暴をきわめる鉄道会社と農民の争闘、当時の自然、世相を浮彫りにした代表作品。
遠山金四郎景晋の配下、花房一平は不正を取り締まるため京へ上った。清水寺から町を眺めていると…。表題作他、殺人事件のカラクリに挑む一平の活躍を描いた作品集。(解説・伊東昌輝)
宵節句の宴で七重は隣家の出三郎の袂に艶書を入れる。しかし、部屋住みでうだつがあがらないと思っている出三郎には、それが誰からのものかわからないまま、七重は他家へ嫁してゆく。廻り道をしてしか実らぬ恋を描く『艶書』。愛する男を立ち直らせるために、自ら愛着を断つ女心のかなしさを謳った『憎いあん畜生』。著者が娯楽小説として初めて世に問うた『だだら団兵衛』など全11編。