小説むすび | 運び屋にされた郡上藩凌霜隊

運び屋にされた郡上藩凌霜隊

運び屋にされた郡上藩凌霜隊

発売日

2025年11月4日 発売

江戸時代、山深き郡上八幡。産業も乏しく、情報も届きにくいこの地に、宝暦年間、丹後宮津から「武の青山」と称される名門・青山氏が藩主として赴任する。静寂に包まれていた郡上は、やがて時代の奔流に飲み込まれていく。
岩本院の一人娘・お清は、藩の使いとして何度も江戸へ赴く。その旅路の中で、会津戦争で行方不明となった恋人・山脇金太郎の足跡を、かつて交わした手紙を手がかりに追い始める。やがて彼が幕府の裏の任務に関わっていたことを知る。
江戸無血開城の前夜、郡上藩は密かに「凌霜隊」を結成し、会津若松の松平容保のもとへと向かう。一方、郡上八幡の国許では新政府への転向の動きが進んでいた。会津戦争の敗北により、凌霜隊は脱走隊として扱われ、海路を使い郡上へ護送される。
その航路の裏には、徳川幕府の勘定奉行・小栗忠順と、山脇家の養子となった金太郎の密接な関係が潜んでいた。幕府の御用金を密かに船に積み込み、荷物の中身をすり替えて輸送するという、幕府最後の策謀。お清は金太郎の積み込んだ荷の正体を探るうちに、彼と小栗の行動が深い闇に包まれていることに気づく。
本作は、凌霜隊隊員・矢野原与一が遺した日記『心苦雑記』をもとに、激動の時代に翻弄された人々の姿を描き出す歴史小説。郡上八幡から江戸、そして会津へーー幕末の闇に挑む一人の女性の恋仲を一途に追ってゆく姿を、今、静かに語られる。

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