出版社 : 幻戯書房
衛兵の交代に目を光らす彼の横顔は、司祭の蝶ネクタイをつけ黒いサングラスをかけた髑髏[どくろ]のようだ。 ウナムーノらスペイン〈98年世代〉の作家バリェ゠インクランが 独自の小説技法「エスペルペント」で描き出した、 いびつで歪んだグロテスクな現実世界ーー ガルシア゠マルケス、フエンテスら世界文学者に継承される 〈独裁者小説〉の先駆的作品。本邦初訳。
出発はしない。いつもそう思ったが、どうして、どうして、いつも出発することになった。出発ではなく、道を辿り直し、もう同じ場所ではありえない元へと戻り、どうやって何もかも終えるのかを考えるべきかもしれない。 龍之介と百間、ランボー、足穂、 (フェルナンド)ペソア、一馬、アルトー、小野篁…… 「幻視者たち」がさすらう めくるめき文学草子。書き下ろし。「分身」としての 世界文学史小説
地上の暗さと夜空の暗い深淵との間には、解きがたい謎をはらんで微睡んでいる人間の生が横たわっていた。 抒情から叙事へーー 詩的写実主義の作家シュトルムの転換期を代表する 人間個人の心理に肉迫する表題作のほか、 「三色すみれ」「人形つかいのポーレ」 「森のかたすみ」「静かな音楽家」「荒野の村」 五つの短篇小説を収録。
それで、その医者への感謝と敬意を込めて、その生まれた子どもはドクターと名づけられたわけよ。それがこの俺さ。ドクター・マリゴールド。 ディケンズみずから朗読する「クリスマス・キャロル」 「バーデル対ピクウィック」など人気を博した、 “声に出して読みたい”ディケンズの代表的朗読作品 5編を収録。
おなごの人も俳諧に遊ぶ楽しさを知ったなら、世の中はもっと住み良くなりはしないかしら。--江戸時代に諸国を行脚し、旅先で歌仙を巻いた実在の女俳諧師・五十嵐浜藻。そして彼女が史上初めて完成させた、すべて女性ばかりの付合(連句集)『八重山吹』。江戸期に比類のない同書始まりの地・長崎を舞台に、俳諧小説の第一人者が大胆に虚実を交え、その創成秘話を描く長篇。 其の一 青北風 其の二 柘榴膾 其の三 神無月 其の四 枯尾花 其の五 日見峠 附篇 五十嵐浜藻の生涯と仕事 あとがき 参考資料 五十嵐浜藻年譜
英文学ゼミの研究室で発生した陵辱事件。ばらまかれる怪文書、謎の猥褻画、めまぐるしい議論の応酬ーあの「密室」で、何が本当に起こったのか?恋愛推理の巨匠“最後の未刊長篇”を初書籍化。本文と連動した著者自筆挿画72点完全収録の愛蔵本。
池波正太郎の『鬼平』、岡本綺堂の『半七』にならぶ、泉鏡花の弟・斜汀の捕物帳など幻の傑作全10篇収録。 印旛沼の怪 彌太吉老人捕物帳 幕末探偵奇談 百本杭の首無死体 彌太吉老人捕物帳 幕末探偵情話 遊女花扇の死 捕物哀話 恋の火柱 与力覚帳 女の血刀 お道松太郎 酒匂川氾濫 相撲と江戸児 おさんの意気 浪花の侠客 雁金文七 新講談 小蝶の幻 付録(幕末名探偵彌太吉老人を訪う 井上精二/斜汀泉豊春論 猪狩章) 解説
1枚の美しい切手をめぐり、すれちがい、めぐりあう人間模様。ささやかでいとおしい一度きりの旅を、だれもが懸命に生きている。『100万回生きたねこ』の佐野洋子が贈る奇跡のラブストーリー。幻の名作、待望の新装復刊。大切な人へのプレゼントにも!
齢九十。暗い暗い穴の底へ。 芥川賞候補作にして、きのこ文学の金字塔「くさびら譚」、ドストエフスキー、トルストイ、カフカ、プルーストの軌跡をめぐる旅、そして、単行本未収録の「熊」「妻の死」など全12編 くさびら譚 最期の旅 遭難 雨の庭 残花 ドストエフスキー博物館 ヤスナヤ・ポリャーナの秋 教会堂 イリエの園にて 新富嶽百景 熊 妻の死 (随筆)長編小説執筆の頃 あとがき
あらゆる小説ジャンルを呑み込み笑い飛ばす強靱な文体。アイヌ文化と「ヤマト」の差別に対する苛烈な問題意識ーおそるべきゲリラ作家の入手困難な代表作を精選し、知られざる傑作長・中・短篇6作を(ほぼ)初書籍化するメガ・コレクション。
芥川龍之介にホメられて有頂天、 永井荷風を敬愛しつつ、その存命中に「絢爛の情話」を著し(荷風も大激怒)、 安藤鶴夫を妬み、 稲垣足穂や金子光晴を友とし、 城左門、今日泊亜蘭、そして小沢昭一、桂米朝、都筑道夫に師事され、 酒癖が悪く、家賃滞納、夜逃げ、女性遍歴を重ねた、べら棒な奇人。 絶交と破門を繰り返し、「孤立」を貫いたこのサイテーな男はしかし、 寄席を愛し、市井の文学を愛し、江戸好みの詩情で歿後、再評価を受けた。 神田の生まれで明治・大正・昭和を駆け抜けた著者が描く、 かくもはなはだしきモダン東京。 歿後60年/小説・随筆35篇
戦時下の小学生と教師たち。東京五輪間近、ドイツ留学を前にためらう研究者。自然のままに生きた弟…表題作ほか、20世紀を生きた人々の様々な時間が呼応する、柴田文学の新たなる境地。半世紀の時を経て書き継がれた中短篇集。
女子中学生・ユキコさんが探偵役として活躍する表題連作ほか、日常の謎あり、スリラーあり、ハードボイルドありと、多彩な推理が冴え渡る。名作『黒いハンカチ』(1958)以来60年ぶりとなるミステリ作品集(巻末エッセイ・北村薫) 1 モヤシ君殊勲ノート[1958〜59] (第一話 青い鳥を見ますか/第二話 望遠鏡/第三話 赤土の崖/第四話 青いシャツの死体/第五話 街路樹の下の男) 2 春風コンビお手柄帳[1961] (第一話 消えた時計/第二話 消えた猫/第三話 指輪/第四話 逃げたドロボウ/第五話 表札) 3 窓の少女[1958] 霧[1959] 夏の『思ひ出』[1959] 赤い電話[1960] 秋の湖[1961] 収録作品解題