著者 : 小川賢
遊女蛍遊女蛍
蛍の光に化身した五つの未練が、悲しみを美しく照らす。 丹波の行商人・吉佐が神崎川で出会ったのは、季節はずれの蛍の群れ。 そこから現れた五人の遊女たちが、それぞれの悲しき身の上を語り始める。 故郷を奪われ、身売りされ、男に騙された彼女たち。 法然上人のもとで成仏への道を得た彼女たちは、一夜だけこの世に舞い出で、旅人に恩返しをするという。 平安から室町へ向かう時代に、遊女たちが見つけた救いの光とはーー 年に一度だけ、光と化して川辺に現れる遊女たち。 色鮮やかに輝く光に込められた、それぞれの想いとは。 時代の流れに翻弄されながらも、懸命に生きた彼女たちの物語。 川蛍 一の蛍 宮木 二の蛍 吾妻 三の蛍 苅藻 四の蛍 小倉 五の蛍 代忍 旅僧 備考
野島・夏島野島・夏島
横浜の語学専門学校に進学した奈津は、叔母に頼まれた見合い写真を持って、横浜海軍航空隊の飛行艇の操縦手となった従兄の元を訪ねた。だが昭和17年、従兄の操縦する飛行艇は南洋を哨戒飛行中、敵爆撃機の編隊から友軍の輸送船団を守るために単機で奮戦し、郷里に新妻を残したままマーシャル諸島に散った。奈津にそれを知らせたのは、従兄の友人で元民間航空会社のパイロットの朽木だった。昭和20年になると、本土への空襲は激化し、横浜も絨毯爆撃にあう。奈津は焼け野原で、はじめて戦争の本当の姿を知る。8月15日の日本敗戦から数日後、朽木は終戦の連絡のため、ボロボロになった九七式飛行艇で宅間湾から飛び立った。奈津は、必ず帰ってくると約束した朽木の飛行艇を、赤いパラソルをさして岸壁から見送るー。
PREV1NEXT