1968年発売
俗世間から逃れたい一心で、旅に出た青年画家。やがて彼は鄙(ひな)びた温泉宿に辿りつき、美しいがどこか陰のある女性・那美と出会う。彼女をモデルにして絵を描きたいと思ったのだが……。 一切の人間の事象を無私の目で見つめる非人情の美学をもとに書かれた「草枕」には、漱石自身の芸術論が色濃くあらわれる。 「二百十日」では、熊本・阿蘇山を旅する二人の男・圭さんと碌さんの軽妙な会話を通して、蔓延する拝金主義を批判する。 ※カバーの絵柄は(株)かまわぬのてぬぐい柄を使用しています 草枕 二百十日 注釈 解説 夏目漱石ーー人と作品 荒正人 作品解説 唐木順三 年譜
高名な作家で、自分の仕事に没頭している父、悪意はないが冷たい継母、夫婦仲もよくはなく、経済状態もよくない。そんな家庭の中で十七歳のげんは三つ違いの弟に、母親のようないたわりをしめしているが、弟はまもなくくずれた毎日をおくるようになり、結核にかかってしまう。事実をふまえて、不良少年とよばれ若くして亡くなった弟への深い愛惜の情をこめた看病と終焉の記録。
その年、私は療養中の恋人・節子に付き添い、高原のサナトリウムで過ごしていた。山の自然の静かなうつろい、だが節子は次第に弱々しくなってゆく……死を見つめる恋人たちを描いた表題作のほか、五篇を収録。
太宰治が短篇の名手であることはひろく知られているが、ここに収めた作品は、いずれも様々な題材を、それぞれ素材にふさわしい手法で描いていて、その手腕の確かさを今さらのように思い起こさせる。命を賭した友情と信頼の美しさを力強いタッチで描いた「走れメロス」をはじめ、戦前の作品10篇を集めた。
ドイツ留学中の豊太郎は、すべてを捨て踊り子エリスと生きようとするが。19世紀のベルリンを舞台に激しくも哀しい恋の結末を描く「舞姫」と「うたかたの記」「文づかい」の独逸三部作、翻訳「ふた夜」を収録。 *商品のパッケージ変更に伴い、掲載画像とは異なったデザインの商品が届く場合がございます。あらかじめご了承ください。
三十歳になっても職につかず、実業家である親の仕送りで暮らしている代助。ある日、生活に困窮したかつての友人・平岡と、その妻・三千代に再会する。三年前、三千代を愛していながらも平岡に譲った代助。再び交流を重ねるうちに、しだいに三千代に恋心を募らせ、ついにはその愛を貫き通そうと決心するのだが……社会の掟に背き、「自然」の情念たる愛を追求する人間の苦悩を描く。『三四郎』に続く、3部作第2弾。 ※カバーの絵柄は(株)かまわぬのてぬぐい柄を使用しています それから 注釈 解説 夏目漱石ーー人と文学 丸谷才一 作品解説 角川源義 年譜
五千の少兵を率い、十万の匈奴と戦った李陵。捕虜となった彼を司馬遷は一人弁護するが。讒言による悲運を描いた「李陵」、人食い虎に変身する苦悩を描く「山月記」など、中国古典を題材にとった代表作六編。
開国か攘夷か。黒船の威嚇を背景に条約締結を迫る列国を前に、国論は真二つに分断された。折しもオランダから到着した新造艦咸臨丸。この日本初の遣米使節艦艦長として、勝は安政7年、福沢諭吉、中浜万次郎らを率い渡洋の壮途につく。しかし、数知れぬ困難を乗り越え、異国の風土を目のあたりにして帰国した時、大老井伊直弼は暗殺され、物情は騒然、幕府の権威は地に堕ちていた。
液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男…失われた妻の愛をとりもどすために“他人の顔”をプラスチック製の仮面に仕立てて、妻を誘惑する男の自己回復のあがき…。特異な着想の中に執拗なまでに精緻な科学的記載をも交えて、“顔”というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさを描く長編。