出版社 : 筑摩書房
傑作ぞろいの“人間喜劇”からセレクトする3冊のコレクション、第2回。愛人と出奔したあとに捨てられた若い妻をひそかに見守る伯爵の悲劇を描いた香り高い傑作「オノリーヌ」、『ペール・ゴリオ』を最も感動的に彩ったパリの名花ボーセアン夫人のその後を描く「捨てられた女」、のちの検事総長グランヴィルの若き日の秘密を明かす「二重の家庭」、中篇三篇を収める。
臆病で気は小さいが憎めない犬丸順吉は、太平洋戦争直後、戦犯を恐れた社長の密命により四国へ身を隠す任務を与えられる。そこには荒廃した東京にはない豊かな自然があり、地元の名士に食客として厚遇を受けながら夢のような生活が待っていた。個性豊かな住民たちと織りなす笑いあり恋ありのドタバタ生活はどんな結末を迎えるか…。昭和を代表するユーモア小説。
傑作ぞろいの“人間喜劇”からセレクトする3冊のコレクション、第1回。革命期に奮戦した名門貴族の末娘エミリーは、美貌と才気に恵まれていながら、甘やかされ驕った心の娘に育った。ある日、ソーの村の舞踏会で理想の若者と出会い愛し始めるが、その身分は謎に包まれていた…。驕慢な娘の悲劇を描いた表題作に、尽きせぬ味わいの中編『夫婦財産契約』『禁治産』を収める。
42歳、女は日常から逃げ出すように旅に出た。スーツケースだけを持って。辿りついたのは海辺の田舎町。北欧デンマークの日常、屈託のない人々のやさしさの中で、孤独な女の心は次第に紐解かれていく。P.O.エンクウィスト賞、“黄金月桂冠”文学賞を受賞したデンマーク女性作家、初の邦訳。
ステレオ修理屋のレイは父親の死を契機に人生の行き詰まりを感じる。そんな時、自らの不思議な力に気づくー思い浮かべた伝説の音楽家たちの録音風景が実際に流れてくる。その力でビートルズ、ドアーズ、ビーチ・ボーイズ、ジミヘンの幻の音源を完成させていく。ロックファンなら必ず夢想した物語を実現させたロックンロール・ファンタジー。訳者小川隆氏による新たな「あとがき」を収録。
日常のなにげないひとこと。その言葉をふと拾ってみれば、酩酊をさそう25の物語がゆらりとあらわれる。不気味な話、怖い話、しみじみする話、苦笑いする話、不思議な話、にやりとする話、呆然とする話、あざやかな話、びっくりする話、泣ける話、笑うしかない話、感動する話…。百花繚乱!長野まゆみワールド。
夢、希望、怖れ、孤独、友情…。人気作家で贈る11の物語。ときに切なく、ときにほのぼのと、子供と大人たちの間に起こる様々なドラマ。『東京バンドワゴン』シリーズで知られる小路幸也ワールドから、単行本未収録を中心に、少年少女を主人公にした作品を選りすぐった傑作短篇集!巻末に作家本人による自作解説を付す。
著者の芸術活動の最初期にありながら、会田哲学、セオリー、善悪、聖と俗の逆説、執拗なまでの観察力と巧みな描写技法など、天性の画家ならではの表現が既に完成された小説であり、確信犯の犯行声明ならぬ、美術家・会田誠の制作のプロットであり予告であった。本作品の単行本刊行に大きく関わった松蔭浩之氏の書籍化までを追った回想的解説文を付す。
中世幻想譚の精華たる謡曲から、童話や探偵小説、そして戦後文学を代表する人々まで多彩な幻視者たちの文学を集大成。現実を超えた世界を追求する作家たちの鮮烈な軌跡を、識者によるオールタイム・ベストをもとに選ばれた名作佳品21篇によって跡づける。
飲んだくれの農場主を追い出して理想の共和国を築いた動物たちだが、豚の独裁者に篭絡され、やがては恐怖政治に取り込まれていく。自らもスペイン内戦に参加し、ファシズムと共産主義にヨーロッパが席巻されるさまを身近に見聞した経験をもとに、全体主義を生み出す人間の病理を鋭く描き出した寓話小説の傑作。巻末に開高健の論考「談話・一九八四年・オーウェル」「オセアニア周遊紀行」「権力と作家」を併録する。
王朝物語、説話文学、謡曲から近現代小説まで、日本幻想文学の豊饒な系譜を3巻本構成で総覧する画期的アンソロジー。開幕篇となる本巻には『源氏物語』『今昔物語』『雨月物語』などの大古典に始まり、明治の『遠野物語』、大正の『一千一秒物語』、昭和の『唐草物語』等々、幻想文学史を彩る妖しき物語群の中から、オールタイム・ベストとして定評ある窮極の名品21篇を収録した。
少し大人びた少年リツ君12歳。つむじ風食堂のテーブルで、町の大人たちがリツ君に「仕事」の話をする。リツ君は何を思い、何を考えるか…。人気シリーズ「月舟町三部作」番外篇。
医薬品会社の実験薬理学者フォックス。カリブ海の島に派遣されるが、そこは魔術を信仰する島民を独裁者が支配し、秘密警察の跳梁する島だったー。陰謀に巻き込まれ、人体実験に加担させられるフォックス。だが事態は大きく変転する。囚人との逃亡、クーデター、そして…。果たしてフォックスを嵌めた犯人は?幻の小説、復刊。
短篇小説はこんなに面白い。十八世紀半ば〜二十世紀半ばの英国短篇小説のなかから、とびきりの作品ばかりを選りすぐった一冊。ディケンズやグレアム・グリーンなど大作家の作品から、砂に埋もれた宝石のようにひっそりと輝くマイナー作家の小品までを収める。空想、幻想、恐怖、機知、皮肉、ユーモア、感傷など、英国らしさ満載の新たな世界が見えてくる。巻末に英国短篇小説論考を収録。
「日本SF初期傑作集」とでも副題をつけるべき作品集である。(筒井康隆)-優れた書き手たちがその個性を存分に発揮しつつ、SFと小説の可能性を探り続けていた1960年代の代表的傑作を集める。斬新なアイディア、強烈なイメージ、ナンセンスの味わいなどがたっぷり。「SF」の枠組みを超えて、二十世紀日本文学におけるひとつの里程標となる歴史的アンソロジー。
「仄聞するところによると、ある老詩人が長い歳月をかけて執筆している日記は嘘の日記だそうである。僕はその話を聞いて、その人の孤独にふれる思いがした」(落穂拾い)明治の匂いの残る浅草に育ち、純粋無比の作品を遺して短い生涯を終えた小山清。不遇をかこちながら、心あたたまる作品を書き続けた作家の代表作を文庫化。いまなお新しい、清らかな祈りのような作品集。