ジャンル : 演歌・純邦楽・落語 > ドキュメント・脱音楽
「あすの別れ」は、1956年9月25日に発行された随筆集で、そのなかから“上”は13篇、“下”は11篇の朗読を収録。1949〜1956年に発表された作品で、音楽に対する考えや交遊エピソードなどが語られている。川口敦子と中野誠也の端正な語り口が好ましい。
被曝した人たちが綴った詞を、吉永小百合が切々と朗読していく。バックで流れる切ないギターや弦四重奏の調べが、彼女の朗読する声に、さらに哀愁を重ねていく。辛辣な言葉の中に込めた苦悩や怒りの姿。二度と繰り返してはならぬという想いが満ちている。
ヒロシマ、ナガサキの原爆詩の朗読に続く吉永小百合の沖縄編で、野坂昭如作「ウミガメと少年」を朗読。音楽は大島保克(三線、歌)。悲惨な沖縄戦を少年・哲夫の目から見ている。浜辺でウミガメの卵をすする少年。ウミガメはまた浜辺に産卵にやって来る。
昭和30年代に文化放送で毎週1時間半にわたりオンエアされていた『森繁ゴールデン劇場』は、森繁の絶妙な語り口を中心にゲストとの楽しいトーク、歌、ドラマという構成の人気番組だった。番組の1パートには向田邦子を起用し、その向田にシナリオの手ほどきをした市川三郎が全体構成を手がけるなど時代の最先端スタッフでいどんだ意欲作だった。また文芸作品“ロマン誕生”のコーナーも、多彩な出演者と精密な演出で人気となっていた。この6枚の復刻CDは、膨大な音源のなかから榎本健一との対談、歌を収録した『1』、ドラマ「人生劇場」収録の『2』など選りすぐった番組コーナーをまとめている。昭和のラジオ・芸能史を知る上での貴重な資料に、リアルタイムで聴いていた人には、自分の人生と重ねあわせることのできる懐かしい宝物になるだろう。
宮城道雄といえば、「春の海」などで知られる箏の名演を連想するけれども、こちらはもうひとつの才能である文章力を活かした随筆集をCD化したものである。いずれも戦後の昭和22年から31年までに出版された作品で、大塚道子、小川真司、中谷一郎、野中マリ子というベテラン俳優による落ち着いた朗読でまとめている。今や歴史的な人物の名前が登場したり、漫才師が鼓を持って演じていたりする、時代を感じさせる記述が興味深いし、関東と関西で雨の音が異なるなど、鋭敏な感性や音楽的な姿勢に触れることもできる。