出版社 : 新潮社
わ、これは、ホテルだ。ラブホテルだ。真心はようやく気付いたーー。山本の後についていくと、壁には、後ろからライトアップされたパネルが取り付けられていて、そこに室内の写真と値段が書かれてあった。わ、これは、ホテルだ。ラブホテルだ。このパネルもネットで見たことがある。真心はようやく気付いたーー。銀座の灯りの下で繰り広げられる、恋と夢と駆け引きの物語。
本物の「伏線回収」と「どんでん返し」をお見せしましょう! 山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。事件報道後、警察署に小学生が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は十年前に失踪し、失踪宣告を受けていた。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を飲み込んで、事件は思いがけない方向へ膨らみ始める。
私はあきらめない。科学が導いてくれるたったひとつの真実を見つけるまでーー。「雨は、なぜ降るのだろう」。少女時代に雨の原理に素朴な疑問を抱いて、戦前、女性が理系の教育を受ける機会に恵まれない時代から、科学の道を志した猿橋勝子。戦後、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定にたずさわり、後年、核実験の抑止に影響を与える研究成果をあげた。その生涯にわたる科学への情熱をよみがえらせる長篇小説。
おかあさんを《記録》したいーー。母と娘のさいごの時間を描く三島賞候補作。余命わずかな継母と、念願の出産を控えた娘。母が去り、父が去り、長年この継母をただ一人の母として生きてきた娘は、その姿をなんとかこの世にとどめようと、母の《記録》を専門の担当者に依頼する。やがて継母は、心の底に沈めていた記憶を語りはじめる……。思い出すことの痛みとその豊かさ。期待の新鋭による意欲作。
見届けよ、ミロの最後の闘いを。桐野夏生の傑作ノワール・エンタメ最終幕! 私の愛した男たちは皆行ってしまった。私の魂を受け止めてくれる相手はもうどこにもいないーー衝撃作『ダーク』から20年、村野ミロは生きていた。そして息子のハルオは「悪」を知る旅に出るが……。息子を守るため、凍る火の玉、ミロの最後の闘いが始まる。圧倒的迫力で描く、著者渾身のエンタテインメントの結末は。
最愛の彼を自死で失った僕が、四半世紀を経て書き上げた悲嘆と再生の記録。1998年のある日、作家のビアンキは7年間同棲して別れた直後のパートナーが自宅で死んでいるのを発見した。やり場のない自責の念や罪悪感、怒りと哀惜、埋めようのない寂しさ……。同様の経験をした人々に向けて、どのように死を受け入れ、他人と新しい関係を築いていけるようになったのかを包み隠さず綴った貴重な体験録。
防衛力はカネか人か? この未来はフィクションでは終わらない! 防衛費倍増の財源を巡って政権は揺れていた。予算折衝は激しさを増した。その最中、台湾の潜水艦と日本の漁船の衝突事故が。北京滞在中の都倉響子総務会長の決断は? トランプ、台湾有事ーー今そこにある「リアルな危機」から、この国の未来を守るのは誰か。安全保障を経済から問う圧倒的長編ポリティカル・フィクション!
優しい世界が壊れ始め、世界は何度も、ひっくり返るーー衝撃のミステリ。いばらに囲まれた小さな村で幸福に暮らす未明。だが「いばらの外に出てはならない」という村の決まりを破り、瀕死の少年を介抱したことから全ては崩れ始める。村の優しき指導者が何者かに殺害され、人々の疑心暗鬼が頂点に達したとき、さらなる悲劇がーー。犯人は誰なのか。大どんでん返しが待ち受ける、衝撃のミステリ。
止まない雨が降り続く時、青空をどう信じるかーー芥川賞作家の最新作品集。「弁護士に重要なのは切断の感覚や」先輩弁護士の口ぐせ通りに仕事してきた僕。自分と関係のないことには立ち入らず、世間と折り合いをつけてきたつもりだった。だが、見ないようにしてきた「壁」が周りに現れ……。コロナ禍を経て空虚さと軽薄さがますます溢れる都市生活の奥にほの見える、心動かされる一瞬を描く作品集。
庭のその木は、人の生殖に力を与えるという。人類の業を抉る三島賞受賞作。幼い頃に2階から落ちたが庭の橘の木のおかげで助かったことがある恵実。以来、木の力を恵実が媒介するという噂が流れ、子どもを望む人々が大勢家を訪れるようになった。自分にすがる彼らの気持ちに戸惑いながらも役割を果たす恵実だったが、そのことが自身や家族に暗い影を落としーー子孫繁栄という常識を揺さぶる問題作。
その怪異に、ITによる解決編(ソリューション)を。ITベンチャー「ピーエム・ソリューションズ」。この会社にはなぜか曰く付きの案件ばかり舞い込んでくる。幽霊からのプッシュ通知、呪われた瞑想アプリ、祟りをもたらすサーバー神社……新米ディレクター多々良数季は、訳ありエンジニア達の助けを借りながら怪異に挑む。ホラーの俊英が放つ、オカルト×テック×ミステリ!
少年のイノセンスを瑞々しく描いたカポーティの名作を、村上春樹が新訳。1940年代アラバマ州の田舎町。母を亡くした少年コリンは遠縁にあたるドリーとヴェリーナの老姉妹に引き取られる。ドリーは妹との諍いを機に、コリンとメイドのキャサリンを連れてツリー・ハウスで暮らし始めるのだが……。初期の名作「草の竪琴」のほか、「最後のドアを閉めろ」「ミリアム」「夜の樹」の短篇3作を収録。
喋る穴熊、狸、猪、天狗に神様まで! 平凡な公務員ひらりに訪れた試練とは。就職を機に母の実家で一人暮らしを始めたひらり。ある日、母の家系は代々、天狗に願掛けをする特殊な役割を負った家だと知る。祖父母も母も既に亡く、ピンと来ていなかったひらりだが、穴熊の夜三郎や天狗の飯野など、不思議な生き物と交流するうちに、役割を自覚するようになる。そんな中、豊穂市を大きな台風が襲いーー!
戦乱の世にシンギュラリティ到来⁉ 歴史とSFが交差する珠玉の全11篇。アシカガ・ショーグネイト崩壊後、AIは長足の進歩を遂げる。軍事AIが合戦を司り、文事AIが詩歌、楽曲の生成に勤しむ世界で、つわものたちは何を思惟するのか? 歴史小説のはずが、ミステリあり、スペースロマンあり、アイドル活劇あり、異世界転生まであり! 何でもあり! 円城ワールド全開の戦乱ラプソディー!
「まるで春の超絶って感じ」1頁先が予測不可能、生活自体を経験する小説。渋谷の隣、代官山の古い一軒家で父と暮らす椿は二十歳になったばかり。バイト代はほぼ服に費やし、友達に囲まれ、彼女ができたり振られたりの一見刺激的な日々。だがそれはいつまで続くのか。果たして「生活」と言えるのかーー文芸の最先端を突き進む作家による、偶然と必然に彩られたジェットコースター・ストーリー。
平和の裏に隠された真実とは。謎が謎を呼ぶ、新次元の精霊ファンタジア! 少女ナオミは、風の精霊を統べる皇帝から「私の寵姫の座を狙ってみないか?」と突然誘われる。皇帝の後宮には皇后と愛妾がおり、彼の胸には皇后の瞳の色に似ている緑の宝石を選び抜いた首飾り「皇后の碧」が常に輝いていた。訝りつつ己が選ばれた理由を探るうち、ナオミは後宮が大きな秘密を抱えていることに気づくが……。
女性はなぜナチスに斬首されたのか。真実を求め「あなた」は歴史を越える。占領下のブリュッセルでナチスの将校を単身で襲い、斬首刑に処された女性。抵抗運動の最初の狼煙をあげながら、女性であったが故に歴史から消されたその生涯を調べる著者の「あなた」もまた、女性として抑圧や差別を経験してきた。彼女の人生を甦らせるのは「あなた」しかいないーー史実を元にし、それを踏み越える小説。
あなたの苦しみを救いたいーーいま、苦悩を抱えている人へ。幼い頃受けた暴力の為に心に傷を負った少女。成長した彼女を待ち受けていたのは、田舎特有の閉鎖的社会と欺瞞渦巻く職場環境だった。絶望した彼女は若い死を選ぼうとするが失敗。人間不信から人間の裏の顔を見るようになる。生き地獄の世界で憎悪の炎をたぎらせるがーー魂の原点を取り戻して生き続ける力を綴る、自伝的小説。
吸血鬼一家が営む山奥のピッツェリア。ある日、新たな仲間が加わることに! 漫画家を目指す双子の小学生吸血鬼、ルキアとラキア。二人はスランプから抜け出すため、ピッツェリアに見習い職人としてやってきたオーエンにキャンプに連れて行ってもらうことになった。オーエンには吸血鬼だということを知られてはいけない。でもその夜、ある事件に遭遇しーー。変速するヴァンパイアストーリー全三篇。