著者 : 飛鳥部勝則
ゴッドが好きな高校生の詩郎が出逢った、自分が空想で創ったはずの神の正体とは……? 地元の名士が殺害され、脅迫していたという謎の怪人・蠱毒王とは何者か……? 二つの迷宮的な事件が複雑怪奇に絡み合い、恐ろしいカタストロフィが待ち受ける本格超大作!
飛鳥部勝則による第3長篇『N・Aの扉』、長らく入手困難だった幻の小説を[新装版]として26年ぶりに復刊! 新規書き下ろしの「別館入口『変格推理の幽霊』」も収録! 『堕天使拷問刑』などで話題を呼んでいる著者のデビュー翌年に書かれた長編第3作にして、その後の一筋縄では行かない作風を早くも覗かせる異色作です。 発表から26年間、書籍は古本市場で高騰し入手困難。未文庫化・未電子書籍化のため作品に触れることが難しい状態となっていましたが、このたび復刊ドットコムと株式会社書泉の共同プロジェクトとして新装復刊が実現しました。 ▼あらすじ 推理作家・石塚成文はデビュー作の受賞パーティで、大学時代の後輩であり石塚よりも数年前から活躍するホラー作家・田村正輝と再会する。パーティ後に席を変えて旧交を温めていると、田村は唐突に、「幽霊って、信じますか?」「幽霊は幽霊でも、《本格推理の幽霊》……についての話なんです」と、自らの体験した不思議な出来事を語り出した。 それは田村の中学生時代の友人・川合和重から届いた一通の手紙から始まる。かつて川合は、名探偵N・Aの登場する田村の作品の唯一にして最大の読者であり、また苛烈な批評家でもあった。 手紙に書かれていた住所をたよりに、田村は連絡もなしに川合の自宅を訪問する。不在であった川合のかわりに田村を出迎えたのは、幽霊のような双子の少女・千春と千夏であったーー。 ▼本書の内容 語り手による「幽霊小説(ゴースト・ストーリー)」についての考察から幕を開ける『N・Aの扉』は、それ自体もまた一編の幽霊小説となっています。ただし「幽霊についての小説」ではなく、「それ自体が幽霊である小説」として。 主人公の作家・浜崎が学生時代に執筆した習作への言及がありますが、作中作としてそのまま引用されないため読者は想像するしかない幽霊のようなそれらの習作が、友人による評論という形でのみ触れられるという構成は、J・L・ボルヘスやスタニスワフ・レムによる「架空の書物への書評」を思わせるところもあり、「お決まりのミステリ」からの脱却を目指した著者の意欲が窺えます。 また浜崎が幽霊のように謎めいた少女と出会って繰り広げるミステリ談義も興味深く、小説の形を借りてミステリ評論を内包したメタ・ミステリとしての側面もあります。 そうしたさまざまな読み方を可能にする要素が盛り込まれていることから、一般的な意味でのミステリとは呼べないように見せつつも破綻させることなく、まるでこの小説すべてが幽霊であったかのような不思議な読後感を残していく手腕の鮮やかさが再評価されるべき作品です。四半世紀を経て新装復刊されるこの機会にぜひお手に取ってください。 ※本書は、『N・Aの扉』(飛鳥部勝則 著/新潟日報事業社 刊 1999年11月)を底本とし、内容の一部を修正・増補のうえ、新たな装丁にて刊行するものです。 (c)飛鳥部勝則
奇妙に傾く狂気の城、奇傾城ー血と内臓と腐肉が主題の絵画が集う一室に幽霊が出没する噂がたち、“探偵”亜久は心霊特番に協力して城を訪れる。遅れて“霊能リポーター”役の女子高生、全身黒服の少女・黒が現れ、亜久にそっと囁いた。「あなたは、鋏が好きですか」…やがて密室状況で、黒と親しい男がくだんの部屋で首を切断された。これは幽霊の凶行か?呪わしく美しい純愛(変愛)本格ミステリ。
大物画家の私設美術館の開館日。展示室のドアを開けると、そこは…死体の山だった。オープンを祝う(呪う)かのごとく、聖者殉教の絵そのままに、老人や少女が、腸を引き出され、乳房を抉られ、歯を抜かれ、針鼠になり…。「聖エラスムスは腸を引き出されて殺されるであろう。聖セバスティアヌスは矢を突き刺されて…」招待客の新聞記者・持田の許に届いた不気味な手紙は、殺人予告だったのだ。血まみれの悪夢、狂気の大事件の幕が開く。
小さな島で発生した連続殺人事件。殺人現場には必ず「バベルの塔」をモチーフにした絵が残されていたーー。数々の名画が示す真犯人とは? 「図像学」と「推理」を融合させた、かつてない本格ミステリの誕生!