小説むすび | 著者 : 川野太郎

著者 : 川野太郎

トピーカ・スクールトピーカ・スクール

2020年ピューリツァー賞最終候補作 「さて、これから一枚の写真を見せるので、ひとつお話を作ってもらいたい(…)この写真に写る人たちはなにを考えて、感じていると思う? まずは、なぜこのような場面に至ったのかを話してみてくれないか」 1997年、中西部カンザス州トピーカ。高校生のアダム・ゴードンは、恋人のあとを追って入り込んだ湖畔の邸宅がじつは見知らぬ他人の家だったことに気づいた。つかのま世界が組み替わり、アダムはその湖畔に立ち並ぶすべての家に同時にいる感覚に襲われる。同一性と、確からしさの崩壊。彼はすべての家にいたが、その家々の上空を漂うこともできた。 競技ディベートの名手であるアダムが、自分のスピーチのなかにみた暴力性。ともに臨床心理士のアダムの両親が紐解きはじめた、自らの記憶。母ジェーンの葛藤と彼女が闘ったトピーカの「男性たち」。父ジョナサンが心の奥底に隠した弱さ。言葉の限界にそれぞれの形で向き合う家族の語りに、アダムの同級生ダレンの声が織りこまれる。クラスにとってよそものだった彼を待つ事件。それは避けられなかったのか? そして、アダムが最後に選び取ったスピーチとは。 複数の声が時代を行き来しながら、米国の現在を照射する。『10:04』の作者が、知性と繊細さをもって共同体を描きだす、小説の新しい可能性。

ノーザン・ライツノーザン・ライツ

カナダ、マニトバ州北部の凍て付く自然。母親と従妹と暮らす14歳のノアが、地図製作者の父親が持ち帰った短波ラジオで最初に聞いたのは、親友ペリーが割れた氷から一輪車ごと湖に落ちたという報せだった。死んだペリーの両親の村で次の夏も過ごすと決めたノア、村には先住民クリーの人びと、罠猟師、宣教師、そして行方不明の父親までが……。物語は後半、大都会トロントの映画館〈ノーザン・ライツ〉に舞台を移し、そこでノアと家族は思いもかけぬ出会いを経験する。 デヴィッド・ボウイが「人生を変えた100冊」に選んだ長編小説『バード・アーティスト』の作者ハワード・ノーマン。そのデビュー作『ノーザン・ライツ』は、出版されるや称賛を受け全米図書賞候補となった。 「とても好きな本だ。やさしく、おかしく、ミステリアスで、真実に満ちていて、それゆえに美しい」(『遥かな海亀の島』のピーター・マシーセン)「おかしく、かなしく、やさしく、果敢である……初雪が降った野についた、最初の足跡のような本」(『闇の左手』のアーシュラ・K・ル=グウィン)。 1950年代後半の少年の心と成長を描いて切々と胸に迫る、この小説を読んだ者の心には、オーロラの光が残ることだろう。 第一章 一輪車 第二章 パドゥオラ・レイク 第三章 カワウソの少女に誘惑された説教師 第四章 見えないものをたしかめる 第五章 ひとりのオーケストラ 第六章 いとこの手紙 第七章 〈ノーザン・ライツ〉 第八章 池の上を無線の声が滑る 2001年ピカドール版への序文 訳者あとがき

長い眠り長い眠り

時を超えて氷の中から甦った男を待ち受けていたものとは…? 科学の倫理性、人生の意味、そして愛の本質を問うサイエンス・ロマン。 科学者ケイト・フィーロらを乗せた調査船が発見した未曽有の規模の氷山、 その分厚い氷の奥深くから、氷漬けになったひとりの男が発見されたーー。 氷の中から目覚めた時間旅行者(タイム・トラベラー)を待ち受けていたのは、 名声を追い求める傲慢な研究所所長、スクープを狙う雑誌記者、 「凍った男(フローズン・マン)」の蘇生は神への冒涜と考える狂信的な抗議団体、 甦った男の生を長引かせるため研究を重ねる科学者たちのさまざまな思惑だった。 さまざまな欲望と思惑に満ちた世界で、 男は「愛」を再び手に入れられるのか。 科学の倫理性、生と死の意味、そして愛の本質を問う、サイエンス・ロマンの傑作!    ”キールナンはここ数年にデビューしたなかでも        もっとも力のある作家だ。     本書はあなたの心臓を止め、また動かすだろう”    〜Justin Cronin(ベストセラー『Passage』著者)〜

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