著者 : マリオ・バルガス=リョサ
ノーベル賞作家でありラテンアメリカ文学を牽引した巨匠による、 喜劇と悲劇、そして音楽と本と祖国への愛に満ちた人間賛歌。 クリオーリョ音楽の研究者トーニョが出会った、世界で最も美しいギターの音色。そしてその奏者であるラロ青年の夭折。それらはリマ近郊でつつましく暮らすトーニョの人生をすっかり変えてしまった。彼について、そしてこの国の音楽について本を書かなくては! 使命感に燃えるトーニョだが、その熱意は様々な人を巻き込んでいき……。 2025年4月に逝去したペルーの巨匠、その最後の小説。 【著者プロフィール】 マリオ・バルガス=リョサ Mario Vargas Llosa 1936年、ペルーのアレキパに生まれる。20世紀後半の文学を代表する作家のひとり。 1959年に短篇集『ボスたち』でデビュー。初の長篇『都会と犬ども』で注目を浴び、生涯にわたってセルバンテス賞など数々の受賞歴を誇る。2010年にはノーベル文学賞を受賞した。 著書に『緑の家』『ラ・カテドラルでの対話』『フリアとシナリオライター』『世界終末戦争』『密林の語り部』『チボの狂宴』『楽園への道』『ケルト人の夢』『激動の時代』など多数。 2025年4月13日に逝去。本書は著者が生前に刊行した最後の小説となった。 【訳者プロフィール】 柳原孝敦 (やなぎはら・たかあつ) 1963年鹿児島県名瀬市(現・奄美市)生まれ。東京外国語大学大学院博士後期課程満期退学。東京大学大学院人文社会系研究科教授。著書に『ラテンアメリカ主義のレトリック』(エディマン/新宿書房)、『テクストとしての都市 メキシコDF』(東京外国語大学出版会)。訳書にアレホ・カルペンティエール『春の祭典』(国書刊行会)、ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』(共訳、白水社)、セサル・アイラ『文学会議』(新潮社)、フアン・ガブリエル・バスケス『物が落ちる音』(松籟社)など。 【原題】 Le dedico mi silencio
★作品社公式noteで「訳者あとがき」公開中→「激動の時代 試し読み」で検索! ラテンアメリカ文学ブームを先導した巨匠、最晩年の長篇 嘘が真実になり、ラテンアメリカを変えた─。 冷戦期グアテマラで展開される、権謀術数渦巻く国際政治の闇を複眼的に描いた傑作。 * 1954年、グアテマラ。CIAを通じて米国の支援を受けた軍事クーデターが起こり、貧困にあえぐ国民を救うべく10年にわたって農業改革を進めたハコボ・アルベンス政権が崩壊し、カルロス・カスティーリョ・アルマスを大統領とした独裁政権が樹立されたが、その背後では、「グアテマラが共産主義国になってソ連の海岸堡になる」という噓の情報がメディアに流されていたーー。現実は、噓によってかくも歪んでしまうのか。米帝国支配の暴力性を言語化し、ありえたかもしれない歴史を描く、ノーベル賞作家が今日の世界に遺した傑作長篇。
一九一六年、大英帝国の外交官であった男に死刑が執行された。その名はロジャー・ケイスメント。植民地主義の恐怖を暴いた英雄であり、アイルランド独立運動に身を捧げた殉教者である。同性愛者ゆえに長くその名は忘れられていたが、魂の闇を含めて、事実と虚構が織りなす物語のうちによみがえった。人間の条件を問う一大叙事詩。 ロジャー・ケイスメント関連地図 主要登場人物一覧 コンゴ アマゾン アイルランド エピローグ 謝 辞 訳者あとがき 参考文献
テロが吹き荒れるフジモリ政権時代のペルー、リマ。戒厳令下、同性愛をひそかに楽しむ富裕層の妻たち、乱交パーティの隠し撮りでゆすられるその夫、ゴシップ誌に命をかけ闇を背負う編集長、彼を崇める記者、職を奪われ孤独の中で恨みを溜める老人…腐敗し退廃した街の人間模様の背後には、国家の恐るべき罠が隠されていた。ノーベル賞作家が放つ官能的かつサスペンスフルな最新作!
女性は人類に入らないとされていた十九世紀半ばのヨーロッパで、虐げられた女性と労働者の連帯を求めて闘った革命家フローラ・トリスタン。芸術の再生を夢見て、家庭を捨てヨーロッパを捨ててひとり逆境に身をおいた。フローラの孫ゴーギャン。自由への道を求めつづけた二人の反逆者の波瀾の生涯を、異なる時空をみごとにつなぎながら壮大な物語として描いたノーベル賞作家の傑作。
苛烈な“人民革命”の嵐吹き荒れるペルー。テロリストの影に怯えながら、荒涼たるアンデス山中に駐屯する伍長リトゥーマと、助手トマスの目の前で、三人の男が消えた。彼らの身に何が起こったのか?壮絶な暴力、無表情なインディオたち、悪霊をあやつる“魔女”-さらに愛すべきトマスの恋愛劇までからめながら、戦慄の結末へと展開する物語は、読者をとらえて離さない。交錯する語りのなかに、古来の迷信と残酷な現実がまじり合う、ノーベル賞作家・バルガス=リョサの世界を堪能できる一作。