著者 : 笹子勝哉
大東銀行取締役総務部長を務めている高野健一郎は並木という男から電話をうけた。並木が持ち込んでくる話は大東銀行が外聞をはばかるような話が多い。いつもなら総務部の古手の担当に任せるのだが、高野本人に会いたいという。折り入っての話というのは、倉沢という男を頭取に面通しして欲しいというのだ。銀行の隠された恥部、銀行員も窺い知れない総務部の実態を描く。
合同銀行専務の武中平太郎が現在の地位を得たのは、渋谷支店を騒がせた百二十億の焦げ付き融資を解決し、新しい取引先を開拓した五年前の功が大きい。そのうちの六十億を回収し、残り六十億返済の代償に年間取引高一千億円を超える東洋環境開発を新橋支店に引き抜いたのだ。ある日、東洋環境開発からゴルフ場建設資金として一千五百億円の融資が申し込まれた。副頭取を目前にした武中の採った手段は。
「面倒な話にならなければいいのだが…。」一本の電話が日本貿易ファイナンス社長・戸田泰三の胸中に、一点の黒い染みを残した。電話の主は大蔵族の大物国会議員、遠山大五。「近いうちに一度、飯でもどうや」。荒っぽい関西弁でそれだけ告げた。この先わが身に何が振りかかろうとしているか、戸田は知る由もない。族議員と大蔵官僚の錯綜する思惑。てんでばらばらにみえたそれぞれのベクトルが、しだいに同一方向へと向かい始めた時、戸田は巨大な陥穽にはまったことを知る。
創業百周年を迎える千代田銀行頭取の上田俊は、記念日までに預金額3割アップを全支店に指令した。城南支店長今野信之は過酷なノルマを課せられ対応に苦慮した末、不動産業者・横田陽造の要請を受けて巨額に入金と引きかえに30億円の架空預金残高証明書を発行してしまう。だが、横田の背後には千代田銀行に恨みを持つ、元総理の田淵周造の存在があった。企業と政治家の確執を描くノンフィクション・ノベル。