出版社 : 実業之日本社
永源寺峻の留守番電話に、先輩とも師匠ともいうべき楽田総一郎から「緊急の用件で会いたい」とメッセージが入っていた。青山の楽田宅を訪れると、そこには胸に深々とナイフをつきたてられた楽田の死体があった。楽田の葬儀の日、峻は突然、ツッパリ少女に声をかけられた。依頼は天才画賀シャトーブリアンの傑作「マダム・ロスタンの肖像」を見つけてほしいというものだった。その絵を楽田はどこかに隠したらしい。隠し場所のヒントを娘に遺していた。それはまさしく暗号ー松本清張の『点と線』の初版本に、すべてあり、解く鍵は三つ。スタジアム、十メートル下、ガンジン。-永源寺峻は必死に推理した。そして解けた答は意外にも…。乱歩賞作家が綴るミステリ・ファイル。
杉苔が美しい尼寺・月心庵で死体が発見された、との知らせで現場へ急行した赤かぶ検事は、その異様な死体を見て思わず顔をそむけた。男女の判別もつかぬほど、巨大なナメクジが全身を覆いつくしていたのだ。発見者の二人の尼僧の話では、毎年八月十五夜になると群れをなしてナメクジが現れるという。立居振舞も風貌も男っぽい庵主と惚れ惚ぼれするほど艶っぽい美人の尼僧は、この怪事件に全く動ずるところがない。怪現象と二人の尼僧の関係を想像し、頭を悩ませていた赤かぶ検事の元へ、ヤクザに脅かされ女子高生が姿を消したという知らせと、尼寺の死体が、女子高生を脅迫し、売春をさせていたヤクザだったとの知らせが届いた。そして日をおかずして、またもや月心庵でナメクジに覆われた死体が発見された。死者は失跡していた女子高生で、しかも彼女は妊娠していた。さらに三人目の死体が月心庵の庭で発見され、事態は意外な展開を見せ始めた…。
渋谷に海があるなんて知らなかった。渋谷の海辺に立つ赤い屋根のホテル。窓から水平線の見える小さなホテルに永遠の宿泊を予約した僕と、僕をめぐる男と女たちの物語。人間と自然への限りない優しさに満ち溢れたTOKYOファンタジー。大型新人の書下ろし処女長編小説。
安らかに、まるで眼っているような顔、まだ濡れている長い髪、全裸美女の溺死体。釣船に発見されて引き上げられたばかり。若い釣客が近づいて黒髪を掻きわけてやろうとした。その手に白いものが巻きついていた。それは死体の腕だった。女はゆっくり目を開けるとニッコリ笑った。コキッと背筋の凍るような音がした。女は軽く手を握っただけで男の腕を肘からもぎとったのだ。真白な裸体に鮮やかな血の飛沫がふりかかった。
札幌市郊外の大学で不幸な出来事が続発した。合格発表を見にきた受験生の長蛇の列に、大型トラックが突っ込み、多数の死傷者を出したり、大学院の学生が化学実験中に爆発事故を起こして死亡したり-。やがて“不幸な出来事”は、“おぞましい怪事件”に発展する。それは深夜、警備中のガードマンが巨大な黒犬獣に襲われ、下半身を食いちぎられるというものだ。-悪魔に魅せられた学園を救うべく、屈強な青年と、オカルト・ライターが事件の解明に乗り出すが。魔術に造詣の深い注目の新人が放つ、本格マジカルホラー小説の力作!
「運転をかわって、不倫できるところへ連れてって…」不倫願望の強い人妻の美雪にそう言われ、本田は運転をかわると、教習車を一番はじめに目についたラブホルテルにすべり込ませた。本田は女芯に舌を沈め、さらに三分の一ほど頭を視かせた芯芽のベールを剥くように舌で押しまわす。「ああ、気が狂いちゃっいそう」美雪は頭を掻きむしった。「ねえ、早く入ってきて。でないと、わたし、イッちゃう…」
男と女。短い出会い。長いお別れ…。いま、N.YよりもL.Aよりも、この六本木にはホットで洒落た物語が転がっている…。青春エンタテインメントの旗手があなたに贈る、お洒落なストーリー。
富士王朝人や神国維新革命残党と激しい闘いを終え、大都市にまぎれてひっそりと生きる鬼谷鉄雄こと妖界魔王の前に、右翼の男が現れた。龍盛会の中島孝正会長の代理であった。用件は、暗殺団を撲滅してくれという。その暗殺団とは、妖界魔王のかつての仲間“血の鷲”の凄腕残党で構成され、東京で開催されるサミットの出席5カ国首脳をターゲットにしているという。暗殺が成功すれば、日本が混乱の底に陥ることは必至。束の間の安息から、妖界魔王は再び闘いの日々へと突入していった…。寒地獄から甦った妖界魔王の、官能とバイオレンスに彩られた超伝奇ストーリー!
夢の中で物ノ怪にレイプされつづけた女の胎内に生命が宿った。それは次第に意志をもちはじめ、胎内から女をコントロールしてゆく。女は新鮮な生肉を欲しがり、さらに自らの手脚をも食べ尽くした…。-お食べ、たんとお食べ。大きくなるんだよ。わが子が腹腔の肉を食らう振動、肉の千切れるブツブツという響きが彼女の胴を揺する。それは、ついに女の下腹を食い破り、この世に現れ出た-!デーモンの子の誕生である。
戦後も40年余りたち、鳥居甚一の許に差出人不明の手紙が届いた。内容は、昭和19年11月6日暗夜にフィリピンで焚いた〈四つの火〉を再現しよう、との呼びかけだった。19年当時、鳥居は日本陸軍伍長で、浅田少尉らと命令をうけて、バターン半島のある地点で焚き火をした。同様の指示で他の3小隊も各地点で火を焚いた。〈四つの火〉が焚かれた理由は、何も知らされなかったが、捕虜収容所で耳にした噂は、〈四つの火〉こそ莫大な金塊を積んだ輸送船を自沈させた場所の“目印”であったというものだった。戦後の昭和36年、鳥居と浅田はある事件に巻きこまれて“噂”に信憑性があることを知ったのだが、興味も示さず、その後も平穏に生活を送ってきた。だが今回の〈四つの火〉再現呼びかけには奇妙に引きずられるのだった。呼びかけ人は誰?〈四つの火〉はどこに?読者をグングンひきずりこむストーリーテラーぶりには定評ある大型気鋭が、満を持して放つ傑作ミステリー。