1994年12月発売
さらっと噺のなかで松鶴自身の引導鐘をつかせようとする「天王寺詣り」。酒飲みのもっと飲みたいという心理を描く「猫の災難」。73年と74年の録音で、得意の演目だけにあのしゃがれ声による展開のなめらかにして、実にいいテンポ。脂の乗った松鶴がいる。
実は上方落語にとんと縁のなかった私だが、この人の落語は語り物として聞いても素晴らしい。悪ガキに手を焼く親父の姿を描いた(2)など、ほとんど河内音頭の軽妙な語り部分に通底する。河内家菊水丸の古典が好きな聞き手(私もそうだが)にぜひ勧めたい。
まさに豪放磊落の浪花の名人芸とは笑かすことがまず身上。得意ネタばかりで3枚。72〜73年の録音で、パワーとスピード、共に申し分なし。オハコ「天王寺詣り」はもう神がかっている。下品なようでさわやかなのは人間の業をわきまえているからだ。
(1)(3)(4)(10)の詞を本人が手がけている他は全部、石川優子がコンポーズ。荻野目ちゃんもデビューから丸10年。いろんなことをやってきましたが、そろそろ落ち着き時か。こんなタイトルだけど、中身はクリーンな同世代の女性向けAOR。(10)がカッコいいです。
「ロマンスの神様」大ヒットのきっかけとなったスキーのCMで、またまた強烈なサビが印象深い(4)を聴かせている彼女の4th。パワフルだけど弱みも見せちゃう現代のワーキング・ウーマンの機微を描かせたら、やっぱりこの人。全アレンジでも才を発揮。
ソフト・バレエの森岡賢が多国籍なアーティストと作り出したソロ第1弾。常識を超越したキャラクターの持ち主なだけあり、音もエスニック、ハウス、テクノ、アンビエントなど様々なスタイルが交差したボーダーレス状態。(8)のモーマスの歌声がラヴリー。
近代日本の偉大な作曲家というばかりが先行して、意外と業績が知られていないのが山田耕筰である。全60曲のラインナップを見ても、近代歌曲の作曲や、民謡・俗謡の編曲などを通して日本語歌謡の表現をつきつめた人だということがわかる。
70年9月に亡くなるジミの69年2月ロンドンでのライヴ。同年6月に解散するエクスペリエンスとの演奏で、(1)(2)(5)(6)など、おなじみの曲がたっぷり。限りあるジミの音源。最高とかそうでないとか言うなかれ。デイヴ・メイソンとクリス・ウッド参加。
レイモンド・ルフェーヴルの息子ジャンの編曲と指揮による、パリ録音第2作目。きれいな声でうたわれる歌は、どれも美しいが、その美しさに流れてしまうきらいもある。それは多分に訳詞の問題もあるが、もっと曲によってはドラマがほしい。